(本記事は、山本崚平氏の著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)

市場の「3割」を取れば1人勝ち

3割
(画像=Devenorr/Shutterstock.com)

●シェア「3割」が1つの分岐点

自分の携わる業界にライバルがいなければ、どれだけうれしいことでしょうか。戦わずして勝つことができるはずがないと思うかもしれません。

ところが、「ランチェスター戦略」という考えによると、ライバルに勝ち、市場を独占しすぎるとかえって弊害も生まれるといいます。

イギリスのランチェスターが編み出した「ランチェスターの法則」は、2つの軍隊の戦闘力を数式に表したものでした。「ランチェスター戦略」は、この法則をビジネスにおける企業同士の戦い方へ応用したものです。

「ランチェスター戦略」では、市場シェアの下限目標として、26.1%という数字を掲げています。この約3割を超えれば、市場の競争相手の中から一歩抜け出し、頭一つ抜けた強者、いわゆる寡占状態と認知されます。

ただし、それ以上のシェアを求め始めてしまうと、社内に油断や驕おごりが生まれ、いずれ逆転されてしまうリスクが生じます。

たとえば、1976年にキリンビールは63.8%という驚異的な市場シェアを握っていました。

ところが「キリンラガー」の独壇場だったにもかかわらず、シェアは、「アサヒスーパードライ」にどんどん奪われていきます。

キリンビールでは、シェアが60%を超える頃から、ダントツの首位であることから驕りが生まれ、経営トップ以下、組織全体の危機感がなくなってしまったのです。新商品開発は後手に回り、営業力も乏しい状態となってしまいました。

同じような状態はどの企業にも当てはまるでしょう。

携帯電話会社もこれまで、「NTTドコモ」「KDDI」「ソフトバンク」の3社による寡占市場でしたが、近年では格安携帯会社の台頭や楽天の携帯事業の参入などにより、転換期を迎えています。

大事なのは、こうした競合や競争をマイナスと捉えず、プラスに考えることです。

ビジネスにおいても、同業他社があるから自社も成長でき、製品やサービスを洗練させることができると捉えれば、手強い同業他社の存在もありがたくなります。

他社を蹴落とすのではなく、他社と競い合い、一緒に成長しながら、顧客に対していい製品・サービスが提供できればよりよい環境になっていくでしょう。

●企業の寿命は30年?

30年以上前に「企業の寿命30年説」が話題になりました。これは「日経ビジネス」が1983年に発表してから、ビジネスでは1つの定説になっています。30というまとまりのよい数字もあってか、一気に世間に広まりました。これが23年説や47年説だと、あっという間に記憶から薄れていったことでしょう。

では、実際のところ、この説は本当に正しいのでしょうか。

東京商工リサーチの調査によると、2018年に倒産した企業の平均寿命は23.9年、帝国データバンクの調査では、37.16年となっており、だいたい合っているようです。

しかし、現在存続している会社の寿命が「だいたい30年」かといえば、それはやや疑問です。

当社では、企業は、「環境適応業」である、と定義しています。進化論で有名なダーウィンは、「生物は強いものが生き残るのではない、環境に対応できるものだけが生き残る」と述べていますが、そのまま企業にも当てはめることのできる言葉です。

2020年の30年前は1990年です。当時と比べると、技術も環境変化のスピードも、社員の価値観もまったく異なります。

このことから考えれば「企業の寿命30年説」は、あくまで昭和の企業を対象にした企業調査であるという「ただし書き」のついた説であると見ておいたほうがいいでしょう。

いまでは、企業の寿命は30年という悠長なことは言っていられません。刻一刻と変わるビジネス環境において、常に対応できる会社でありたいものです。

ちなみに、創業100年を超える会社は、日本全国の企業のたった2%しかないといわれています。

他社より目立つには「3割」の差をつくろう

●お客様に伝わりやすい差別化のコツ

商品やサービスを他社と差別化することは、ビジネスでは必須です。小売店であれば、ほかの店とは違う品ぞろえにしなければ、お客様が自分の店に来店する理由がありません。

では、どの程度まで品ぞろえで差別化すればよいのでしょうか。

2倍にすれば確実に差別化できるでしょうが、そこまで在庫を抱えるのはリスクがあります。しかし、2つや3つ品ぞろえを増やしても、他店との違いはさっぱりわかりません。

そんな場合に役立つのが、「1.3倍の法則」です。

これは、人は「1.3倍の差」がないとその差を認識できないという法則です。

顧客は他店と比べて1.3倍の量の品ぞろえがあると、この店舗は「品ぞろえがよい」と認識してくれます。差別化する際には、3割の差をつけることを目安にしましょう。

●価格差も「3割」の差で実感できる

この法則は、価格設定でも有効です。

競合商品よりも安くしたい時には、その価格を3割下げれば、顧客が明らかに「安い」と思える価格になります。競合相手が1000円なら、666円で売るのです。

反対に、高級なブランドイメージを持たせたければ、3割上げれば「高い」と思ってもらえるようになります。競合相手が1000円なら、1333円以上で売るのです。

これはブランディングでも同じで、他店よりもこだわっているポイントがあるなら、そのこだわりが他店の1.3倍以上ないとお客様には伝わりません。

他店と同じ程度のこだわり方では、お客様はそれを「こだわり」とは認めてくれないのです。たとえば、野菜でいえば「国産」は当たり前、「地域」にこだわるのも平凡、「生産者」にまでこだわって、やっと差別化が明確になり、お客様に伝わるということです。

ただし、これらはあくまで価格や品ぞろえなどの話で、飲食店のメニュー、POPの場合は、やや異なります。

メニュー、POPに記載される定番メニュー(たとえば、ファストフード店のフライドポテトなど)の写真は約1.7倍〈1.3×1.3=1.69倍〉の量で見せることで、他店よりもボリュームがあると感じさせることができるといわれています。

3割の差というのは立場によって異なります。試験点数でいえば、50点の人にとって3割高い得点は65点で、15点の差です。一方、70点の人にとって3割高い得点は91点で21点の差です。

どの立場でも、3割の差を縮めるのは、現実には簡単ではないかもしれません。しかし頑張れば、何とか追いつけそうな数字だともいえるでしょう。

「1.3倍の法則」を頭に入れて、効果的に差別化を行いましょう。

商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ
山本崚平(やまもと・りょうへい)
株式会社新経営サービス シニアコンサルタント。1991年、和歌山県生まれ。大阪教育大学教育学部卒業後、新経営サービスに入社。ベンチャー企業から中堅企業を対象に、経営計画の達成に向けたPDCAマネジメント支援や人事制度の構築・運用を通じた組織開発、教育研修の支援を実施。特に若手ビジネスパーソンを対象に「数字のつかみ方・使い方・伝え方」の重要性を指導、教育している。また経営理念・方針の実現と業績向上をモットーとし、顧客企業に深く入り込むスタンスでの支援に定評がある。経験業種・企業規模は多岐にわたる。

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