今月のドル円は概ね横ばい圏で推移。新型コロナウイルス感染鈍化に伴う欧米での経済再開の動きを受け、リスクオンの円安が進む場面が散見されるほか、直近では日銀の新しい資金供給策導入観測が円売り材料になっている。ただし、一方で感染第2波への懸念やコロナ拡大の責任を巡る米中対立を受けたリスクオフの円高が入る場面もあり、方向感を欠いている。そもそも円もドルも共に安全通貨と見なされているうえ、金融政策も日米共に大きく緩和に傾いていることから、ドル円では大きな方向性が出にくくなっている。足元は107円台後半で推移している。

マーケット・カルテ
(画像=PIXTA)

今後も内外で経済活動の再開が続き、景気が回復に向かうと見込まれることはリスクオンの円売り材料となる。ただし、ワクチンの実用化には時間がかかるため、感染第2波への市場の警戒感が続くほか、米中対立が激化する可能性も高く、リスクオフの円買い圧力も想定される。3か月後の水準は現状並みと予想している。なお、仮に欧米で新型コロナの感染がぶり返せば、資金繰り懸念からドルを求める動きが再発し、ややドル高に振れると想定している。

ユーロ円は、今月に入り、独連邦憲法裁判所によるECB緩和策への一部違憲判断を受けて一旦ユーロ安に振れたが、リスクオンの円売りや独仏政府による復興基金案発表を受けて持ち直し、足元は118円近辺にある。今後は、ドル円同様、リスクオンの円売りとリスクオフの円買いがせめぎ合うが、復興を巡るEU内意思決定の足並みの乱れや、南欧の債務懸念によってユーロ安圧力が強まる場面も予想される。従って、3カ月後の水準は現状比でやや円高ユーロ安と見ている。

長期金利は、景気対策に伴う国債増発方針が金利上昇圧力になる一方で、日銀の国債買い入れ増額が低下圧力となる形で0.0%付近での推移が続いており、足元も0.0%付近にある。今後も追加経済対策による国債増発が予想されるが、政府との協調姿勢を鮮明にしている日銀は金利の上昇を許容しないだろう。3か月後の水準は現状比で横ばい圏とみている。

(執筆時点:2020/5/20)

マーケット・カルテ6月号
(画像=ニッセイ基礎研究所)

上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
コロナ拡大ペースの変化でドル円は不安定化へ~マーケット・カルテ5月号
もし日本で感染爆発が起きたら、円相場はどう動く?
プラチナはとうとう金の半値以下に~コロナショックがダメ押し
OPECプラス減産決定でも原油価格は下げ止まらず~その原因と今後の注目ポイント
日銀短観(3月調査)~企業の景況感は大幅に悪化したが、新型コロナ情勢悪化の織り込みは不十分