(本記事は、山口謠司氏の著書『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

話す口語から、書く文語へ

ビジネスシーン
(画像=NOBUHIRO ASADA/Shutterstock.com)

文章の表現には、口語と文語の2種類があります。

口語とは、日常生活の会話で用いられる言葉遣いです。文語とは、文章を書くときに使われる言葉です。

口語は、会話の中で使用されるので柔らかい表現になり、文語は、思考を伝えるための文章なので硬い雰囲気になります。

コミュニケーションでは少しくだけた表現を使うので、私たちは文章でも口語を使ってしまいがちです。

また、最近ではSNSを誰もが使っており、身近になっています。SNSでは硬い表現をする必要がないので、口語を文章にすることが普通になってきているのです。

意味が通じるなら、口語と文語を明確に使い分ける必要はなくなってきているのかもしれません。

ただ、口語を文語にすることで、文章を短くすることができます。

ビジネスシーンでは、スマートな表現が好まれる傾向にあるので、知っておいて損はないテクニックです。

●コツは「社長に話しかけるように」

「ちょっと」→「少し」

「かなり多い人数」→「膨大な人数」

このように、会話で使う言葉を文語にすることで、文章が短くなることがあります。

同僚に使っている言葉を、社長に対して使うときにはどうするかな、というような意識を持つといいでしょう。

「今後、人間はAIに仕事を奪われるということが言われている。」

「今後、人間はAIに仕事を奪われると語られている。」

「ということが言われる」などは使いがちですが、文語に修正可能です。

自分が書いた文章を見直してみると、案外言い換えができる部分を見つけられると思います。

「〇〇して、〇〇して」「〇〇に行って、〇〇に寄って」などの、似た表現の繰り返しは、会話のときには違和感がありません。しかし、文章にすると、ダラダラと文章が続きますので、「〇〇した。〇〇した。」「〇〇に行った。〇〇に寄った。」と句点で切ることができます。

自信がなくても婉曲表現はやめる

日本人は、断定する表現を避ける傾向にあります。

100%正しいかどうかわからないことは、「こうだ!」と言い切ることをあまりしません。

文章を短くしたい場合は、遠回しな表現を避けることで、文章をスリムにすることができます。

海外の企業や人からよく言われるのが、日本人は真意がくみ取りにくいということです。YESなのかNOなのか、判断できないというのです。

逆に日本人は、NOのつもりで話したのに、話がYESで勝手に進んでいたと困惑することがあります。

文章では、婉曲な表現は削除してしまっても問題ありません。自信がないからなんとなく付け加えてしまった、ということが多いのです。

●すぐに見つけられる

婉曲な表現はたくさんあります。

「〇〇かもしれない」

「〇〇と言われている」

「〇〇だろう」「〇〇のようだ」

「〇〇らしい」「〇〇と考えられる」

……などです。探せばもっとあります。

これらは、言い切ってしまえばカットできます。

「スマホに読書の時間を奪われている、と世論調査も結論を導いたようですし、本を読まない人たちの中には時間がなくてという声も少なくありません。」

「スマホに読書の時間を奪われている、と世論調査も結論を導きました。本を読まない人たちの中には時間がないという声もあります。」

このように婉曲表現を削除したり、句点で文章を短くすることができます。

言い切る自信がないときは、つい使ってしまうのがこの表現です。気持ちは私もわかります。

文章を短くしなければならない場合は、思い切って削除してしまいましょう。

言葉を減らせば文章は分かりやすくなる
山口謠司(やまぐち・ようじ)
大東文化大学文学部准教授。博士。1963年長崎県佐世保市生まれ。大東文化大学大学院、フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。専門は、書誌学、音韻学、文献学。1989年よりイギリス、ケンブリッジ大学東洋学部を本部に置いて行なった『欧州所在日本古典籍総目録』編纂の調査のために渡英。以後、10年に及んで、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランスの各国図書館に所蔵される日本の古典籍の調査を行なう。またその間、フランス国立社会科学高等研究院大学院博士課程に在学し、中国唐代漢字音韻の研究を行ない、敦煌出土の文献をパリ国立国会図書館で調査する。

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