黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

筆者は経営者であり、高級フルーツビジネスでは従業員を雇っている。だが、他に手がけている事業、英語教育ビジネスや講演活動などについては、自社で従業員を雇わず、すべて外注に出している。ビジネス形態によっては無理して従業員を雇うより、フリーランスに外注したほうが圧倒的にメリットは多い。本記事では、従業員ではなくフリーランスに外注するメリットについて解説する。

従業員は「重業員」になり得る

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(画像=VGstockstudio/Shutterstock.com)

日本は、従業員を法律で強固に保護する社会である。これは従業員の立場からすればとてもありがたい限りだ。正社員雇用であれば、いきなり解雇されて路頭に迷う心配はない。

また昨今はパワハラやセクハラが大きな社会問題になっており、損害賠償を請求する事例も起きている。つまり我が国においては、「従業員」は法律によって手厚く守られているわけだ。これは現場の責任者が強力な人事権を持つ米国などとはかなり対象的である。

一方、経営者の立場としては責任が重くのしかかる。倫理を持つ人として、従業員が困らないように賃金を払い続け、働きやすい職場環境づくりなどは当たり前である。尚、指示通り動かない社員や、賃金に見合わない低パフォーマンスであっても解雇することは許されない。

そう、経営者の指示通りパフォーマンスをあげる「労務サービス」を提供する「従業員」のはずが、会社の足かせになる「重業員」となり得るケースもあるのだ。

権利ばかりを主張する従業員

現在、弊社の従業員には大変満足している。高い労務パフォーマンスをあげてくれ、生き生きと楽しく仕事をしてくれているからだ。

だが、過去には大変な想いをしたこともある。仕事をきちんとせず、遅刻や欠勤ばかりの問題社員がいた。

ときには、会社の繁忙期にまとめて有給休暇取得を希望された。「別日にずらしてもらえないか?」と相談をしたところ、「好きな時に有給を取らせてくれない!」と猛烈な反撃を受けたことがある。

また、メディア掲載で商品が取り上げられたことで大量の受注があり、やむなく少々の残業をお願いした。すると「やりたいことがあるので」と一方的に拒否して帰ってしまうのだ。

ただここでは、従業員としての権利を主張することは問題ではない。有給休暇は100%消化してプライベートも楽しんでもらいたいし、よほど逼迫した時を除けば1分たりとも残業をせずに自分の時間を謳歌してもらいたいと思っている。できれば、パフォーマンスの高い社員にはボーナスや基本給アップも積極的にしたい。

だが、問題は給与相応のパフォーマンスや最低限のルールを守らないのに、権利ばかり主張する従業員だ。「弱者はその弱さを盾に、強者を攻撃する」という言葉を想起させられた。

外注は低コストで文句を言わない

一方、外注をするようになり、従業員を雇って仕事をお願いするのとは異なる感覚を持つようになった。

彼らはフリーランスが多く、コストは驚くほど安い。法人に依頼すると10万円ほどの業務を、「自分はまだ駆け出しで、これから実績を作りたいから」と1万円で引き受けてくれた人もいた。

その方はフリーランスとしては駆け出しかもしれないが、フリーになる前は大手企業で10年以上の経験者だったので、仕事は極めてスムーズでパフォーマンスは高かった。

さすがに1万円では申し訳ないので、感謝の気持ちを込めて、こちらの判断で勝手に報酬を増額して支払いさせてもらった。

昨今、会社で雇っている従業員に時間外にメールやビジネスチャットをすると、「プライベート時間の侵害だ」と言われかねない時代である。だが、フリーランスであれば24時間気兼ねなくメッセージを送れるわけだ。こちらが気づいた時にすぐ送れば「レスポンスが早いおかげで、仕事がスムーズに進みます!」と感謝される。

また、相手の残業時間や時間外勤務を気にすることもない。人事評価も不要なので、気楽に業務を依頼できる。あらかじめ決めておいた報酬と先方の労務サービスを受けたら、スッキリ終わりだ。

正直、外注の相手はこちらのビジネスを理解していないので、「従業員ほどよい仕事にはならないのでは?」と感じていた。しかしその懸念は吹き飛び、相手によっては継続して仕事を依頼している。

フリーランスへ部門ごとの外注を検討する

筆者のビジネスパートナーには、年収一億円以上稼ぐパワフル経営者が何人もいる。そのうち、「業務は100%フリーに外注」という社長も少なくない。いわく、「過去に起業した会社を大きくした時には、自分はまるで従業員のために仕事をしているようだった。人事評価をしながら、部下の不満を聞いたり慰労会を開いたりと、誰のために経営しているのかわからなくなっていた。だが、外注は本当に気が楽だ。仕事を振れば振るほど感謝される」という。

手掛けているビジネス業態にもよるが、経営者は思い切って業務の部門ごと外注する方が楽になるかもしれない。(提供:THE OWNER

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)