日本とシリコンバレーで計5社を立ち上げたシリアルアントレプレナー(連続起業家)の田所雅之氏が、2020年2月18日に著書『御社のイノベーションはなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学』を出版した。
2017年に前回の著書『起業の科学』を出版してから約3年。今回は、12万部のベストセラー『起業の科学』との違いや新たに込めたメッセージなどを伺った。(聞き手:山岸裕一、編集構成:菅野陽平)※本インタビューは2020年2月に実施
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新たに書いた理由は「大企業に進化圧をかける必然性を感じたから」
―新しく著書を出されるとのことで、その内容を伺っていきたいと思います。まず、前回の著書『起業の科学』と差別化したポイントはどのあたりでしょうか?
前回の『起業の科学』は言わば起業の入門書で、形式知化されていなかった起業の方法を著しました。現在、私はベンチャーを支援する企業を経営していますが、当時はシリコンバレーの起業家でした。しかし、そうした起業に関わる公式が世の中になかったんです。
もちろん、MBA(経営学修士)関連の書籍はたくさんありますし、いわゆるスモールビジネスをいかにスケールさせるか、などは一応、形式知化されています。
ただ、私自身の体感として、ニーズを満たすものがなかった。それで、『起業の科学』の元となったスライドを作り、それが反響を呼んで書籍化になり、今では累計12万部ほど売れています。
一方、今回の『御社のイノベーションはなぜ失敗するのか?』を書いた経緯は、端的に言うと大企業や、組織が硬直していると感じている方に届けるべきメッセージを加える必要あると思ったからなんです。
おかげさまで『起業の科学』は売れた結果、購読者の7割が大企業の方でした。ちなみに、昨年だけで160回講演したうちの4分の3が大企業向けでした。
―大企業の読者が多かったんですね。
大企業の方は絶対数も多いので新規事業を起こす数も多いわけです。私は新規事業プロジェクトを同時進行で6つほど進めていますが、大企業向けに『起業の科学』のメソッドだけをやっていても通用しないんですね。詳しくは後述しますが、進化圧がかからないといつまでも未来を向かず、既存事業に固執してしまいます。