(本記事は、山本崚平氏の著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
数字をつかむ基本は「倍数」と「分数」
●ニュースの意味をすばやくつかむコツ
数字の規模のつかみ方です。
数字が得意な人は、ざっくりと全体像をつかむことに長けています。全体像をつかんだあとに、細かな数字に落とし込んで「自分ごと化」していきます。
ポイントは「倍数」で全体像をつかみ、「分数」で自分ごと化することです。
たとえば、「1万の1万倍は?」と聞かれて、即答できるでしょうか。
これも、コツさえ覚えれば、おおよその数をすばやく計算できるようになります。下に、数字の全体像をつかんで自分ごと化するための、数字の対応表を掲載しました。
この表をもとに、日常で数字が出てきた時に、頭の中で倍数、分数の計算をして、トレーニングしてみてください。
この感覚をつかむことができれば、日々のニュースを自分ごととして捉えることができます。
たとえば、2019年の日本の国家予算は100兆円超でした。
100兆円と聞いても、その数字が自分の生活にどう関係するのか、よくわかりません。
しかし、この予算も、もとをただせば我々国民1人ひとりの税金から捻出されているものです。「自分ごと化」にするために、1人当たりどのくらいの負担になるかを考えてみましょう。
日本の人口が約1.2億人だとすると、1人当たりは〈100兆÷1.2億円=約80万円〉です。つまり、1人当たり80万円程度の負担で、国家予算が成り立つことになります。
2018年度の日本の税収は約60兆円です。ですから、〈60兆÷1.2億=1人当たり約50万円〉が、私たちが負担している金額です。
税収の年度と予算の年度が異なるので単純に比較はできませんが、100兆円の国家予算を組むために必要な金額が、国民1人当たり80万円だとすると、国家予算から税収を引いた残りの30万円が不足します。
不足した分は毎年、国債(国の借金)によって補われていることになります。
そして、この国債は2019年3月末時点で約1100兆円(1103兆3543億円)にも膨れ上がっています。
これは、国民1人当たり、約1000万円の負担です。この借金は私たちの子どもや、孫の世代に引き継がれることになるでしょう。この負担に耐え切れなくなった時は、増税や行政サービスの低下など、さまざまな影響が私たちの身にふりかかってきます。
このように単にニュースを見ているだけは、自分ごととして捉えられませんが、1人当たりとすることで、その数字が自分にとってどんな意味を持つのかがわかってくるようになるのです。
●気に入った電卓を持つことに意味がある
こう説明しても、「そうはいっても、やっぱり数字は苦手……」という人も少なくないかもしれません。
そうした人が数字に対する苦手意識をなくす、ごく簡単な方法は、電卓を常に持ち歩くことです。
会社の打ち合わせや仕事にまつわる日々の雑談の中でも、数字が出てくるシーンはたくさんあります。
たとえば、営業会議が終わったあとのことを考えてみてください。今期の目標と当月の実績はスラスラ言うことができるでしょう。ところが、累計や前年同月比、利益率、傾向値などの数字をスラスラ言える人はなかなかいません。多くの人は会議の15分前に慌てて見て、会議が終わればすっかり忘れているものです。
数字の根拠やロジックのことを「数字のWHY」と私は言っていますが、「数字のWHY」を追求するには電卓は不可欠です。手元に電卓を持つだけで、出てきた数字の根拠をすばやく追うことができます。「数字のWHY」に関心のある人は例外なく数字に強いものです。
では、日頃使う電卓はどんなものがよいのでしょうか。
税理士や経理担当者などの実務家であれば、複雑な計算のできる大きい電卓が必要ですが、我々が使うのはせいぜい四則演算レベルです。小さくて、持ち運びができるものが望ましいでしょう。
私の使っているMILANというスペインの8ケタポケット電卓は、利便性がよく、カラーバリエーションも豊富で、持っているだけで所有感も満たされます。
この所有感が満たされるところが案外ポイントです。
電卓は人前で出すことが多いので、自分が気に入らない電卓だと、使いたくなくなってしまいます。
スマートフォンにも電卓の機能がありますが、スマートフォンを操作しながらビジネスの打ち合わせをするのは、失礼だと考える人も多いので、ちゃんとした電卓のほうがベターです。ちなみに、電卓を人前で出すことはマナー違反ではありません。
ぜひ自分のお気に入りの電卓を見つけて、会話に数字が出てきたら電卓を出す癖をつけてください。
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