要旨

日銀短観
(画像=PIXTA)
  1. 3月調査短観では、新型コロナウィルスの世界的拡大に伴う輸出の減少、中国を起点とする部品供給網の寸断、円高の進行などを受けて大企業製造業で大幅な景況感の悪化が示されると予想する。輸出型業種のみならず、国際商品価格下落と需要減に直面する素材系業種でも景況感の悪化が避けられないだろう。非製造業も、増税に伴う消費の低迷が長引く中で、渡航制限による訪日客の急減、各種イベント休止や外出自粛の影響が加わったことで小売や宿泊・飲食、運輸・郵便を中心に景況感が明確に悪化すると予想される。
  2. なお、先行きの景況感も幅広く悪化が示されるだろう。新型コロナウィルスは未知の部分が多く、未だ終息の兆しが見えないため、企業の間で経済への悪影響が長期化する事態への警戒が高まっているとみられる。
  3. 2019年度の設備投資計画は前年比1.5%増へと下方修正されると予想。例年3月調査ではわずかな修正に留まる傾向があるが、今回は明確な下方修正となるだろう。また、新たに公表される2020年度計画は、2019年度見込み比で6.4%減と予想。例年3月調査の段階では前年割れとなる傾向があるが、今回は例年の水準を明確に下回ると見込んでいる。新型コロナの感染拡大を受けて多くの企業の事業環境が急速に悪化しており、先行きの不透明感も強まっているため、企業の設備投資スタンスは慎重化していると考えられる。
  4. 今回の短観は、新型コロナ拡大に伴う経済活動の停滞が企業にどの程度の悪影響を与えているかを計る大きな材料と位置付けられる。従って、業況判断DIの足元の低下幅、先行きにかけての方向感、設備投資計画の下方修正状況、新年度計画(収益・設備投資計画)の下振れ度合いなど注目すべき点は多い。いずれにせよ、企業マインドや設備投資計画に底入れ感は確認できず、「先行きにかけても警戒を要する」との受け止めが優勢になりそうだ。
日銀短観
(画像=PIXTA)