銀行の窓口で、外貨建て生命保険をすすめられたことはあるでしょうか。中には、すでに契約済みの人もいるかもしれません。この保険商品は期待できるリターンが比較的大きく、魅力的です。一方、その特性から注意しなければならないこともあります。外貨建て保険のリスクと、それを回避する方法を解説します。

外貨建て保険の魅力とリスク

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(画像=Ryvius/Shutterstock.com)

もしものときの保障と貯蓄性をあわせもつ貯蓄型の生命保険。とくに外貨建て保険は、円建ての保険に比べ利率も高く魅力的に思えます。一方、一部の報道では、この外貨建て保険に関する苦情の件数が増えているとの指摘もあります。苦情のおおよそは元本割れリスクなどの説明不足が原因とされています。

このわかりづらい元本割れリスクの要因について解説しましょう。外貨建て保険では、支払った保険料は米ドルや豪ドルなどの外国通貨で運用されます。解約返戻金や死亡保障などの保険金は、外貨またはその時の為替レートで換算した日本円で受け取るのが一般的です。そのため、為替の変動リスクがついてまわります。

たとえば、米ドル建ての生命保険に加入しているとしましょう。保険料1,000万円を支払った時点の為替レートは、1ドル100円でした。返戻率がちょうど100%になった時、解約するとします。この時為替レートが1ドル90円(円高)だとすると、返戻金は900万円です。実質的な返戻率は90%となり、「元本割れ」です。もちろん円安になっていれば、実質的な返戻率が100%を超えることもあり、この商品の魅力であると言えますが、元本割れのリスクがあることは理解しておかなければなりません。

このほか為替手数料、契約時手数料、運用手数料などのコストも発生します。外貨建て保険は、預貯金よりは大きなリターンが期待できますが、リスクに対する知識の必要な商品であることわかります。

他の資産を持つことで全体のリスクを下げる

では、すでに外貨建て保険に加入した人が、リスク要因となる為替変動リスクを抑えることはできるのでしょうか。その場合は、その外貨と関連性の低い、あるいは反対の値動きをする資産を組み入れることで、保有資産全体の価格変動リスクを下げることができます。

また、せっかくリスク資産である外貨を持っているのですから、長期的に運用する視点を持ってみましょう。他の資産と組み合わせて、リスクとリターンのバランスを取るのです。このようなポートフォリオを組むには、過去の実績が目安になります。たとえば、金融庁の資料によると、1995年~2015年の20年間で「国内株式」、「先進国株式」、「新興国株式」、「国内債券」、「先進国債券」、「新興国債券」に6分の1ずつ積み立て投資をした場合、年平均4.0%のリターンが出ていました。

外貨建て保険を先進国債券とみなし、そのほかの資産、「国内株式」、「先進国株式」、「新興国株式」、「国内債券」、「新興国債券」などに対応するインデックス・ファンドを同額ずつ購入することで、同等の資産配分にすることができます。たとえば、国内株式はTOPIXに連動するタイプの投資信託を買う、ということです。

長期運用の例として6資産に均等に投資するパターンを挙げましたが、まったく同じ割合にする必要はありません。ファイナンシャル・プランナー(FP)などの専門家に相談すると、より自分に合ったポートフォリオを組むことができます。

そのまま加入しつづけるか、それとも解約するか

上記のような対応は、少し専門的な知識が必要です。また、他の金融商品を買い入れるための資金がなければできません。これを難しいと感じる人には、もっとシンプルな方法が2つあります。

1つは、「気にしないで持ち続ける」ことです。外貨建て保険は外貨への投資と同じなので、将来日本円の価値が下がると考える人にとってはリスクヘッジになります。生命保険には相続税の節税効果があり、「投資」と「節税」の二役をひとつの手続きで行えることは、外貨建て保険のメリットです。

もう1つは外貨建て保険に加入したことを後悔している人におすすめで、「すぐに解約する」ことです。解約のタイミングによっては返戻率が低く損してしまう可能性がありますが、契約を続けても為替変動で損する可能性はあります。それなら、現時点で「投資したい」と思えるような金融商品を買ったほうが楽しいですし、うまくいけばより多くの資産を築けるかもしれません。

外貨建て保険の契約は投資である

外貨建て保険には、為替変動による元本割れのリスクがあります。このリスクを抑えるためには、同時に株式や国内債券などを保有するポートフォリオ運用が有効です。この対応には専門知識が必要なため、FPなどの専門家に相談するとよいでしょう。(提供:Wealth Road