(本記事は、山口謠司氏の著書『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

語彙を増やせば大幅に削れる

語彙力
(画像=Castleski/Shutterstock.com)

知っている言葉の数が豊富で使いこなせる、語彙力が高い人は文章を短くすることができます。

たとえば「矜持」とは、自信や誇りを持って堂々と振る舞うことを意味します。

矜持という言葉を知らなければ、意味をすべて文章化しなければなりません。

×「プロとしての、自信や振る舞いを感じます。」

しかし、言葉を知っていれば次のように表現できます。

○「プロとしての矜持を感じます。」

言葉を知っていることで、文章作成力に大きな差が出るのです。

この章では、文章を短くする語彙の使い方と、そのトレーニング法をご紹介します。

●短くする以外にもメリットが多い

語彙力を身につけることは、短い文章を書くためにも役立ちますが、他にも多くのメリットを享受できます。

「頭の中にある考えを的確に表現し、文章化することができる」

「企画書などのビジネス文書で、社会人としてふさわしい表現ができる」

「魅力的な言葉で人を動かすこともできる」

「稚拙な表現を避け、思慮深い文章を書くことができる」

私たちは、語彙力のレベルで社会人としての評価を決められてしまいます。使う言葉によって、頭の良さを判断されてしまう現実があるのです。知性と教養は、話の端々に表れます。

能力があるのに、語彙力のせいで評価が下がるのはもったいない。

語彙力は、学べば誰でもつけていくことができます。ぜひ、ここからご紹介することを参考に、語彙力を高めてください。

もたもたする言い回しを熟語で短縮する

なかなか文章を短くできないと悩んだときには、熟語を使うことで状況を打開してみてください。

文章を書いていると、「もうこれ以上は削れない」ということがあります。そのときに、最後の手段として、言い換えるということを試みてください。

言い換えるのにピッタリの言葉が見つかったときには、文章を短くすることができます。

熟語を見つければ、その意味をまるごと消すことができるので効果的です。

先にも似たようなお話をしましたが、次の文章を見てください。

×「うっかりど忘れしていました。申し訳ありません。」

本当はよくわかっていることを、うっかりど忘れしてしまうことを、「失念」と言います。

○「失念していました。申し訳ありません。」

こう言い換えれば、文章を短くすることができます。

●最後の手段で打開する

他にも、あります。

「演技の出来はとても優れていました。」

「演技の出来は圧巻でした。」

このように、使いこなせる熟語が増えれば、文章を短くすることが可能になります。

もたもたする言い回しになっている部分を言い換える言葉はないか、この意識を持ちましょう。

ピッタリの言葉が見つかれば、文章を簡潔に表せます。

語彙力がある人ほど、文章をスリムにすることができるのです。

言葉を減らせば文章は分かりやすくなる
山口謠司(やまぐち・ようじ)
大東文化大学文学部准教授。博士。1963年長崎県佐世保市生まれ。大東文化大学大学院、フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。専門は、書誌学、音韻学、文献学。1989年よりイギリス、ケンブリッジ大学東洋学部を本部に置いて行なった『欧州所在日本古典籍総目録』編纂の調査のために渡英。以後、10年に及んで、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランスの各国図書館に所蔵される日本の古典籍の調査を行なう。またその間、フランス国立社会科学高等研究院大学院博士課程に在学し、中国唐代漢字音韻の研究を行ない、敦煌出土の文献をパリ国立国会図書館で調査する。

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