一般社団法人の設立は、相続税の節税に大きな効果を発揮していました。しかし法改正により、それも難しくなってしまったのが現状です。本記事では相続税対策用の一般社団法人に対し課税されるパターンと、相続対策としての有効活用方法を紹介します。

一般社団法人を使った節税とは

相続
(画像=Lemau Studio/Shutterstock.com)

かつて一般社団法人を使った相続税および贈与税の節税が行われていました。特によく利用されたのは不動産の承継です。この節税効果は非常に高く、保有する不動産資産額によっては数億円単位の相続税を圧縮することが可能であったほどで、まさにウルトラCといえます。仕組みは以下のような流れです。

1.一般社団法人を設立し、不動産の所有者名義をその法人に書き換えます。2.財産を引き継ぐ際に、経営者である理事を子どもなどの贈与したい相手に変更します。

以上です。

これは、株式会社でいうところの役員の選任にあたる手続きで、贈与にも相続にもあたらないため税金もかからないという理屈です。また、理事に支払う報酬額も自由に設定できます。一般社団法人を通し不動産資産の運用も任意に行えるので、実質的に不動産を所有しているのと変わりません。

同様に株式会社も法人格を通した承継が可能ですが、こちらはあまり節税効果はありません。なぜなら最終的に相続されることになる株式は、不動産などの資産価値にもとづいて評価されるからです。株式会社は継続的な経済活動のために設立されるものとみなされます。一方、一般社団法人は、「一般」の名のとおり、あらゆる団体に法人格を与えるためのものです。この違いが相続税法上の差を生み出していたといえます。

2018年の法改正で贈与税・相続税がかかるようになった

この「究極の相続対策」は、2018年の法改正によって対策がなされ利用が難しくなりました。不動産の名義を書き換える際に、一定の要件のもと、一般社団法人に対して贈与税がかかるようになったのです。これまでは贈与税が課税される要件が曖昧だったものが、明確になりました。課税されるパターンとしては次のようなものがあります。

1.役員の3分の1超が親族である
2.一般社団法人が解散したときに、残った財産が理事や親族、その他営利団体のものになる(国や公益団体ではない)
3.名義変更する以前の3年以内に、前の所有者に給与の支払いや貸付け、施設の利用など、何らかの利益を与えた

相続税に関する改正が与えるインパクトはもっと大きなものです。相続時点で役員の2分の1を超える親族で占めている一般社団法人には、相続税が課税されます。相続開始前5年以内のうち、3年以上が過半数だった場合も同様です。親族だけでつくられた一般社団法人を通して不動産を承継させようとすると、贈与税や相続税がかかります。

基本的に節税にはならないが不動産を分割しなくてよいというメリットはある

改正後も上記のような要件をクリアすれば、贈与税や相続税が課税されません。例えば役員に占める親族の割合がわずかであったり、公益性の高い事業を行っていたりするケースです。とはいえ、相続対策としての効果はほとんどありません。相続させたい人たちだけに財産を与えることができなくなるからです。では一般社団法人に相続対策としての利用価値が全くなくなってしまったのかというと、そのようなことはありません。

相続税対策としては難しいのですが、分割で生じる問題を解決できる可能性もあるのです。相続人が複数いる場合、不動産を均等に分割することが難しくなるケースがあります。なぜなら土地や住宅はそれぞれ世界に2つとして同じものがないからです。法人が所有権を持つようにすれば、報酬を均等、あるいは役割に応じて任意に割り当てることができます。

同様の対策は株式会社でも可能です。法人税などの税金も基本的には同じですが、一般社団法人は非営利型法人に移行した場合、非収益事業が非課税となります。その場合、非営利型の要件の一つに、「親族が3分の1以下であること」があるため、相続税も課税されない可能性が高いでしょう。もし親族以外の人にも財産を管理してほしいと考えるのであれば、一般社団法人を使った相続対策は有効です。

将来的に財産をどう活用したいかを踏まえて、管理方法を検討してください。

一般社団法人は親族だけに相続させたいとき節税にならない

2018年の相続税法改正によって一般社団法人を利用した相続税の節税は難しくなりました。ただし役員に占める親族の割合を一定以下にすれば、課税されないケースもあります。親族以外の人を含んだ複数人に均等に分割したい場合などには、有効な手段となるかもしれません。(提供:相続MEMO


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