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医療改革が進んでいる。2014年6月10日、安倍晋三首相は、慶応大学病院を視察し、公的保険が使える診療と保険外の診療を併用する「混合診療」を拡大すると記者団に表明した。希望する患者は抗がん剤など国内未承認の新薬や医療機器を速やかに幅広い医療機関で利用できる仕組みを作る。

エボラ出血熱には有効なワクチンや治療薬がない一方、米国では未承認薬「ZMapp」を投与された米国人医師ら2人が快方に向かっていると伝えられるニュースが最近あったばかりであるが、抗がん剤など国内未承認の新薬や医療機器には、効果が高いものもあるはずだ。

「混合診療」の要点としては、1. 困難な病気と闘う患者の申し出に基づいた療養制度を創設、2. 安全性・有効性を確認しつつ審査期間を抜本的に短縮、3.より身近な医療機関でも先進医療を受けられるよう柔軟に対応、の3点が挙げられている。

「患者申し出療養制度(仮称)」が新設され、患者に試したい保険外の薬や医療機器があれば、臨床研究で実績のある中核病院(例として、慶応病院)にまず相談し、納得すれば利用を申し出ることができるようになる。中核病院は患者の代わりに申請し、国の専門家会議が原則6週間で安全に治療できるかどうかを審査する。現行の仕組みでは3~6か月かかるのを短縮し、早く治療を受けられるようにする。


混合診療の拡大法案とは

混合診療の拡大法案とは、公的保険が使える診療と保険外の診療を併用する「混合診療」の対象を拡大することを言う。患者の選択肢を増やすとともに、医療技術の革新を促す。混合診療の拡大は、2014年6月、アベノミクスの成長戦略「日本再興戦略改定版」に盛り込まれた。

これまでは新薬や医療機器の研究目的に限って認められてきたが、新たな制度では患者は、自分が受けたい治療を医師に相談の上求めることができるようになる。もっとも、混合診療について、日本医師会など医療関係者は保険医療を崩す規制緩和として抵抗している。


厚生労働省が決めた混合診療の拡大案は3つある。

1. 現在は重粒子線治療や遺伝子診断など一部例外的に混合診療を認めている「保険外併用療養費制度」の対象を拡充し、再生医療や新しい技術を使った医療機器などを評価し、この制度の対象に加える。

2. 他に治療手段がない患者が未承認の薬を混合診療で使える制度(日本版コンパッショネートユース)を本格導入する。現在、未承認薬は薬の有効性を調べる治験でのみ混合診療が認められており、治験対象外の患者が未承認薬を使うと保険診療部分も含めて患者が全額負担しなくてはならないが、新制度では治験対象外の患者も未承認薬を保険診療と併用できるようになる。

3. 治療効果があっても費用が高額過ぎる新薬・医療技術などを保険適用から外すことを検討し、保険適用から外れた新薬などを患者が使いたい場合は混合診療で使えるようにする。これら3つの厚生労働省案では、混合診療は指定した医療機関で受けることを想定する。

一方で、政府の規制改革会議は患者と医師が合意すれば、より幅広い医療機関で混合診療を受けられる「選択療養」制度の新設を提案している。

混合診療の拡大法案について、2015年の通常国会に関連法案を提出し、16年度にも導入する予定となっている。法案が通過すれば、2016年から「患者申出療養(仮称)」という新たな制度がスタートする予定である。