昨年10月の消費税増税で落ち込んだところに、コロナショックによる追撃を受けた日本経済。世界各国が大規模な金融・財政政策を打ち出してはいるものの、根本の問題自体が収束するメドは立っていない。現状では実体経済へのダメージの大きさを予測することは困難だが、どのような影響が考えられるのか。また、マーケットの先行きは。第一生命経済研究所の首席エコノミスト、永濱利廣氏に話を聞いた。

永濱利廣(ながはま・としひろ)
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト
1995年、早稲田大学理工学部卒業。2005年、東京大学大学院経済学研究科修士課 程修了。1995年、第一生命保険入社。日 本経済研究センターへの出向、第一生命経済研究所経済調査部を経て、2008年より現職。マクロ経済の統計・分析を専門とし、テレビや新聞、雑誌などメディアへの出演多数。著書に『経済指標はこう読む』(平凡 社新書)、『MMTとケインズ経済学』(ビジネス教育出版社)ほか多数。

※「ZUUonline magazine」6月号のインタビュー記事を転載。インタビューは3月中旬に行ったもの。

実体経済悪化の影響が金融システムにまで波及する可能性も

コロナ後の経済、マーケットを大胆分析!#3
(撮影=末松正義、作成=ZUUONLINE編集部)

現在、マスコミは今回の新型コロナウイルスの感染拡大による相場の急落を「コロナショック」と表現している。もっとも、将来の社会科の教科書には「コロナ恐慌」と記載されているかもしれない。肉眼では見えないウイルスがもたらした災禍は、単なるショックや景気後退にとどまらず、さらに深刻なダメージをもたらす恐れがある。エコノミストの永濱利廣さんは、今回のコロナショックを次のように捉えている。

「まさに今は、過去に経験したことがないような不況の入り口に立っていると考えるべきでしょう。リーマンショックでは金融システムが機能不全に陥ったことでカネの動きが止まったのに対し、今回はグローバルにヒトとモノが動かなくなっています。金融政策や財政政策でどれだけカネを投入しても、感染が収束しない限り経済活動は正常な状態に戻りにくい。より厳しい情勢に直面しています」(永濱さん)

実は、新型コロナウイルスのパンデミックが訪れる以前から、世界経済には減速の兆候が見られていた。IMF(国際通貨基金)は今年1月の時点で、2019年の世界経済の成長率(推計値)を2.9%、2020年の見通しを3.3%に下方修正。感染の拡大を受け、3月下旬には「2019年の2.9%を大きく下回る」、4月14日にはマイナス3.0%と相次いで引き下げている。

「実体経済の悪化の程度によっては、金融システムまでおかしくなってしまう恐れがあります。すでに金融政策では各国ともかなりの手を打っていて余力が限られているだけに、金融不安まで発生すればかなり厄介でしょう」(永濱さん)

結果的に、日本は非常に拙いタイミン グで消費税率の引き上げに踏み切ってしまったようだ。昨年10~12 月期の実質GDP成長率は、年率換算で前期比マイナス7.1%と大幅に悪化。10 月の家計消費は前月比でマイナス11.5%まで落ち込んだ。安倍首相は消費税の増税直前に「リーマンショック級の出来事が起こらない限り予定通りに実施する」と明言していたのだが、皮肉にもその数カ月後、コロナ騒動が待ち構えていたのである。

永濱さんは「現在の日本は“三重苦”に陥っている」と指摘する。