上場株式の相続税評価額は、原則として課税時期(被相続人の死亡の日)の最終価格(終値)で評価します。しかし課税時期の月を含めた過去3ヵ月間の最終価格の月平均額を選ぶこともでき、月平均額には「権利落ち」が関係してくる「特例」があります。今回はその特例について解説します。
上場株式の最終価格の評価方法
上場株式の相続税評価額は、下記のうちもっとも低い額で評価することができます。
・課税時期(被相続人の死亡の日)の最終価格(終値)
・課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
・課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
・課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
ただし、課税時期に「権利落等」が関係してくる場合には次のような特例があります。
課税時期が権利落等の日から株式の割当て等の基準日までの間にある場合
課税時期が「権利落等の日」から「株式の割当て等の基準日」までの間にあるときは、その権利落等の日の前日以前の最終価格のうち課税時期にもっとも近い日の最終価格で評価します。
課税時期の最終価格が無い場合
1.課税時期の前日以前の最終価格または翌日以後の最終価格のうち、課税時期にもっとも近い日の最終価格を採用します。なお最終価格が2つある場合にはその平均額となります。
2.課税時期が権利落等の日の前日以前で、上記1による最終価格が権利落等の日以後のもののみである場合、もしくは権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のもと2つある場合には、課税時期の前日以前の最終価格のうち課税時期にもっとも近い日の最終価格を採用します。
3.課税時期が株式の割当て等の基準日の翌日以後で、上記1による最終価格がその基準日にかかる権利落等の日の前日以前のもののみである場合、もしくは権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものと2つある場合には、課税時期の翌日以後の最終価格のうち、課税時期にもっとも近い日の最終価格を採用します。
最終価格の月平均額の特例とは
このように課税時期に「権利落等」が関係してくる場合では、最終価格を決める際の特例がありますが、課税時期の属する月以前の3ヵ月間に権利落等がある場合には、下記の計算によって月平均額を求める特例があります。なおこの特例は「配当落」の場合には適用されません。
1.課税時期が株式の割当てなどの基準日以前の場合は、その月の初日から権利落等の日の前日までの毎日の最終価格の平均額(下記2に該当するものを除く)を採用します。
上記例での最終価格の月平均額=権利落の場合では100円となり、配当落の場合では95円。
2.課税時期が株式の割当てなどの基準日以前で、権利落等の日が課税時期と同月の初日以前である場合は、最終価格の平均額は下記の算式によって計算した金額とします。
・課税時期のある月の最終価格の月平均額×(1+株式1株に対する割当株式数もしくは交付株式数)-割当てを受けた株式1株につき払い込むべき金額×株式1株に対する割当株式数
(株式の割当条件)
・株式の割当数は株式1株に対し0.5株を割当てる
・株式1株につき払い込むべき金額は40円
上記例では、最終価格の月平均額=権利落の場合では、80円×(1+0.5)-40円×0.5=100円となり、配当落の場合では80円。
3.課税時期が株式の割当てなどの基準日の翌日以後である場合は、権利落等の日からその月の末日までの毎日の最終価格の平均額を採用します。
上記例の場合の最終価格の月平均額=権利落の場合では95円となり、配当落の場合では100円。
4.課税時期が株式の割当てなどの基準日の翌日以降である場合では、権利落等の日がある月の前月以前の最終価格の各月平均額は、下記の算式によって計算した金額とします。
(その月の最終価格の月平均額+割当てを受けた株式1株につき払い込むべき金額×株式1株に対する割当株式数)÷(1+株式1株に対する割当株式数もしくは交付株式数)
(株式の割当条件)
・株式の割当数は株式1株に対し0.5株を割当てる
・株式1株につき払い込むべき金額は50円
上記例の場合の最終価格の月平均額=権利落の場合では、(125円+50円×0.5)÷(1+0.5)=100円となり、配当落の場合では125円。
相続発生前3ヵ月間の権利落ちが影響される
このように課税時期の月以前の3ヵ月の間に権利落等がある場合には、最終価格の月平均額は特例によって計算されます。詳細な計算は税理士などの専門家に依頼したほうがいいのですが、上場株式の評価方法にはこのような特例が設けられていることを理解しておくといいでしょう。(提供:相続MEMO)
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