目まぐるしく進化を遂げるテクノロジー。その中でも、ビル・ゲイツ氏が注目しているという「ブレイクスルー・テクノロジー(Breakthrough Technology、画期的なテクノロジー)」をご紹介しよう。
医療から製造、食品分野まで、次にブレイクしそうなアイデアばかりだ。
1.ロボット・デクスティリティー(Robot Dexterity)
ロボット・ハンドなど現行の産業用ロボットは、プログラムに従って物を持ち上げたり移動したりさせる、あるいは組み立てる作業に便利だが、人間のように、プログラムと異なる作業に対応する柔軟性に欠けている。
例えば、元々プログラムで指定していた所定の位置から5㎝離れた場所に移動させる、四角と三角の代わりに丸と三角を組み合わせるといった「変則」には、プログラムの変更なしでは対応できない。
そこで、人間のように目で適切な距離を測るなど、臨機応変に作業を行えるデクスティリティー(細かい作業が可能・手先の器用)なインテリジェント・ロボットの開発が進められている。
いくつか例を挙げると、サンフランシスコの非営利団体OpenAIが、仮想試行錯誤を通してオブジェクトを自分で操作することを学習する「Dactyl」の開発に取り組んでいるほか、カリフォルニアのRobots-as-a-Service企業Dexterityも同様のプロジェクトに着手している。
2.カスタムメイドのがんワクチン(Custom cancer vaccines)
がんワクチンのコンセプトは、人間に備わる免疫力を利用し、がん細胞を攻撃・排除することだ。長年にわたり世界中で研究・開発が続けられているが、個々の患者のがんの種類や遺伝子に合わせた「自分だけのがんワクチン」が、近い将来、商業化されるかもしれない。
がん免疫療法の開発に取り組むドイツのスタートアップBioNTechと、米大手バイオテックGenentechの共同プロジェクトが、一例として挙げられる。簡単に説明すると、個々の患者の腫瘍のゲノム配列を分析し、ネオアンチゲン(がんによる変異抗原)を特定、mRNA(伝令RNA)を用い、一人一人の患者に最も効果的ながんワクチンをカスタムするという試みだ。
両社はこのワクチンを大量生産可能な手法を模索中で、実現すれば迅速かつ比較的手ごろな価格で、より多くの患者が入手できるようになる。
3.二酸化炭素キャッチャー(Carbon Dioxide Catcher)
空気中に放出された、あるいは放出される直前の二酸化炭素を回収・貯留する手法は、長年にわたり、石油およびガス産業などで用いられている。しかし、これらは主に石油増産・油田延命を目的としており、「環境保護を目的に二酸化炭素を回収する」という概念は比較的新しいものだ。
空気中の二酸化炭素を直接回収する手法「Direct Air Capture」は、コストが高過ぎるという理由で環境保護目的では実用化されていない。しかし、2018年にハーバード大学の気候科学者デイビッド・キース博士が、「1トン当たり100ドル未満にコストを下げることが可能」という発表をしたことから、にわかに注目されている。
現段階においてはあくまで「理論上」の仮説であるため、実用化にはまだまだ時間と研究を要するものと推測されるが、今から注目しておくに値するブレイクスルー・テクノロジーではないだろうか。