法人として事業を行う場合、各種の税金について確定申告を行う必要がある。今回は、確定申告が必要な税金の種類、その概要や、留意点などについて説明していく。

法人の確定申告とは?

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(画像=PIXTA)

事業を行う際には、個人事業主と行う場合と、法人として行う場合がある。この2つは、税金の精算である「確定申告」の流れがまったく異なるのだ。

個人事業主の場合には、事業所得の収支内訳書を中心として所得税の確定申告書を作成し、その所得額をもとに各種の税金の申告をすることが基本となる。法人の場合には、税金の計算のためではなく、経営状況を明らかにするために複式簿記に基づく帳簿および決算書を作成することが会社法によって義務付けられている。作成された決算書の内容を、法人税の計算に使う課税所得を計算するために修正して使用するというプロセスで、法人税およびその他税金の確定申告を行うこととなる。

法人は帳簿の作成、決算書の作成から決算書承認手続を経て、税務申告書の作成・申告という一連の流れを適法に行うことが必要であり、法人税の申告内容もかなり複雑となることから、個人事業主の確定申告と比べると、かなりの労力がかかることを留意しておきたい。

法人がしなければならない確定申告とは?4つの種類を紹介

法人がしなければならない確定申告には、以下のものがある。

法人税の確定申告

国税である法人税についての確定申告は、決算期に合わせてその期間の課税所得額を申告するものである。法人税を計算する際の基礎となる課税所得額は、基本的には法人における収入から支出を引いた税引前当期利益と近しい概念だ。ただし、法人の決算を作る際の基本ルールとなる「企業会計基準」における収益と費用の考え方と、法人税の計算における益金(≒収益)と損金(≒費用)の考え方は若干異なるため、会社の決算書をそのまま税金の計算に用いることはできない。

その期間の決算書における損益計算書の内容をもとに、法人税の考え方に合わせて損益計算書の内容を修正するため、法人税の確定申告内容を詳細に計算するには別表1~19の法人税の確定申告書を作成して、法人税の課税所得を算出する。

消費税の確定申告

消費税は、基本的には最終消費者が購入する際に消費税を負担するという考え方で課税されているが、日本では消費者が直接納付する方法を取っていないため、各事業者が事業の中での消費税の収支差額(売り先から受け取った消費税と事業に関しての買い先に支払った消費税の差額)を納付することで、消費者に直接課税するのと同じ効果を発生させている。

営利法人は消費税の課税事業者となるため、消費税の確定申告・納付が必要だ。個人事業主と同様に一定の要件に該当する場合、課税売上高10百万円以下の法人は免税事業者となり消費税の申告・納税義務が免除され、課税売上高50百万円以下の法人は簡易課税制度を利用できる。

法人都道府県民税および法人事業税の確定申告

法人は本店および事業所の所在する都道府県に対して、法人都道府県民税および法人事業税の申告・納付が求められるため、法人税の申告と合わせて確定申告を行う必要がある。

法人都道府県民税は均等割と法人税割に分かれており、均等割は資本金および従業員数によって損益状況にかかわらず課税されるものだ。法人税割については、申告した法人税の金額に税率をかけて算出する。法人事業税は都道府県に対して納付する税金であるが、法人都道府県民税とは別で計算を行わなければならない。法人税の計算に使用した課税所得から一定の調整を加えて法人事業税の課税基準を算出し、税率をかけて算出する。

複数の事業所を有する場合は、均等割は事業所ごとに課税されるが、法人税割・法人事業税は全体の総額を算出した上で事業所ごとの従業員数などを基準として分割し、納付する。

法人市町村民税の確定申告

法人は都道府県だけでなく、本店および事業所の所在する市町村に対しても法人市町村民税の申告・納付を行う。そのため、法人税・法人都道府県民税の申告に合わせて、法人市町村民税の申告も必要だ。法人市町村民税も都道府県と同じく均等割・法人税割に分かれており、同様のルールで納付が必要となる。

法人の確定申告の流れ

法人が決算期を迎えて確定申告をするまでの流れについて、概略を説明していく。

決算手続き

法人の場合においては、まず、税務申告の前に会社法に義務付けられている手続きにのっとり、会社としての決算手続を行う。次に、定款に従い指定の期日までに決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)を作成する。その上で、取締役または取締役会での協議・承認後に株主総会で承認手続きを行うため、定時株主総会を招集するという流れだ。

定時株主総会で計算書類として承認を受けることによって、正式に決算内容が確定する。この確定した決算書が、法人税の申告を行う際の基礎数字となる。株主総会の招集手続きに落ち度がある場合、決算承認手続きそのものが無効とされる可能性も考えられるため、留意しておきたい。

申告書の作成

決算手続によって会社の決算書が確定したら、その内容に基づいた法人税およびその他の税金に関する確定申告書の作成が必要だ。前述の通り、法人税の確定申告書は会社の決算内容を修正して作成する。そのため、決算書に税務申告と違う内容が記されている場合は税務調整を行い、法人税における「税引後当期利益」から加減算して、法人税の課税所得を算出することとなる。

会社の決算内容は毎期連続していることから、法人税の申告書についても修正内容が毎期連続して調整しなければならない。そのため、法人税の申告書においても、会社の決算書に相当する部分が存在している。

法人税の申告書における損益計算書にあたるのが、別表4だ。その期の決算における税引後当期利益からスタートし、各種調整内容を加減算して課税所得を算出する。調整内容のうち、一時差異(決算内容と税務上の内容相違が一時的に発生するが最終的には一致する内容)に該当する場合は、差異額を記録として残しておく必要があるため、それを別表5-1に転記し、決算内容と過去の税務申告での相違点を累計して記録している。この別表5-1は、貸借対照表にあたるものだ。残りの別表は、基本的には別表4による税務調整の金額についての集計資料を目的として作成されている。

確定申告書の他、勘定科目明細表(各科目の残高を個別に記載した集計表)や法人事業概況説明書(法人の業務内容・企業業績などをA4表裏にまとめたもの)の作成も必須であるため、同時に作成することが必要となる。これら一連の税務申告の内容はかなり複雑であり、中小企業やスタートアップでは作成を税理士などに一任しているケースが大多数だ。

法人税の申告書の作成と合わせて、消費税の申告書・法人地方税の申告書の作成も求められる。法人税の申告書に比べれば簡易な内容ではあるが、消費税の申告内容は、業種・取引形態によってかなり複雑になることもあるため、留意しなければならない。

確定申告の期限と延長制度

法人税の申告期限は、原則決算期から2カ月以内と定められている。一方、会社法では株主総会の開催期限は特別に定められておらず、定款によるものとされている。基準日株主が議決行使できる期間が3カ月以内であることから、一定規模以上の会社や外部株主が存在するスタートアップ企業では、通常は決算期から3カ月以内に開催されるケースが多い。

このような場合においては、定時株主総会の開催時期が法人税の申告期限よりも後になり、法人税の確定申告が行えない。そのため、法人税および法人事業税には、確定申告期限の延長手続きが設けられているのだ。この申請を行って否決されなかった場合、確定申告期限を延長することが可能となる。

この制度を利用するには、税務署および都道府県に対して事前に延長申請をしておくことが重要だ。自社の状況から延長申請が必要な場合には、忘れずに事前に申請を行おう。

参照:
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/saigai0011.html
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_12.htm

確定申告できなかった場合はどうなる?

法人税の確定申告の内容はかなり複雑だ。しかも、決算作業も並行して進めていくため、日程的には非常にタイトである。仮に法人税の確定申告が期限内にできなかった場合は、以下のような事態が考えられる。

・無申告加算税の賦課
税金を申告しなかったことに対するペナルティとして無申告加算税が発生し、無申告時点で税額に対して一定割合が加算される。

・延滞税
税金を納付しなかったことに対するペナルティとして延滞税が発生し、納付が遅れた期間に応じて年率ベースで加算される。

その他、悪質な無申告・不納付の場合には重加算税が適用される場合や、財産の差し押さえなどに至ることもあるため、期限内に申告・納税が完了するよう、計画的に準備を進めることが必要だ。

法人では確定申告必須、税理士の雇用も検討をしよう

決算内容に基づく確定申告は、法人の義務である。法人として活動している限り、仮に課税所得がなくても(損失計上の場合)、確定申告を行うことが求められる。

法人税の申告にはかなりの知識と労力が必要となるため、税理士との顧問契約の締結や、公認会計士・税理士を社員として採用することも検討しておくことが望ましい。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部