(本記事は、山本崚平氏の著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)

新規顧客の獲得は既存顧客の「5倍」のコストがかかる

新規顧客
(画像=Photon photo/Shutterstock.com)

●もっとも難しい新規顧客の獲得

営業に携わる人であれば「新規!新規!新規!」と会社から口酸っぱく言われていることでしょう。それも当然で、新規獲得活動を行わなければ、企業はいずれ先細ってしまいます。既存顧客に頼った経営では、得意先が離れた場合に取り返しがつきません。

だから、新規顧客の獲得は、どの企業でも最重要課題として挙げています。ところが、営業で一番難しいのが、この新規顧客の獲得です。

マーケティングの世界における経験則的な考え方に、「1対5の法則」というものがあります。

これは、新規顧客を獲得するには、既存顧客の5倍のコストがかかるという法則です。商品を買ってもらう場合に、既存顧客には10万円のコストですむ場合、新規顧客には50万円かかるということです。

新規顧客に自社商品を認知させ、買ってもらうためには、大規模な広告を売ったり、新規限定のキャンペーンを行ったり、サンプルを配布したりするなど、多くのコストがかかります。携帯電話会社の新規獲得手法がよい例でしょう。

●顧客が商品を買うまでのプロセス

顧客の購買行動は、「AIDMA(アイドマ)」という流れで進むといわれています。AIDMAとは、次の(1)~(5)の頭文字を取ったもので、1920年代にサミュエル・ローランド・ホールが提唱した理論です。

(1)Attention(注意)
(2)Interest(関心)
(3)Desire(欲求)
(4)Memory(記憶)
(5)Action(行動)

顧客に購買を促すためには、まず商品に目を向けさせ、どんな商品なのだろうかと関心をもたせる。次に、この商品がほしい!という欲求を刺激し、記憶に残すことで購買を促す、という流れがAIDMAというフレームワークです。

ちなみに、いまではインターネットでモノを買うのが一般的になり、このフレームワークにも変化が見られます。

同じ5段階でも、最近ではAISAS(アイサス)というフレームワークに注目が集まっているようです。また、AISCEAS(アイシーズまたはアイセアス)や、DECAX(デキャックス)といったフレームワークもあります。

顧客の購買行動のフレームワーク

AISAS
(1)Attention(注意)
(2)Interest(関心)
(3)Search(検索)
(4)Action(行動)
(5)Share(共有)

AISCEAS
(1)Attention(注意)
(2)Interest(関心)
(3)Search(検索)
(4)Comparison(比較)
(5)Examination(検討)
(6)Action(行動)
(7)Share(共有)

DECAX
(1)Discovery(発見)
(2)Engage(関係)
(3)Check(確認)
(4)Action(行動)
(5)eXperience(体験と共有)

●既存顧客を大事にしよう

このように新規顧客の獲得には多くのコストも手間もかかることから、新商品販売をする時はまず、既存顧客へ販売することがビジネスのセオリーとなっています。

既存顧客はすでにこちらの会社を知っているわけですから、既存顧客に新商品を売ったほうが労力は少なくてすみます。既存顧客であれば、習慣で購入することもあり、割引をする場合は割引額も少なくてすむでしょう。

「1対5の法則」は、新規顧客獲得には多くの費用がかかるという教訓ですが、反対に既存顧客とつながり続けるには、新規顧客の5分の1のコストしかかからないという見方もできます。

一度きりの顧客で終わるのではなく、リピート化の取り組みがいかに重要かということがわかるでしょう。

同じくマーケティングの経験則で、「5対25の法則」というものがあります。

これは、5%の顧客離れを改善すれば、25%利益がアップするというものです。

既存顧客のフォローも新規顧客の獲得と同じくらい大切にしなければならないと思える法則です。

アメリカの「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌が行った調査によると、顧客が離れていく理由は次の5つに分けられるといいます。

1位:事業者に相手にされないから(68%)
2位:商品やサービスに不満を感じて(14%)
3位:自分で価格や商品を比べて(9%)
4位:友人からの別商品のすすめ(5%)
5位:引越や死亡など(4%)

この調査によれば、事業者が顧客とコミュニケーションをとり続けるだけで、顧客離れを止めることができるのですから、たとえ用事はなくても、しばらく関わりのなかった顧客にはいますぐにでも挨拶に行くべきでしょう。

最近はあまり見ませんが、アポイントなしの訪問営業も、このデータを見ると有益といえるかもしれません。

商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ
山本崚平(やまもと・りょうへい)
株式会社新経営サービス シニアコンサルタント。1991年、和歌山県生まれ。大阪教育大学教育学部卒業後、新経営サービスに入社。ベンチャー企業から中堅企業を対象に、経営計画の達成に向けたPDCAマネジメント支援や人事制度の構築・運用を通じた組織開発、教育研修の支援を実施。特に若手ビジネスパーソンを対象に「数字のつかみ方・使い方・伝え方」の重要性を指導、教育している。また経営理念・方針の実現と業績向上をモットーとし、顧客企業に深く入り込むスタンスでの支援に定評がある。経験業種・企業規模は多岐にわたる。

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