コロナ禍によって一変したビジネスパーソンの働き方。今、身に付けなくてはいけないのが「テレワーク力」とも呼ぶべき能力だろう。部下や上司、外注先とどのようにコミュニケーションをとればいいのか。組織の生産性をより上げるには何に気を配るべきなのか。特集「間違いだらけのテレワーク」第2回は、「失敗しないテレワーク導入マル秘テクニック」だ。(取材・文/アケミン)
テレワークには踏むべき段階がある
「仕事にはテレワークに向くものと向かないものがあります。本来は業務の作業工程を洗い出し、“テレワークで済む作業”を集約して振り分けるのが理想なんですが、コロナで出社できなくなったため業務の大半をテレワークで済まそうとして混乱をきたしている企業が多い。準備運動が済んでいないのに全速力で走るようなもの。これじゃケガをしちゃうし、事故も起きかねない」
こう警鐘を鳴らすのは、テレワークでのアウトソーシングや導入支援を行うベンチャー企業「イマクリエ」の鈴木信吾社長。大手広告代理店からNTTデータなどの通信インフラまで、大企業をクライアントに持つ同社には約5万人のテレワーカーが登録。こうした企業のテレワーク環境をプロジェクトごとに支援する、テレワークに特化したプロフェッショナル集団だ。
「テレワークをうまく機能させるためには、進むべき3つのステップがあります。企業が最初にすべきことは、社内の全業務を見直すこと。ここで外部発注できるものとできないものに選別し、前者はテレワークを活用して外部発注するんです。作業負荷やコストも減り、経営がスリムになります。これができたら次は、家族の転勤や介護などで離職せざるを得ない人のためにテレワークを導入する。これは福利厚生としての意味もありますし、優秀な人材をつなぎ止めるための措置でもあります。これらを経てから、『正社員が担っている業務を遠隔で行うこと』をテレワークでやるのがステップ3です。1と2のステップを経験することなく、いきなりステップ3をやったら、混乱が起きるのは当然なんです」
導入しやすい部署から手をつけてみる
では、テレワーク導入により組織が機能不全に陥らないためには、どうすればよいのか。鈴木社長が提示する解決策はこうだ。
「業務のオンライン化や社員間のコミュニケーション手法、さらには就業規定まで包括的に見直さないと、3番目のステップまでスムーズに移行するのは難しい。とはいえ、取り掛からないことには始まりません。まずは手をつけやすい部署からテレワークを導入して肩慣らしをするのがいい。人事や総務といったバックオフィス系の部署からスタートし、そのノウハウを身につけていくのが近道です。部署ごとの段階的な導入で慣れていくイメージですね。
これだけの変化でも、現場の働き方はガラリと変わります。導入する際に問われるのは、管理職サイドのマネジメント力と指導力です。部下がテレワークに慣れるまで、最初のうちは上司が主体的に業務の切り出しから勤務時間の管理まで、細かく見てあげないとダメ。『今日からテレワークになりました、皆さん自宅でもしっかり仕事してください』では絶対にうまくいきません。『今日はこの提案書の草案を何時までに作ってね』『企画書、ここを直してほしい。間に合わなかった○○さんに引き継ぐように』等、細やかな指示が必要。それまでのオフィス勤務と同様に、達成しなくてはいけない仕事量や成果を明示し、進行管理をしてあげなくてはいけません」