リーマンショック後に規模が拡大した家賃保証業界ですが、今や家賃保証会社は賃貸管理会社や大家にとってなくてはならない存在と言えます。実際、コロナ禍で入居者が家賃滞納になったものの、家賃保証会社と契約していたおかげで助かっている方は多いはずです。

業界には複数の家賃保証会社があり、家賃保証の形態も複数あります。

家賃保証会社の選定基準や家賃保証の種類について、しっかり把握しておきましょう。

目次

  1. 1.家賃保証の種類について(代位弁済型・代理収納型)
  2. 2.家賃保証会社の選び方
    1. 2-1.家賃の保証(立替)期間について
    2. 2-2.ほか部分の保証について
    3. 2-3.経営状況について
    4. 2-4.信託スキームについて
  3. 3.家賃保証会社が倒産した場合の対応と避けるべき形態
    1. 3-1.家賃保証会社が倒産した場合の対応
    2. 3-2.避けたほうがいい家賃保証の形態
  4. 4.なぜ、家賃保証会社は倒産するのか
    1. 4-1.滞納総数(立て替え総額)の増加
    2. 4-2.契約者数の伸び悩み
    3. 4-3.ほかの事業の失敗
  5. 5.オーナーが家賃保証会社を変更するときのポイント
    1. 5-1.家賃保証会社の変更手続き
    2. 5-2.家賃保証会社の変更で発生するコスト
    3. 5-3.家賃保証会社の変更の注意点
  6. 6. 比較検討して家賃保証会社を選ぼう

1.家賃保証の種類について(代位弁済型・代理収納型)

賃貸住宅,転貸業者,サブリース
(画像=thodonal88/Shutterstock.com)

家賃保証の種類は大きく分けて、代位弁済型と代理収納型の2つがあります。

代位弁済型と呼ばれる家賃保証では、入居者からの家賃は管理会社もしくは大家の口座に送金されます。期日までに家賃送金が確認できない場合は保証会社に連絡して、保証会社に代位弁済をしてもらう申請をすることになります。

したがって、滞納が発生しなければ家賃保証会社が関与することはありません。ただし毎月の家賃入金およびその後のフォローは、自分で行わなければなりません。

一方、代理収納型と呼ばれる家賃保証では、家賃保証会社が直接入居者から家賃を回収します。そして、毎月決まった日に家賃保証会社から管理会社もしくは大家へ直接振り込まれます。入居者から家賃保証会社への家賃送金が滞っていたとしても、振込は行われます。

家賃保証会社からの入金を毎月決まった日に確認するだけなので、代位弁済型と比較すると手間は少ないと言えます。最近は、この代理収納型を採用するケースが多いようです。

また多くの場合、代理収納型のほうが代位弁済型よりも保証が手厚くなっていいます。家賃保証会社にとっては、代理収納型のほうが自分たちで入金管理をできるため、家賃が滞納になったとしても早めに対応ができるからです。

「代理収納型のほうが家賃入金を確認する手間が省け、管理会社やオーナーにとってもメリットが大きいので、代位弁済型を選ぶ意味はないのでは?」と考えるかもしれませんが、非常時には代理収納型のほうがリスクは大きくなることがあるので注意が必要です。

2.家賃保証会社の選び方

家賃保証会社を選択するときには、家賃の保証(立替)期間だけでなく、「ほかの部分の保証」や「信託スキーム」などを含めた総合力で選ぶのが賢い選択です 。チェック項目は以下になります。

2-1.家賃の保証(立替)期間について

家賃の保証(立替)期間は、家賃保証会社を選ぶときにもっとも重要なファクターといえるでしょう。

保証期間は「家賃の月数」で示されます。一般的には「24ヶ月」または「48ヶ月」という設定の家賃保証会社が多いです。なかには「上限なし」という保証会社もあります。

一見すると、保証期間が長いほど安心のように感じられますが、ある程度の滞納期間が過ぎると明け渡しの法的手続きに移行するケースが大半なため、「24ヶ月以上の保証」があればリスクは低いと考えられます。

2-2.ほか部分の保証について

家賃の保証期間に加えて、ほかの部分の保証の重要です。チェック項目は、下記の3つです。

・原状回復費
入居者が退去した際、部屋をもとの状態に戻すための費用です。「原状回復費を全額カバーしてくれる」「原状回復はオプションになっている」など家賃保証会社によってサービス内容が異なります。

・法的手続きの費用
家賃滞納者に対して、明け渡し訴訟を行うための費用です。大半の家賃保証会社は、法的手続きの費用をカバーしてくれます。

・残置物撤去の費用
滞納者の退去後、残置物が残されている場合の撤去費用です。大半の家賃保証会社がこの費用をカバーしてくれますが、なかには対応していないところもあります。

2-3.経営状況について

家賃保証会社を選ぶときには、さらにその会社の経営状況を確認しておくと安心です。くわしくは後述しますが、家賃保証会社が万が一、倒産すればオーナーに金銭的な被害が及ぶ可能性があるからです。

家賃保証会社の経営状況をチェックする方法は、上場企業であれば、直近の短信や四季報などを読めばわかります。末上場企業については、契約数の推移をヒアリングしたり口コミ情報をチェックしたりなど、間接的な方法で確認するしかありません。

2-4.信託スキームについて

さらにリスクヘッジしたいなら「信託を活用した家賃保証サービスか」を確認するのがよいでしょう。「信託スキームなし」のサービスで家賃保証会社が倒産した場合、入居者が保証会社に家賃を納めていても、そのお金がオーナーに振り込まれないリスクがあります。

一方、入居者が納めた家賃を信託口座で分別管理している「信託スキームあり」のサービスなら、家賃保証会社が倒産しても金融機関(信託銀行)を経由してオーナーに振り込まれます。

3.家賃保証会社が倒産した場合の対応と避けるべき形態

家賃保証について、さらにくわしく深掘りしていきます。

3-1.家賃保証会社が倒産した場合の対応

「非常時」とは、たとえば家賃保証会社が倒産する時です。

今回のコロナ禍のように家賃滞納が増える状況では、当然ながら家賃保証会社の負担が大きくなります。実際、リーマンショック時にはリプラスという家賃保証会社が倒産しました。

家賃保証会社が倒産すると、代理収納型で毎月保証会社から振り込まれるはずの家賃が途絶えることになります。入居者が家賃保証会社へすでに家賃を支払っていた場合は、入居者から回収することもできません。

家賃保証会社が倒産した場合は、入居者と直接連絡を取り、家賃の振込先を家賃保証会社から管理会社もしくは大家へ変更してもらう必要があります。

一方代位弁済型の場合は、もともと入居者から直接家賃が送金されることになっているため、家賃保証会社が倒産しても、入居者が滞納しない限り家賃は振り込まれます。

ただし家賃保証会社が倒産した場合は、代理収納型であっても代位弁済型であっても、家賃保証がなくなります。したがって入居者が家賃滞納をした場合は、すべてのリスクを負うことになります。

その場合は大家の負担で別の保証会社と契約するか、入居者に連帯保証人を立ててもらうことになりますが、入居者には非がないため交渉が難航する可能性が高いです。

3-2.避けたほうがいい家賃保証の形態

管理会社に「この家賃保証形態はやめてください」と伝えておくべき保証形態についてお伝えしたいと思います。

家賃保証会社の主な取引先は管理会社もしくは大家ですが、取引の頻度が多い管理会社に対しては一定の保証限度額を設けて、その管理会社が受領している家賃の総額に対して家賃保証を行うという形態もあります。

この家賃保証形態を利用した場合、通常の家賃保証を契約した場合と比べて、多めの紹介手数料が家賃保証会社から管理会社に支払われます。

そのため、管理会社はこの形態で新規入居者の家賃保証を設定することがありますが、この形態だと他の管理会社へ管理を移管する時に引き継ぐことができず、家賃保証がなくなってしまうのです。

オーナーにとっては、上記の家賃保証形態は通常のものと比べてデメリットが大きいので、あらかじめ管理会社にはこの保証形態にしないように伝えておくことをおすすめします。

4.なぜ、家賃保証会社は倒産するのか

「なぜ家賃保証会社は倒産するのか」 そもそもの原因を知っておきたいというオーナーもいるでしょう。主な原因は次の3つが考えられます。

  • 滞納総数(立て替え総額)の増加
  • 契約者数の伸び悩み
  • ほかの事業の失敗

4-1.滞納総数(立て替え総額)の増加

家賃保証会社が立て替えられる滞納家賃のキャパシティを超えれば、当然ながら、その会社の倒産リスクは高まります。想定以上の滞納が発生する理由は「審査基準が甘い」「商業分野に特化している」などが考えられます。

1つ目の理由の「審査基準が甘い」は、入居時の審査基準がゆるすぎて滞納者が増加したというものです。ただ一般の家賃保証会社は、収益を担保できるよう審査基準とリスクをコントロールしているのが普通です。

2つ目の理由の「商業分野に特化している」は、オフィス・テナント・民泊など商業分野に特化していて倒産リスクが高まったというものです。住居用の賃貸物件は景気に左右されにくい性格がありますが、商業用の賃貸物件は景気や世界情勢の影響を受けるため、賃料滞納が短期で急増する可能性もあります。

4-2.契約者数の伸び悩み

家賃保証の契約数が想定よりも伸び悩み、倒産する可能性もあります。契約数が伸びなかった原因としては、「営業力が足りなかった」「業界の競争が激化した」「不祥事で信頼性を失った」などが考えられます。

4-3.ほかの事業の失敗

本業の家賃保証の事業は堅調でも、そのほかの事業で失敗して倒産する可能性もあります。実際にリーマンショック時に倒産した家賃保証会社のなかには、「不動産ファンド事業に失敗したことが破綻の引き金になった」と噂される会社もあります。

5.オーナーが家賃保証会社を変更するときのポイント

オーナーが希望すれば、家賃保証会社の変更も可能です。一例としては、下記のような変更理由が考えられます。

  • 保証会社のサービス内容や対応が不満足
  • 保証会社の財務内容に不安がある
  • 保証会社が倒産した(あるいは倒産寸前)など

5-1.家賃保証会社の変更手続き

家賃保証会社を変更するには、まず現在契約している保証会社との契約を解約する必要があります。「解約時にどんな制約があるか」については、改めて契約書の内容を確認しましょう。解約後、新規の保証会社の審査を受けて通れば変更となります。

5-2.家賃保証会社の変更で発生するコスト

変更時には、新規で契約する家賃保証会社が設定している初回保証料や月額保証料が必要になります。オーナー事由で家賃保証会社を変更する場合、これらのコストはオーナー負担となります。

5-3.家賃保証会社の変更の注意点

これまで別の家賃保証会社と契約していても、新規の保証会社の審査に必ず通るわけではありません。また、会社によっては連帯保証人が必要になるケースもあるようです。

6. 比較検討して家賃保証会社を選ぼう

本稿では、家賃保証会社の種類と選び方について解説してきました。家賃保証会社を選ぶときに「どれくらいの保証期間があるか?」という部分に意識がいきがちですが、冒頭でお話したように「ほかの部分の保証」「経営状況」「信託スキーム」なども重要な要素です。家賃滞納やトラブルが実際に発生したとき、本当に安心できるか。これをイメージしながら比較検討するのがよいでしょう。(提供:YANUSY

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