「両親が農業を営んでいる」「代々引き継いでいる田畑がある」など、農地を所有している人に相続が発生した場合、相続財産としての評価はどのように行われるのでしょうか。今回は農地の相続税評価の方法や相続財産としての農地の種類についてお伝えします。

相続税評価における農地の種類

農地
(画像=Valentin Valkov/Shutterstock.com)

農地は農地法・農業振興地域の整備に関する法律・都市計画法などによって、その取り扱いや売買、農地以外での利用や転用について様々な規定があります。日本の農業生産の基盤である農地を守るためのもので、農地以外での利用を規制することによって農地の権利や利用を確保し、農業生産の増大や食料の安定供給を確保することを目的としています。

相続財産としての農地についても前述の法律に基づき、次の4つに分類されています。

1.純農地
農用地区域内にある農地のほか、市街化調整区域内にある農地のうち「第1種農地」又は「甲種農地」にあてはまる農地などが該当します。周辺一帯に農業を営んでいる土地が多い区域にある農地というイメージです。

2.中間農地
「第2種農地」にあてはまる農地などが該当し、後述する「市街地周辺農地」と純農地との中間に位置づけられた農地です。

3.市街地周辺農地
「第3種農地」にあてはまる農地が該当し、中間農地と比較してより市街地の近くに位置します。

4.市街地農地
市街化区域内にある農地で、文字通り街中にある農地が該当します。

農地の評価方法は?

このように相続財産としての農地は4つに分類されますが、評価方法も次のように変わってきます。一般的に純農地の評価が低くなっていて、市街地に近づくほど評価額が高くなっていきます。

1.純農地及び中間農地の評価
「倍率方式」によって評価されます。倍率方式とは道路に「路線価」が付いていない地域の土地を評価する方法で、該当農地の固定資産税評価額に国税庁が公表している「評価倍率表」記載の倍率を乗じて評価します。

・固定資産税評価額×倍率

2.市街地周辺農地
該当農地を、後述する市街地農地として評価した場合の80%が相続税評価額となります。

3.市街地農地
「宅地比準方式」又は「倍率方式」によって評価されます。前述の評価倍率表に倍率が記載されていれば倍率方式で、「比準」などの記載があれば宅地比準方式で評価することになります。

宅地比準方式は、該当農地を宅地とみなして評価した後に、宅地に転用する場合にかかる造成費相当額を差し引いて評価額を算出します。市街地にある農地は宅地と同様に評価するという考え方で、いわゆる「宅地並み課税」と呼ばれているものです。

農地を宅地とみなす場合の評価は、路線価地域であれば路線価を基に、倍率地域の場合には該当農地に最も近接し、かつ道路からの位置や形状などが最も類似する宅地の評価額を基に計算されます。

・宅地比準方式:(その農地が宅地であるとした場合の1平方メートルあたりの価額-1平方メートルあたりの造成費)×地積
または
・倍率方式:固定資産税評価額×倍率

評価額や納税額が大きくなる場合には

市街化区域にある農地や地積の大きな農地など、場合によっては相続税評価額や相続税の負担が大きくなることも考えられます。農地を相続する予定のある場合には、まずは評価額がどれくらいになるのか、ほかの財産と合わせた総額に対して相続税がどれくらいかかるのかを試算しておく必要があるでしょう。

また農地を相続する人が引き続き農業を営むかどうかによって、農地を売却・転用して納税資金を準備するのか、「農地等に対する相続税の納税猶予及び免除の特例」を活用して農地を保有しつつ税負担を軽減するのか、といった判断が変わってきます。

売却を行う場合にも特例を活用する場合にも手続きに時間がかかる場合がありますので、相続後に農地をどうするかを決めた上で、相続発生前にできることは進めておいたほうが賢明と言えます。(提供:相続MEMO


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