大きな損失が不安な若手の資産家の場合
新型コロナが市場を揺さぶっている。年初まで2万4000円近辺で推移していた日経平均株価は、3月中旬に一時1万6552円まで急落。5月に入って2万円台を回復してきたが、アパレルメーカーのレナウンが民事再生法の適用を申請するなど、企業の破綻も増え始めており、経済はますます不透明感を増している。原因である新型コロナの終息も未だ見通せず、投資家たちの不安は日増しに大きくなっている。
そうした中、富裕層たちはどのような資産運用を行なっているのか。ファミリーオフィス「ワンハンドレッドパートナーズ」を運営している百武資薫さんのもとにも、2月中旬以降、多くの富裕層から相談が寄せられているという。
「この数ヶ月で資産が大きく目減りしているんですが、もう損切りした方がいいのでしょうか」
3月に入った頃、百武さんのもとに都内に住む30代の男性から電話が入った。この男性は、中堅企業の経営者で資産規模は1億円近く。不動産などにも投資しているものの、運用は株が中心のため、株価下落の影響をモロに受けて心配になったというのだ。
「株価が下落してもすぐに回復するだろうと思っていたが、新型コロナの影響が想定以上に長引き、さすがに『これはやばい』と不安になった。正直言って甘く見ていた」(中小企業経営者)
そう語る男性は、株価の下落によって資産の3割程度が毀損してしまった。ざっと2000万円が吹き飛んだ計算だ。
「周りの経営者仲間には素早く損切りし、空売りで利ざやを稼いでいる人も少なくなかった。しかし、そうした知識が乏しかったのに加え、まだ大丈夫だろうと考えて対応が遅くなってしまった」(同)
百武さんによれば、こうした相談がここのところ増えているという。相談者は、30代や40代といった若い経営者や資産家が中心。これまで、アグレッシブに株に投資して資産を殖やしてきたものの、新型コロナによって資産が毀損、大きな損を抱えてしまっている人が多いからだ。
こうした相談に対し百武さんは、「慌てず、これまで通りの運用で構わない」とアドバイスしているという。
「デイトレーダーのような短期運用なら、早々に損切りすべきだとアドバイスするが、中長期運用の場合には損切りという考えはなじまない。確かに新型コロナの影響は長期化しそうだが、終息するまでしばらく我慢すべき。これまでの運用が台無しになってしまうからだ。慌てずこれまで通りの運用を続けていくべきだ」(百武さん)