「コロナ禍で賃貸物件の相続を抱えていて、今後どうなるか不安で仕方がない」という人もいるのではないでしょうか。感染を懸念して自粛生活をしていると、相続がまったく進まないため相続税の申告が期限内に間に合わないかもしれません。そこで今回は、相続税の申告期限10ヵ月を過ぎてもペナルティにならない相続税の申告対策を解説します。
コロナで賃貸物件の相続手続きができない
コロナ禍で困るのは現役不動産オーナーだけでなく、投資物件を相続する相続人にとっても深刻です。感染予防で自粛していると、「遺言書の捜索」「遺産分割協議の開始」「遺品の整理」などができなくなります。相続手続きが進まないと相続税の申告も期限内に行えず、無申告加算税といったペナルティが科される可能性があるのです。
10ヵ月以内に申告・納税できないなら「個別延長」の手続きを
「自分もペナルティを科されるのでは……」と不安を抱えている人もいるかもしれませんが、対策をとれば10ヵ月経過後に申告してもペナルティは科されません。国税庁はコロナ対策の一つとして「個別の期限延長手続き」を公表しました。この手続きを行えば、相続が開始したことを知った日から10ヵ月過ぎた後に申告しても期限内申告として扱ってもらえるため、余計な税金を払わずに済むのです。
個別延長の手続きとは
個別延長の手続きとは、相続人が申告書を提出する際、個別に税務署に申請すれば申告・納税の期限を先延ばしできる手続きをいいます。以前からこの規定はあり、震災や台風などの災害時に注目されました。今回のコロナ禍においては、以下のような事情を抱えている相続人が延長手続きを行うことができます。
- 体調不良で外出できない
- 緊急事態宣言の発出に伴い、自粛を要請されている自治体に住んでいる
- 感染拡大を懸念して外出を控えている
上記以外の理由でも、コロナ禍の影響で期限内申告が難しいのであれば期限を延長することが可能です。気になる人は、管轄の税務署に「私は現在こういう状況なのだけれど個別延長はできるのか」と聞いてみるとよいでしょう。
対象となる相続
個別延長の手続きは緊急事態宣言が出された2020年4月8日に国税庁のHPで公表されました。逆算して考えると、2019年6月8日以降に生じた相続は延長可能だと見てよいでしょう。ただもう少し前に生じた相続も延長できるかもしれません。なぜなら7日以前から自粛の呼びかけがなされていたからです。さらに所得税や贈与税の申告期限は2月時点で1ヵ月間延長されました。
もしかしたら2019年4月・5月に発生した相続も期限延長が可能かもしれません。こちらも税務署に確認したほうがよいでしょう。
対象者
相続もしくは遺言で被相続人の財産を取得し、相続税の申告や納付が期限内に困難な人が対象です。
「延滞税・加算税0円」「無担保」
個別の期限延長手続きを行うと10ヵ月経過した以降の申告・納税であっても延滞税や加算税、利子税といった余計なお金はかかりません。また、担保も不要です。
手続きは一言書くだけ
手続きは非常にシンプルです。10ヵ月経過以降に申告する際、相続税の申告書の第1表の右上に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と書けばよいだけです。なおこの手続きは個別に行います。つまり相続人全員が必ず同時にしなくてはいけないものではなく、期限内に間に合わない相続人だけが手続きすることになります。
ただ10ヵ月以内に間に合わない相続人だけが一言書くだけでは税務署側が混乱するため、10ヵ月以内に申告書を出せる相続人も自分の申告書の第1表に以下の一言を書く必要があります。
「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請 (財産取得者:延長申請する相続人の氏名)」
注意点
相続税の個別延長の手続きは非常に簡単ですが、「申告書を提出した日が納税の期限」という注意点もあります。本来の相続税の申告・納税は相続開始して10ヵ月以内が期限です。そのため申告だけ8ヵ月目に行い納税は10ヵ月目に済ませるということができます。しかし、延長手続きを取ると「申告日が納税の期限」になります。
そのため延長の旨を書いた申告書を出すその日までに、納税しなくてはならないのです。遅くなれば、その分延滞税がかかります。心配なら納税を先に済ませ、後から期限の延長申請の旨を書いた申告書を提出しましょう。また納税がどうしても遅れそうなら、「納税の猶予」を税務署に相談してみましょう。
※こちらの記事は2020年5月1日時点での情報を元に執筆しております。(提供:YANUSY)
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