(本記事は、山口謠司氏の著書『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

漠然とした考えで書き始めると長くなる

言葉を減らせば文章は分かりやすくなる
(画像=『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』より※クリックするとAmazonに飛びます)

「文章が書けない」「気がついたら文章が長くなっていた」

文章作成で悩んでいる人は多いものです。社会人になると、文章を使って相手に伝える作業から逃れることはできません。

企画書、報告書、プレゼン資料、メール、論文など、文章であなたの意思や状況を相手に伝えなければならない機会が多くあります。

文章がうまく書けない理由は、書くべきことが自分の頭の中でしっかり決まっていないからだと私は考えています。

文章力がないという問題以前の段階で、つまずいている人が多いのです。

「伝えるべきこと」「伝えたいこと」が自分の頭の中で明確にイメージされ、整理されている人は、思考をうまく文章化することができます。

逆に、「なんとなくこういうことを伝えたいんだけどな」という程度の考えで書き始めてしまう人は、うまく文章を書くことができません。何を書けばいいのか明確になっていないのに、文章化できるはずがないのです。

●頭の中から「これが言いたい」を取り出す

私は職業柄、論文を多く読みます。学者が書いた論文はもちろん、学生の書くレポートや卒業論文も読みます。

論文を読むと、執筆者の思考が整理されて書かれたものかどうかが、すぐにわかります。整理されていない人の文章は、ダラダラと長く、何を伝えたいのかがわからないからです。

「わかりやすくて納得できる」という論文は、短くシンプルな文章が集まっています。この差が生まれるのは、文章力の差というよりも、思考を整理して書いたかどうかの差ではないかと思います。

伝えるべきことが明確ではない状態で文章を書いてしまうと、何を言っているのかわからない文章が出来上がるのです。

わかりやすいシンプルな文章を書くためには、思考を整理することが鍵となります。漠然とした思考をしていては、頭の中の考えはまとまりません。

あらゆる文章を作成するとき、的確に思考を言語化することができません。

そこで、漠然と頭に浮かんでいる考えの中から、「自分はこれが言いたい」と思うことを取り出すことが必要です。

文章を書く前に、頭の中の考えを整理する。

これを怠らない人が、短く伝わる文章を書くことができるのです。

2つの軸を使い、思考を明確にする

私が企画書や論文を書くときにやっている、自分の頭の中を整理する方法をお伝えします。

自分の言いたいことを、シンプルにわかりやすく文章に落とし込む準備として最適です。

学生が論文を書くときにも紹介している技なので、難しいことではありません。

思考の整理に最適なのが、2つの軸を立てて考えを明確にすることです。

軸の内容は人それぞれです。2つの軸が交差する所にあるのが、あなたが伝えたいことになります。

たとえば、商品開発の仕事をしているのなら、「興味がある商品」の軸と、「お客さんのメリット」の軸が交差する所にあなたが開発するべき商品があります。そこで浮かび上がった商品の内容を、プレゼン資料の文章に落とし込めばいいのです。

私の場合は、論文のテーマを絞るときにこの軸を使います。

「興味のある文献」の軸と、「興味のある時代」の軸が交差する所に、研究するべきテーマがあります。そのテーマを論文に書くのです。

●日常でできる思考トレーニング

2つの軸を使いながら、漠然と考えていることを明確にする。自分の思考の形を浮き彫りにするのです。

初めのうちは、一つひとつの軸をイメージしづらいかもしれません。しかし、何度もこの整理法を繰り返していくと、すぐに決めることができるようになります。

トレーニングを繰り返せば誰でも、思考を整理できます。日々、この訓練を行なってください。

仕事に関係ないことでもいいのです。

たとえば、洋服が欲しいときには、「シャツ」の軸と「ブランド」の軸を設定すれば、欲しいシャツが明確になります。

日常の中で、何度も繰り返し行なうことで、思考を整理する力は高まるのです。

言葉を減らせば文章は分かりやすくなる
山口謠司(やまぐち・ようじ)
大東文化大学文学部准教授。博士。1963年長崎県佐世保市生まれ。大東文化大学大学院、フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。専門は、書誌学、音韻学、文献学。1989年よりイギリス、ケンブリッジ大学東洋学部を本部に置いて行なった『欧州所在日本古典籍総目録』編纂の調査のために渡英。以後、10年に及んで、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランスの各国図書館に所蔵される日本の古典籍の調査を行なう。またその間、フランス国立社会科学高等研究院大学院博士課程に在学し、中国唐代漢字音韻の研究を行ない、敦煌出土の文献をパリ国立国会図書館で調査する。

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