(本記事は、山本崚平氏の著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
人はなぜ3という数字が好きなのか
●不思議な魔力がある「3」の数字
「松竹梅」「一富士・二鷹・三茄子」「三種の神器」などに代表されるように、古くから日本人は3という数字をよく使います。3点倒立、三位一体、三すくみ、ジャンケンもグー・チョキ・パーの3つです。
漢数字も、1~3までは、「一」「二」「三」と横棒が増えていくのに、4になると急に規則性がなくなり「四」となります。
これは日本だけのことではありません。ローマ数字でもⅠ、Ⅱ、Ⅲまでは、縦線のみで構成されているにもかかわらず、4という数字になると急に「Ⅳ」と表記され、Vという文字が入ります。
人はなぜ「3」という数字でまとめるのが好きなのでしょうか。
それは、「3」が、三角形の形状が象徴するように、安定感がある数字だからです。
「2」でも「4」でもなく、3点の均衡がとれた「3」という数字に、私たちは心のどこかで無意識に安心感を覚え、使いたくなるのでしょう。
ビジネスの場面でも、この「3」が多く登場します。できる人は、3という数字をキーナンバーに仕事することが多いのです。
●話のポイントは3つに絞る
「話のポイントがうまくまとめられない」という相談を、若手社員の方からよく受けます。
そんな人は、伝えたい内容をまず3つに絞ることから始めましょう。それだけで、不思議とうまく話せるようになるものです。
3つに絞ると、ヌケ・モレがないように感じさせることができますし、聞き手も負担なく覚えることができます。
私の場合は「理由としては3つあって……」と言うのが口癖です。まず、3つの理由があることを伝え、その後で1つひとつ説明していくことで、論理的なイメージを高めるとともに、聞く側の理解を深めることができるからです。
もっとも、2つしか理由が思いついていないこともありますが、そんな時は「3つ目は、いま申し上げた2つ以外のやり方です」と逃げ口上を言うこともあります。それでも、ポイントを絞ることで相手は話の内容を飲み込みやすくなるものです。「話の内容がわかりにくい」と言われがちな人は、ぜひ3つにまとめることを心がけてみてください。
ちなみに、2001年に、ミズーリ大学のネルソン・コーワンが、「マジカルナンバー4±1」という考え方を提唱し、瞬間的に記憶できるのは3〜5個の情報であるとしています。つまり、こちらの意見を相手にしっかりと理解させたい時は、3つ(もしくは5つまで)に絞らなければならないのです。
たとえば、この本を読むメリットを、
(1)数字を使って話せると、ビジネスパーソンとして一目置かれます! (2)基本的なビジネス法則を身につけることで判断が早くなります! (3)ロジカルに考えることができ、相手を納得させることができます!
と3つにまとめれば、読んでもらいやすくなります。
反対に、ポイントを数多く述べすぎると、内容は相手の記憶に残りにくくなります。
かつて契約の約款の裏面に、細かい文字で数多くの事項が記載され、重要な免責事項が隠れていることもありました。いまは法律によって、約款について契約者が理解するまできちんと説明することが義務づけられていますが、商品紹介などでたくさんのメリットをうたう商品は、疑ったほうがいいかもしれません。
プレゼン、企画書づくりも「3ステップ」で
●3つの構成でストーリーを組もう
プレゼンでこちらの思いを伝えたり、企画提案をしたりする場合は、ストーリー形式で伝えるとうまくいきます。中だるみを防ぎ、相手の興味を引くことで説得力も増すからです。
ストーリーをつくる場合は、どういった順序で説明し、どこに山場を持ってきて、最終的にどこに落とし込みたいのかを考えなければなりません。
ストーリーも3つの構成でつくるのがポイントです。
能の世界では、三段構成を指す概念として「序破急」という考え方があります。「序破急」はストーリー構成を考える時によく使われるフレームワークです。
まとまった文章の構成としては「起承転結」の考え方が一般的ですが、「序破急」を「起承転結」に当てはめれば次のようになります。
・序……起承転結の「起」に当たり、登場人物やストーリーの設定などを行い、観客を引き込む役割を担う部分です。
・破……起承転結の「承」と「転」に当たり、物語の急展開を生み、聞き手(読み手)に、これからどうなるのだろうか?という期待感をもたせる部分です。
・急……起承転結の「結」に当たり、ストーリーを終了させ、観客の満足する終わり方に導く部分です。
●プレゼンの3ステップ
この「序破急」の概念は、プレゼンのシーンでも用いられます。
プレゼンにおける序破急は次の通りです。
プレゼンにおける序破急 序:プレゼンの目的や導入部分。聞き手が聞きたいであろう内容を伝えることが目的です。 破:プレゼンの山場。伝えたいことを盛り込みながら、聞き手に「なるほど」と思わせることが狙いです。 急:プレゼンの終盤。プレゼンの目的を達成するために、行動を促すようなクロージングを行います。
●企画書の3ステップ
企画書も「序破急」の3つのステップを踏んだストーリーをつくることで、相手の関心を引き、興味深く読んでもらうことができます。
企画書における序破急は次の通りです。
企画書作成における序破急 序:読み手の期待値が高まるような企画名、実現したいことを記載します。 破:企画実現に向けた具体策、または考えられる障害を記載します。 急:企画書の内容が実現された状態を具体的に記載します。
●企画書づくりに役立つ「TAPS」
ちなみに、企画書をつくる場合は「TAPS」というフレームワークも役に立ちます。フレームが4つになりますが、大変便利なので紹介します。
TAPSとは、「To be」「As is」「Problem」「Solution」の4つの頭文字で、理想の姿と現状のギャップをもとに構成を考えるフレームワークです。TAPSは〈(1)目標の設定→(2)現状の分析→(3)問題の発見→(4)問題の解決〉の順番でプランをつくります。
(1)「To be」(あるべき姿・目標) 企画する対象のあるべき姿、つまり目指したい姿やこうあるべきという目標をはじめに提示します。
(2)「As is」(現状) あるべき姿や目標に対して、現在はどういった状況なのかを伝えます。
(3)「Problem」(問題) 問題とは、目標と現状の「差」だといわれます。「あるべき姿」と「現状」の差は何か、その差によって、どのような問題が起こっているのかを指摘します。
(4)「Solution」(解決策) 問題に対する解決策を記載し、企画内容の妥当性を示します。
ちなみに、コピーライティングの世界に、“Not read Not believe Not act”という有名な言葉があります。広告を見たとしても人は「読まない、信じない、行動しない」という意味に解釈されています。「この3つの壁を乗り越えることができなければ、セールスレターやメルマガを見ても、人は商品を買わない」という意味の、消費者の心理的な壁を表す言葉です。
この考え方は、プレゼンテーションや、企画書作成の場合も当てはまります。読 み手は、聞きたくないし、読みたくないし、理解したくないスタンスでいます。だ から、「序破急」の流れのあるプレゼンや企画書が必要なのです。
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