(本記事は、山本崚平氏の著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
雑談で役立つ「基準の数字」
●知っておきたい3つの「基準の数字」
取引先や同僚との雑談も、ビジネスでは大切な仕事の1つです。相手が会社や業界の上位者であればあるほど話の中の情報量も豊富で、知らない情報や数字もたくさん出てきます。
数分間であれば、知らないことでも相づちを打ちながらやり過ごすこともできるでしょうが、会食などで長時間をともに過ごす場合は、そうもいかなくなります。
そんな時に重要なのが、「基準の数字」です。
とはいえ、世の中にある「基準の数字」をすべて覚えることは到底できません。
そこで、今回はビジネスパーソンとして、これだけは知っておいたほうがよい3つの「基準の数字」を紹介しましょう。すぐに使うタイミングがくるかどうかはわかりませんが、「数字の教養」として身につけておけば、雑談の時に一目置かれることは間違いありません。
(1)世界各国のGDP
GDP(国内総生産)は、一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額のことで、「Gross Domestic Product 」の略です。
日本の名目GDPは約500兆円です。アメリカは、約2100兆円で日本の約4倍、中国は約1300兆円で日本の約3倍です。
アメリカ、中国、日本に次ぐのがドイツで、ドイツのGDPは約395兆円で日本の約0.8倍、その次がイギリスで約280兆円、日本の約半分です。
いかに1位のアメリカと2位の中国のGDPが大きいかがわかるでしょう。
ここでも、細かな数字を覚える必要はありません。日本の名目GDPが約500兆円であることと、アメリカは日本の約4倍、中国は約3倍とだけ覚えておきましょう。
海外進出などを検討する際にも、毎年のGDPを観察しておけば、成長性のある国、そうでない国の判断もつきます。
(2)世界各国の国土面積
日本の面積は、約37万8000平方キロメートル(377,971㎢)です。
世界一広いといわれるロシアは、約1700万平方キロメートル(17,098,246㎢)で、日本の約45倍の大きさです。
2番目に広いカナダは約998万平方キロメートル(9,984,670㎢)、3番目に広いアメリカは約983万平方キロメートル(9,833,517㎢)で、日本の約26倍もあります。中国の面積もほぼ同じです。
さて、こう比べてみると日本は小さな島国だと思いがちですが、果たして本当に小さいのでしょうか。
国土面積ランキングでは、日本は194カ国中61位であり、真ん中よりも上位に位置します。
また、島国に限れば本州は約23万平方キロメートル(231,127㎢)となり、世界第7位の大きさです。1位はデンマーク領のグリーンランドで、約217万平方キロメートル。(2,166,000㎢)大きさは日本の本州の約9.4倍です。
近隣に中国やロシアなど大きな国があることで、「小さい」と認識するのかもしれませんが、このデータからは日本は決して小さな島国ではないことがわかります。
(3)日本経済の地域格差
「県民経済計算」という指標があります。
これは、「都道府県(以下県という)内、あるいは県民の経済の循環と構造を生産、分配、支出等各方面にわたり計量把握することにより県経済の実態を包括的に明らかにし、総合的な県経済指標として、県の行財政・経済政策に資すること」を目的とする指標です。
要は、各都道府県当たりどれだけ稼いでいるかを示す指標と言っていいでしょう。やや古めではありますが、平成28年度のデータを紹介します。
東京都は約105兆円(1044700億円)で全国1位。逆に最下位は鳥取県で約1.9兆円(186407億円)。その差は約55倍です。大阪府は約40兆円(389950億円)、愛知県も約40兆円(394094億円)となっています。
東京・名古屋・大阪を3大都市などと言いますが、実際は東京1強という感じです。
また、この県民経済計算は、県民所得との関連があります。県民1人当たりの所得(平成28年度)で言うと、東京都は534万8000円、鳥取県は240万7000円と倍以上の差があります。大げさに言えば、稼ぎたければ県民経済生産の高い地域で働くほうが効率はよいといえます(もちろん、給与水準も高く、働きやすい環境を整えている企業は、地方にはたくさんあります)。
このように数字で見ると、東京の一極集中と地方の弱体化がより鮮明になります。
この数字の傾向(東京が高く、地方が低い)は、今後も広がっていくでしょう。政府は最低賃金を全国平均で1000円まで引き上げようと、毎年20円以上のペースで引き上げています。県ごとの生産値が異なるのに、最低賃金を全国平均で引き上げるのは、地方で企業を営む経営者からすると、たまったものではないという感想をよく聞きます。
●数字で「あいまいさ」をなくす
ここで、「大きい・小さい」「多い・少ない」などと表す時の考え方について説明しておきましょう。
「大きい・小さい」といった程度は、相対的な要素と絶対的な要素の2つで決まります。
・相対的……他者と比べることによって表現する方法
・絶対的……尺度のように、数字や単位などの一定の基準を使って表現する方法
数字を使って話すことが大事なのは、この相対的な尺度が人によってさまざまだからです。
私は辛いものが大好きで、よく「蒙古タンメン中本」という激辛タンメン屋に行くのですが、そこでは辛さを表す単位に「唐辛子の本数」を使っています。
実際に使っている唐辛子の本数ではなく、辛さの単位としての本数です。
たとえば、唐辛子の本数がゼロ本なら、辛みゼロ。2~3本ならやや辛い。5本以上だとかなり辛い、といった具合です。
ただ、この唐辛子の本数も、辛いものが好きな人と、そうではない人が食べるのでは感じ方はまったく違うでしょう。この唐辛子の本数の表し方はあくまで、激辛ラーメン屋さん内での相対的な表現だからです(ゼロ本は絶対的な表現です)。
同様に、「大きい・小さい」「遅い・早い」、という表現も人によって、何と比べているかによって捉え方がまったく異なります。
数字で表現すれば、こうした個人の認識の差やあいまいさを排除することができます。数字で表すことは、認識を共通させ、お互いの理解をそろえ、それによってビジネスをより早く前に進めるとともに、ミスを減らすための秘訣なのです。
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