(本記事は、山本崚平氏の著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
1位と2位の差は2倍開く
●何でも1位が圧倒的に強い
「2位じゃダメなんでしょうか?」
昔、ある国会議員の発言が話題になりましたが、実際は1位と2位の差は想像以上に大きいものです。
「ジップの法則」と呼ばれる法則があります。これは、1位と2位の差は2倍で開くという法則です。
アメリカの言語学者ジョージ・キングズリー・ジップが、英文の中で一番出てくる単語は何かを調査したところ、1位は「the」で7%、2位は「of」で3.5%、3位は「and」で3%となったそうです。つまり、1位の単語の半分の数が2位の数となり、1位の単語の3分の1の数が3位の数となったのです。
この現象は、シェイクスピアの「ハムレット」などの1作品中でも成立するといいます。
ほかにも、ウェブページへのアクセス頻度や都市の人口(都市の順位・規模法則)、上位3%の人々の収入、音楽における音符の使用頻度、細胞内での遺伝子の発現量などにも、この法則は当てはまります。
実際に日本の都市の人口を見ると、東京都特別区部は927万人、神奈川県の横浜市は372万人、大阪府の大阪市は269万人となり、横浜市は東京の約40%、大阪市は、東京の約29%となり、この法則通りといっていいでしょう。
●競争相手に勝つには
ジップの法則は、このように主に言語や都市の人口には当てはまりますが、ビジネスの場ではどうなのでしょうか。
まず、1位と2位では、人の記憶に残る確率が圧倒的に違います。
そして第3章で紹介したAIDMAの「A」(Attention=注意を引く)に当てはめると、この違いによって、最終的に商品の購買率も変わってきます。
また、「ランチェスター戦略」でも、1位と2位以下では戦い方は大きく異なります。
ランチェスター戦略によると、1位の会社が取るべき戦略は、「足下の敵」攻撃です。つまり、2位の会社に焦点を当てて戦えば、自社のシェアはよりアップすることになり、1位と2位の差をより大きくすることができるというわけです。このように2位の会社と戦うことを「ミート戦略」といいます。
一方、2位以下の会社は、総力では敵わないため、なるべく「一対一」の戦いに持ち込める場面を選んで戦力を一点集中する「ゲリラ戦」のほうが有利といわれています。
どんな分野でも、1位であることは大きな強みやブランド力になるのです。
組織は必ず「2:6:2」の割合に収束する
●働かないアリが生まれるワケ
「働きアリの法則」というものがあります。北海道大学大学院の長谷川英祐准教授の研究によって導き出されたもので、「2割はよく働き、6割は普通に働き、2割は怠ける」というものです。
アリの集団をよくよく観察してみると、働きアリの中に必ず2割くらいはサボっている「働かないアリ」がいます。働かないアリを集団から取り除くと、残りの集団からまた2割程度が働かないようになります。逆に、働かないアリだけで集団をつくると、一部は働き者となり、2割のアリは働かなくなりました。
この背景には、アリの生き延びる知恵が働いているようです。
アリの世界では、仕事に対する「反応閾値」(感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの量)があります。反応閾値とは、平たく言うと出来事に対するフットワークの軽さです。
やるべき仕事がある時は、まず反応閾値が低いアリが動きます。そのアリが疲れて動けなくなると、働いていなかった反応閾値が高いアリが働くようになります。アリの巣にいるアリ全員がいっせいに働くと、疲弊するタイミングが同じになり、危機的な状況に対応できません。そのために、常に働かないアリがいるように組織が「仕組み化」されているのです。
このように、常に労働を停滞させないのが、「働きアリの法則」の効果です。
●6割の人の行動は2割の人に影響される
ヒトの組織においても、経験則で「2:6:2」が当てはまります。
会社などの組織では、「仕事のできる人・普通の人・できない人」が「2:6:2」の割合で分かれます。これを「2:6:2の法則」と呼んでいます。
多くの企業の人事担当者に聞いても、だいたいこの比率が当てはまるそうで、2割のハイパフォーマーが、真ん中の6割を牽引しており、何か問題を起こすのは決まって下の2割の社員といいます。
ただし、会社の場合重要なのは、中間の6割、および下の2割をいかに引き上げるかということです。それが、組織全体の強さを生み出します。
下の2割の人も、組織のバランスを保つには必要な人材です。働きアリの法則に照らし合わせると、下の2割を排除したとしても、真面目に頑張っていた6割の中の誰かが、下の2割になるのです。
私が人事制度の支援を行う時に大切にしているのは、全員が活躍できる組織をつくることです。そのために「顧客企業、そこで働く社員、そして顧客企業の取引先もハッピーになる制度」を提案したいと考えています。
しかし実際は、全員がハッピーになれる制度をつくることができるケースは、そう多くはありません。改革のタイミングで、既得権益となっていた諸手当や処遇などを見直す(多くは減らす、なくす)ことが多いからです。
そのため、提案や改革の内容にかかわらず、常に2割は反対する人がいます。
改革について社員の人に説明したあとにアンケートを実施すると、ほぼ賛成が2割、反対が2割、どちらでもないが6割となります。そして、賛成の2割側に影響力の強い人がいれば、どちらでもない6割の層は賛成側に回ります。
ですから、私たちとしては、2割の強い賛成をとりつけることに全力を注いだほうが、どちらでもない6割を賛成へと導きやすい──ということになります。
組織改革では、この法則のバランス・オブ・パワーを有効活用すべきです。
●人間関係にも当てはまる「2:6:2の法則」
人間関係においても同じです。
大学時代に塾講師をしていた時は、生徒から「友達とうまくいかない」「本当に仲のいい友達がいない」といった悩みをよく相談されました。そんな時は、「人間関係は2:6:2の法則だよ。心の底から信頼できて仲のいい人はたった2割、普通くらいの友達が6割、絶対に仲良くなれない人は2割いる。だから、うまくいかない友達は、下の2割と思って割り切るしかないよ」
と答えていました。
職場の人間関係でも、どうしても相性のよくない上司や同僚がいると思います。しかし、その人たちは、絶対にうまくいかない2割の人かもしれません。その人との関係をよい方向へ変えようと努力しても、徒労に終わる可能性が高いので、割り切って、関係を悪化させない程度に付き合うしかないでしょう。
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