ここ数年はタワーマンションブームが継続する中で、民泊新法施行、税制改革、消費税増税などで不動産市況にも変化が見られました。特に2019年10月の消費税増税をめぐっては、「消費税増税前に買った方が良い」「消費税増税後の不動産価格下落を予測して消費税増税後に買った方が良い」などの様々な意見が溢れ、マイホームの購入時期をめぐっては買い時かどうかで悩まれた方も多いのではないでしょうか。
2020年は東京オリンピックが開催されることもあり、東京オリンピック後の不動産価格・相場がどのように変化するのか気になると共に、不動産を今買うべきか、もう少し待つべきかで悩まれる方も多いのではないでしょうか。さらに、ここ最近は生産緑地の2022年問題などもよく耳にされるかと思いますが、2022年以降の不動産価格・相場の動向も気になるところかと思います。
今回、東京23区の不動産価格・相場をおさらいした上で、客観的な視点で不動産の買い時かどうかを検証してみました。
1.東京23区の不動産相場の推移
ここ数年は都心を中心に空前のタワーマンションブームでマンション価格が高騰していると言う話をよく耳にされているかと思います。タワーマンションは根強い人気があり、最近では郊外にもブームが広がりを見せています。それでは、マンション、土地それぞれで価格はどのように推移しているでしょうか。2019年の東京23区のマンションの㎡単価、土地の㎡単価をそれぞれ見てみましょう。
マンションの㎡単価は、リーマンショック以降は下落傾向にありましたが、2013年から年々上昇傾向を示しており、変動も大きい傾向にあります。具体的には、2007年は856,000円でしたが、2019年は1,123,000円と12年間で31.19%の上昇が見られます。しかし、2018年の1,138,000円より僅かながらですが15,000円の下落となっていることから、マンションの㎡単価は調整局面の傾向が見られつつあるものの、12年前より30%以上も㎡単価が上がっていることになり、依然として㎡単価は高い傾向を示しています。
土地の㎡単価も、リーマンショック以降は下落傾向にありましたが、2014年から年々緩やかに上昇しています。しかし、マンションとの違いは㎡単価の上昇率が低い傾向を示していることです。具体的には、2007年は551,700円でしたが、2019年は590,900円となっており、上昇傾向にはあるものの2007年比で7.11%の上昇と未だ低い水準と言えます。
グラフ1 「東京23区のマンション、土地の㎡単価推移」
グラフ2 「東京23区のマンション、土地の㎡単価変動率(2007年基準)」 ※データ「東京都基準地価格 区市町村別用途別 平均価格の推移」 「不動産経済研究所 首都圏マンション市場動向」
ちなみに、マンション平均価格は2017年に7,000万円を突破し、2019年には7,286万円にまで平均価格が上昇しています。2019年の平均価格は2018年より高くなっており、㎡単価は下がっているものの平均価格は上昇しているという傾向が見られ、依然として新築マンションの価格は高い水準で推移していると言えます。
グラフ3 「東京23区の新築マンションの価格、価格変動率(2007年基準)」 ※データ「不動産経済研究所 首都圏マンション市場動向」
マンションの㎡単価上昇に比べて土地は緩やかな㎡単価上昇となっており、それぞれ異なる推移を示しています。マンションの㎡単価上昇の要因は、タワーマンションブームによる人気急騰、建築コスト高騰などが大きな要因と言われています。価格が高騰しても東京23区のマンションが人気である理由は、安心・安全で利便性が高くインフラも整備されている魅力的な都市であり、日本国内のみならず、外国人投資家からも高い支持を得ていることが挙げられます。しかし、マンションが供給過多になってきたことや、民泊新法施行や2018年の税制改革などで規制が強化された結果、タワーマンションより戸建て住宅に魅力を感じる人が増えてきたという背景もあり、昨今のマンションブームで過熱していた状況にも多少変化が現れてきています。
土地の㎡単価はリーマンショック以降に下落した後に緩やかに価格上昇してきているものの、未だ低い上昇率で購入しやすい傾向を示しています。最近はここに目をつける人も増えてきており、価格が高騰したマンションより、立地の良いエリアに土地を購入して、ライフスタイルに合わせたこだわりの注文住宅を建てたいという新たなニーズなども増えてきています。最近では、富裕層を中心にこだわりと非日常を感じることができる「億邸」への支持が高まってきているなど、住宅も多様化の時代に入ってきたと言えるかもしれません。
2.それでは、不動産の買い時はいつ?
不動産価格は市況によって変動し、高い買い物がゆえに欲しい物件が見つかった時に今が買い時かどうかについて悩まれると思います。また、2020年は東京オリンピックが開催されるなど、市況にも変化が現れると思われるため、専門家によっても今買うべき、今は待つべきなどの見解で分かれています。市況や今後の動向を考慮して今が買い時であるか待つべきかを検討するポイントを下記に示します。
ポイント1:土地(一戸建て)を購入したい方は、土地価格が低水準にあり購入には良いタイミング
前述の通り、土地の価格はまだ低水準状況にあります。しかし、緩やかであるものの上昇傾向にありますので、低金利で土地価格水準が低い時期を狙って購入できる今は良いタイミングと言えます。但し、エリアによって地価の変動傾向は異なり、都市部・郊外などではその傾向はますます顕著になってきていますので、エリア情報や相場情報をきちんと把握した上で、将来に渡って高い資産価値が維持できる立地条件の土地を購入することをおすすめします。
ポイント2:マンションから一戸建てへの買い替えを検討している方は早めの決断がおすすめ
東京23区の中古マンションの㎡単価は80.89万円と上昇傾向を示しており、高い水準で取引されています。しかし、新築マンションの価格が落ち着いてきている現状下では、今後の中古マンションの価格も調整局面に入る可能性があることをウォッチしておく必要があると言えるでしょう。
グラフ4 「東京23区の中古マンション㎡単価推移」 ※データ「東日本不動産流通機構 季報 Market Watch 2019年10~12月期」
マンションから一戸建て住宅への買い替えを検討している方は、できるだけ現在のマンションを高値で売却して、買い替えの一戸建てはできるだけ安価に手に入れたいと思われますが、その両方を満たすにはタイミングが非常に重要です。今はまだ中古マンションの価格相場が高い状態のため、時期としてはチャンスと言えるでしょう。政府で循環型社会を目指すべく中古住宅の流通を推進していることや、リノベーションブームなども後押しして、中古マンションが見直されていることもあり、中古マンション売却には適している時期と言えるでしょう。
ポイント3:住宅ローン金利は超低金利の今がお得
民間金融機関の変動金利(店頭金利)は2009年以来、2.475%で推移しており、金利優遇を受けるとかなり低水準の金利が継続しています。固定金利も低金利が継続しており、金利面を考えると住宅購入にはかなり有利と言えます。この低金利がいつまで継続するかも意見が分かれるところですが、低金利で住宅ローンを組める今はかなり有利であると言えます。
ポイント4:東京オリンピック以降に購入するかどうかで悩むなら資産価値の高い土地購入がおすすめ
2020年の東京オリンピック以降に不動産価格が下落するとの意見があり、買い控えた方が良いと言う意見もみられます。しかし、ロンドンのようにオリンピック開催後も不動産価格が上昇している事例もありますし、インバウンド効果でさらに地価上昇するという意見もあります。オリンピック後に不動産価格が下落すると予測して住宅購入プランを予め検討するよりも、ご家族や自身のライフプランの中で購入計画を立てることをおすすめします。少子高齢化や都市部と地方の二極化など、目まぐるしく変化する市況であるからこそ、後で後悔しないように、できる限り資産価値の高い土地・住宅を手に入れたいものです。具体的には人口増加率や街の再開発などで注目されているエリアに着目するなど、資産価値に目を向けて購入を検討することがおすすめです。
ポイント5:生産緑地の2022年問題で地価下落リスクを意識しすぎない
東京オリンピック以外に不動産価格が変動する可能性があると言われている「生産緑地の2022年問題」。2022年に大都市圏の農地が住宅用として大量供給される可能性から、地価が大幅に下落するという意見なども飛び交っていますが、2018年に改正生産緑地法が施行され「特定生産緑地制度」が創設されました。これにより、指定から30年が経過した生産緑地は10年ごとに更新されることになり、2022年以降に地価下落などの可能性は低くなったという意見が増えてきています。多くのメディアでも取り上げられている生産緑地の2022年問題ですが、「特定生産緑地制度」の創設により、地価下落リスクは低くなった、もしくは限定的になったとも言えるため、生産緑地の2022年問題を意識しすぎず不動産購入を検討することがおすすめです。
しかしながら、資産価値の高い土地を購入検討してみたいと思ってもなかなか難しいものです。どのようにして探せば良いか?不動産仲介会社を信用して良いか?色々な物件を比較したいけれどどうしたら良いか?などの不安を抱える方が多くいらっしゃいます。不安を払拭するために、確かなデータに基づいて土地探しを行うことから始めてみてはいかがでしょうか。(提供:sumuzu)