結果の概要:大幅悪化だが、市場予想対比では上振れ

5月13日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。

【2020年1-3月期実質GDP、季節調整値)】
・前期比は▲2.0%、市場予想(1)(▲2.6%)より上振れ、前期(+0.0%)から低下した(図表1)
・前年同月比は▲1.6%、市場予想(▲2.2%)より上振れ、前期(+1.1%)から低下した

【3月実質GDP】
・前月比は▲5.8%、前月(+0.2%)より悪化した

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(1)bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

結果の詳細:幅広い業種で悪化

1-3月期の成長率は、当初の予想通り、新型コロナウィルス(COVID-19)およびロックダウン(都市封鎖)の影響によって大きく落ち込んだが、1次推計ではリーマンショック期に記録した前期比▲2.1%は超えなかった。ユーロ圏(前期比▲3.8%)と比較しても、成長率の低下は限定的だった。

ONSは、1-3月期における英国のロックダウンの厳しさが、他国と比較して緩かった点に言及し、マイナス幅と整合的であると説明している(図表2)(2)。

成長率の内訳を需要項目別に見ると、個人消費が前期比▲1.7%(前期▲0.1%)、政府支出が▲2.6%(前期+1.5)、投資が▲1.0%(前期▲1.2%)、輸出が▲10.8%(前期+5.0)、輸入が▲5.3%(前期+0.4%)と主要項目がすべてマイナスだった。なお、在庫等は前期比寄与度で+1.32%ポイント(前期は▲1.92%ポイント)、純輸出は同▲1.91%(前期は+1.48%ポイント)だった。

次に供給項目別の動向を確認すると(図表3)、農林水産、生産、建設、サービスのすべての大分類セクターが成長にマイナス寄与したことが分かる。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

細かい産業分類で見ても(図表4)、1-3月期はほとんどの業種でマイナスとなった。中でも、住居・飲食(前期比▲9.5%)、電気・ガス(前期比▲5.8%)、鉱業(前期比▲5.2%)、輸送(前期比▲4.9%)といった業種の下落率は高かった。住居・飲食は、ホテル、レストラン、パブ、バーなど、外出制限が課される前から影響を受けやすかった業種であり、マイナス幅も大きくなったと言える。なお、寄与度で見ると、住居・飲食(▲0.27%ポイント)よりも卸・小売(▲0.32%ポイント)のマイナス寄与が大きく、最大であった。巣ごもり消費を反映して食料品店や非店舗型小売業は加速したが、自動車販売や燃料販売が落ち込んだ点が悪化に寄与した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、ONSでは1-3月期のGDPと同時に、3月単月でのGDPも公表している。全体では前月比▲5.8%であり、産業別には、プラスとなったのは政府サービスのみで、他はすべてマイナスという結果となった(前掲図表4)。特にサービスセクターの減速は大きく、14業種中8業種は、1997年の統計開始以来の最悪の数値を記録した。四半期での下落率と比較して特徴的な点は、3月20日からの休校の影響を受けて、教育の下落率が高めに出ている点などが挙げられる。

リーマンショック時には、ピーク(2008年2月)から底(2009年3月)まで13か月かけて▲6.9%の減少となったが、今回は単月で6%近く悪化しており、スピードが速い。ただし、ロックダウンの悪影響は、3月でも後半の1週間に集中していることに鑑みれば、4月はさらに悪化する公算が高いと言える。

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(2)ONSはロックダウンの厳格さを表す指標として、オックスフォードCOVID-19政策反応追跡(OxCGRT:The Oxford COVID-19 Government Response Tracker)による厳格さ指数(Stringency Index)を引用している。0-100の指数で100が最も厳しい。英国の場合は、3月23日に外出禁止要請が出されて以降、急激に厳格さを増した(3月22日:37.83→23日:72.48)。


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高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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