要旨

欧州経済見通し
(画像=PIXTA)
  1. 欧州圏内では新型コロナウィルス感染者数が急増しており、イタリアは3月9日に全土の封鎖措置を決めた。イタリアの深い景気後退は避けられず、財政の中期目標(MTO)からの逸脱は避けられない見通しとなった。
  2. イタリア以外の国でも感染封じ込め策と同時に雇用助成金や休業補償、企業の資金繰り支援など経済雇用対策を強化する動きが広がっている。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は16日に定例会合を予定するが、コロナ危機の経済活動への影響と、財政面での対応が主題とならざるを得ないだろう。
  3. 現時点では、中国発の影響もイタリアの封鎖措置の影響も、統計的に把握することは困難であり、経済見通しは流動的だ。1~3月期と4~6月期の二期連続のマイナス成長の後、緩やかに正常化すると想定した場合、2020年の実質GDPは0.1%となる。リスクバランスは下方にある。
  4. 3月12日理事会でのECBの追加緩和への期待も高まっている。流動性供給に万全を期すため、TLTROⅢの条件緩和に動く可能性は高そうだ。マイナス0.5%の中銀預金金利の深堀りは、副作用が懸念される上に、そもそも余地に乏しく、温存の可能性もある。資産買い入れ増額も見送られる可能性がある。
  5. 市場の期待を裏切れば、ユーロ高が進むリスクはある。ドラギ前総裁であれば、市場の期待を上回る緩和に動く局面だろうが、果たしてラガルド総裁はどう動くか。12日理事会の結果を待ちたい。
欧州経済見通し
(画像=ニッセイ基礎研究所)