個人事業主が事業をやめる時に提出する廃業届。提出し忘れると、「事業を継続している」と税務署に判断され、余計な税金を支払わなければならなくなることもある。この記事では、廃業届の書き方や廃業届とともに提出する書類について、わかりやすく解説する。

廃業届とは?

廃業届
(画像=PIXTA)

廃業届とは、個人事業主が事業をやめる際、税務署に提出しなければならない書類である。正式な名称は、「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」だ。

個人事業主とは、具体的には「事業所得、不動産所得、または山林所得を得られる事業を行っている人」のことだ。廃業届を提出し忘れると、余計な税金を支払わなければならなくなることもあるので注意しよう。

法人が事業をやめる際は、「解散」および「清算」の手続が必要になる。個人事業主の廃業手続とはまったく異なるため、注意が必要だ。

個人事業主の廃業にあたっては、廃業届のほかにケースに応じて5種類の書類が必要になる。必要に応じて、それらの書類も忘れないように提出しよう。

廃業届の書き方

それでは、廃業届の書き方を見ていこう。

廃業届
(画像=THE OWNER編集部)

国税庁のホームページから、廃業届の届出用紙をダウンロードすることができる。
⇒ 個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)(PDF/865KB)
用紙への記入は、PCなどから直接入力し、その後印刷することもできる。

それぞれの項目の記入内容は、以下のとおりだ。

1. 表題
この用紙は、「開業・廃業等」を届け出るためのものだ。したがって廃業届として提出する場合は、「開業」の文字を二重線で消す。

2. 税務署長
所轄する税務署名と、提出日を記入する。

3. 納税地
通常は「住所地」になるが、自宅兼事務所の場合は「居所地」に、事務所を構えているのであれば「事業所等」を丸で囲み、住所と電話番号を記入する。

4. 上記以外の住所地・事業所等
納税地以外に事務所や店舗を設けている場合は、その住所と電話番号を記入する。

5. 氏名・生年月日・個人番号
それぞれ事業主のものを記入する。

6. 職業・屋号
行っている仕事の職業と屋号を記入する。

7. 届出の区分
「廃業」を丸で囲み、その理由を記入する。

8. 所得の種類
「廃業の場合」の「全部」を丸で囲む。

9. 開業・廃業日等
廃業日を記入する。

10. 開業・廃業にともなう届出書の提出の有無
該当する場合は「有」を、該当しない場合は「無」を丸で囲む。

11. 事業の概要
行っていた事業の概要について、できるだけ具体的に記入する。

12. 給与等の支払の状況
青色申告をしている人が家族を従業員としていた場合は、「専従者」に従業員数を記入する。それ以外の従業員を雇っていた場合は、「使用人」に従業員数を記入する。「給与の定め方」は、「月給」や「日給」など。月給が8万円程度までなら「税額の有無」は「無」を、それ以上なら「有」を丸で囲む。

13. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
給与を支払っている従業員を雇っていた場合は、申請書を提出していることになるため「有」を、それ以外の場合は「無」を丸で囲む。

廃業届の提出期限

廃業届の提出期限は、「廃業した日から1ヵ月以内」だ。提出期限が土・日・祝日などにあたる場合は、それらの翌日となる。

書類に不備があると廃業届が受理されず、再提出を求められることがある。その時になって慌てることのないように、廃業届は早めに提出するようにしよう。

廃業日は、できれば12月31日にしたい。そうすることで、1月1日から12月31日の1年間を基準として算出される所得税が安くなるケースがあるからだ。また、確定申告と廃業手続を同時に進められるため、ミスを防ぎやすい。

廃業届の提出先

廃業届の提出先は、「納税地を所轄する税務署」だ。事務所所在地が納税地と異なる場合も、事務所所在地の税務署ではなく、納税地の税務署に提出するだけでいい。

通常、廃業届の提出先は開業届の提出先と同じになる。ただし、事務所の移転などで納税地を変更した場合は、廃業届の提出先を確認するといいだろう。税務署の所在地は、国税庁ホームページで調べられる。
⇒ 税務署の所在地などを確認する

廃業届の提出方法

廃業届の提出方法は、「税務署に持参する」または「税務署に郵送する」のどちらかになる。

税務署に持参する

廃業届を税務署へ持参する場合の受付時間は、平日の8時30分から17時までだ。ただし、税務署の入口付近には「時間外収受箱」が設置されている。廃業届は、時間外収受箱に投函することでも提出したことになる。時間外収受箱に投函する場合は、以下で解説する郵送の際と同様、書類を整理して封筒に入れ、封をしなければならない。

税務署に持参する際は、マイナンバー確認および本人確認のための書類が必要になる。必要書類は、以下のようにマイナンバーカードを持っている場合と持っていない場合で異なるので注意しよう。

・マイナンバーカードを持っている場合
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードのみでマイナンバー確認および本人確認ができる。

・マイナンバーカードを持っていない場合
マイナンバーカードを持っていない場合は、「通知カード」や「住民票の写しまたは住民票記載事項証明書(マイナンバーの記載があるもの)」など、マイナンバーを確認するための書類が必要になる。これとは別に、本人確認のための書類が必要になる。本人確認書類は、運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポート、身体障害者手帳、在留カードなどのうちいずれか1つだ。

廃業届の控えが必要な場合は、廃業届と一緒に廃業届の控えも提出する。すると、その場で受理印を押し、控えを返してくれる。

廃業届の控えには、「マイナンバーが記載されていない」ことが重要だ。廃業届の控えを、廃業届をコピーすることで作成した場合は、マイナンバー部分をマスキングしておく必要がある。

税務署に郵送する

廃業届を税務署に郵送する場合は、前述のマイナンバー確認および本人確認のための書類のコピーを廃業届に同封する。廃業届の控えが必要な場合は、控えと返信用封筒も同封する。廃業届が受理された場合は、受理印が押された廃業届の控えが、返信用封筒に入れられて送られてくる。

郵送の際は、レターパックまたは簡易書留を利用しよう。郵便物が紛失する可能性はゼロではないからだ。

廃業届と一緒に提出する書類

廃業届を提出する際は、必要に応じて以下の5種類の書類を提出する。

  1. 都道府県税事務所への提出書類
  2. 所得税の青色申告の取りやめ届出書
  3. 事業廃止届出書
  4. 給与支払事務所等の廃止届出書
  5. 所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書

どんな場合に、どこに提出するのかなどの詳細は、以下のとおりだ。

1. 都道府県税事務所への提出書類
都道府県税事務所への届出は、廃業届を提出する個人事業主全員が行う必要がある。提出する書類は、都道府県によって異なる。提出期限も都道府県で異なり、東京都税事務所では「事業廃止後10日以内」、大阪府税事務所では「遅滞なく」となっている。提出書類と記入内容、提出期限、および提出方法については、都道府県税事務所または公式ホームページで確認しよう。

2. 所得税の青色申告の取りやめ届出書
青色申告を行っている個人事業主は、廃業にあたって「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を所轄の税務署に提出しなければならない。提出期限は、青色申告をやめようとしている年の3月15日だ。ただし廃業届を提出する場合は、廃業届と一緒に提出することが認められている。

提出用紙は、国税庁のホームページからダウンロードすることができる。
⇒ [手続名]所得税の青色申告の取りやめ手続

3. 事業廃止届出書
課税業者である場合は、「事業廃止届出書」を提出する必要がある。課税業者とは、消費税を納付する義務がある事業主のことだ。前々年の1年間、あるいは前年1月~6月までの課税売上高が1,000万円を超える場合に課税業者となる。

提出先は所轄の税務署で、廃業届と一緒に提出することが認められている。提出用紙は、国税庁のホームページからダウンロードできる。
⇒ [手続名]事業廃止届出手続

4. 給与支払事務所等の廃止届出書
事業専従者(家族)や従業員に対して給料を支払っている個人事業主は、「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出しなければならない。提出先は、所轄の税務署。提出期限は廃業から1ヵ月以内なので、廃業届と一緒に提出する。提出用紙は、国税庁のホームページからダウンロードできる。
⇒ [手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

5. 所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書
予定納税を行っている場合は、「所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書」を提出する。予定納税を行っている個人事業主が廃業すると、予定納税額が多くなりすぎるケースがあるからだ。

提出先は所轄の税務署で、提出期限は以下のとおりだ。

・第1期分と第2期分の両方 …7月1日~7月15日まで
・第2期分のみ …11月1日~11月15日まで

提出にあたっては、損益計算書を添付する必要がある。提出用紙は、国税庁のホームページからダウンロードできる。
⇒ [手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

廃業届を提出し忘れた場合はどうなる?

廃業届を提出し忘れると、税務署は「事業を継続している」と認識する。したがって、確定申告書類が送られ続け、それを無視すると「無申告加算税」が徴収されることになる。余計に税金を取られることになるために、廃業届は必ず提出するようにしよう。

廃業届を提出し忘れ、提出期限を過ぎてしまっていたとしても、思い出したらすぐに提出しよう。期限を過ぎても罰則などは特になく、すんなり受け取ってもらえるだろう。そうすることで、税務署は廃業を認識し、それ以降確定申告の連絡が来ることはなくなる。

廃業届は忘れずに提出しよう

個人事業主が廃業する際に提出しなければならない廃業届。提出を忘れると、余計な税金を取られることもある。「終わりよければ、すべてよし」だ。廃業届は、忘れずに提出しよう。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部