少子高齢化は日本経済にも大きな影響を及ぼします。特に中小企業においての事業承継は喫緊の課題です。今回は、事業承継問題について解説しつつ、事業承継の基本的なパターン3つを紹介します。
中小企業の半分が消滅する「2025年問題」
少子高齢化が進んだ現在、中小企業を中心とした事業承継が日本経済の重大な問題となっています。65歳以上の人口が総人口の約3割を占めるようになった現状は、中小企業においても他人事ではありません。
2017年に経済産業省と中小企業庁が出した試算によれば、今後10年の間に70歳を超える中小企業の経営者や個人事業主は245万人となり、その内約半分は後継者が定まらないままであるとされています。結果、中小企業の廃業や休業で2025年までには約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるおそれがあります。
中小企業は、企業数では日本企業の約99%を占め、従業員数では約70%を占めています。つまり、中小企業が日本経済を支えているわけですが、一方で「既に後継者を決めた」としている経営者は60代で約3割、70代でも5割程度に過ぎません(東京商工会議所アンケート調査より)。
今後の日本経済の維持・向上のためには、事業承継対策を急ぎ行うことが求められていると言えるでしょう。
経営者なら押さえておきたい事業承継3つのパターン
では、事業承継の方法としてどのようなものがあるのでしょうか。大きく分けて次の3つのパターンがあります。
親族内承継
親族内承継とは、文字通り「親族への事業承継」です。現経営者である父から子へのパターンが最も多いのですが、ほかにも妻や兄弟姉妹、甥や姪、孫といったパターンもあります。以前よりは減ってきたものの、今でも事業承継の主軸です。
親族内承継のメリットとして、相続などにより財産や自社株を移転できるため、経営と所有の分離が起きにくいことが挙げられます。子や妻など経営者により身近な親族が承継者であれば、周囲からの理解を得やすく、承継後の経営も順調に進むことが期待されるでしょう。また、早い段階で経営者教育を行うことができる点もメリットと言えます。
親族内承継のデメリットは親族内の争いにつながりやすいことと、承継者の能力が経営者向きだとは限らないことです。現経営者の相続人候補が複数の子である場合、事業承継により承継者である子に財産が集中するため、遺産分割争いになるおそれがあります。
また、事業への理解がある承継者でも経営者としての能力があるとは限りません。そのため、承継後の事業が難航する可能性もあります。
従業員・役員への承継
少子高齢化の影響もあり親族が必ず承継するわけではなくなってきた現在、長年事業に従事してきた従業員や役員へ事業を引き継ぐケースも増えてきました。
従業員や役員への事業承継のメリットとして、親族に限定せずに経営の才能のある人間を広く求めることができる点や、企業の文化や慣習を維持できるという点が挙げられます。
ただし、親族内承継と異なり、自社株の引継のための資金を別途用意しなくてはならないため、承継者自身の資金力が問われることになります。また、個人債務保証の引継などにもハードルがあるのがデメリットです。
M&A
親族が承継を嫌がるケースが増えてきたことなどから、M&Aも徐々に増加してきています。M&Aとは企業の合併や買収を指します。つまり事業承継におけるM&Aとは、自社そのもの又は事業を他社に譲り渡すことを言います。
M&Aのメリットは、親族内や社内よりも広く外部に承継先を探すことが可能である点にあります。また、自社や事業を売却した場合、売却後の資金が経営者に支払われるため、経営者は引退後の生活資金を確保できます。
その反面、必ずしも適切な買収先が見つけられるとは限らないことや、承継後は全く別の会社に移るがために経営の一体性を保てなくなるおそれがあることがリスクとなります。
事業承継の失敗の共通点は「準備不足」
以上3つが事業承継の基本的なパターンです。ただし、どのパターンを採用するにせよ、事業承継においては、できれば10年前後の時間をかけて準備するのが望ましいでしょう。なぜなら、事業承継の失敗の多くは準備不足にあるからです。
経営者が高齢であれば後継者候補も必然的に高齢になっていることが少なくありません。しかし、経営ノウハウの習得や、社内・社外の関係者による受け入れ、新たな人脈作りは若手の方がより円滑なのが現実です。
また、先代が死を予期して慌てて後継者を決めたところで、後継者が経営者向きではなかったり、自社の文化やルールになじめなかったりすれば、引継は乗り切れても承継後の経営は難航する可能性が高くなります。
承継後の経営も含めて事業承継を成功へと導くためには、現経営者は早々に事業承継の準備を行う必要があると言えるでしょう。(提供:相続MEMO)
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