働き方改革の具体策として、かねてから推進されてきたテレワーク。コロナ禍の影響により一気に普及し、多くのビジネスパーソンが緊喫の対応を余儀なくされている。“働き方”が急速に変わっていく中で、どのようにテレワークに馴染んでいくのが近道なのか? 特集「失敗しないテレワーク」最終回のテーマは、“アフターコロナの働き方”だ。(取材・文/アケミン)
憂き目を見る40代以上の正社員
コロナショックによって、最も地位が危ぶまれるビジネスパーソンの階層はどこか。この問について、鈴木氏は「今後、憂き目を見るのは40代以上の正社員ではないか」と答える。
「コロナショック以前から、旧来の『正社員モデル』という働き方は行き詰まりを見せていました。その最たる例が、大手企業の総合職。従来の価値観では“勝ち組”でしたが、いまやその立場は相当危うい。テレワークの普及によって必要性の低さが可視化されてしまったからです。
新型コロナによって自宅からのテレワークを余儀なくされた面はありますが、それは同時に『わざわざ会社に集まってやらなくても済む業務』をあぶり出す結果にもなりました。たとえコロナが収まっても、テレワークの浸透は止まらない。元のスタイルに戻るとは思えません。むしろ、業務の見直しや効率化が進み、社外のテレワーカーへのアウトソーシングに拍車がかかる。そうなると、ますます正社員はいりません。ハンコを押すだけの『総合職おじさん』なんかは絶滅の危機に瀕するのではないでしょうか」
安泰にみえた大企業の正社員の足元が揺らぐ一方で、今回の“テレワークブーム”の恩恵を受ける人もいる。子育てや介護、家族の転勤による離職など、「オフィスとの距離」が足かせとなり、働きたくても働けない状態にあった人材だ。
特集の第2回でご紹介した、人事担当者もその1人だ。
「彼女はもともと国内大手のコンサルティングファーム出身で、人事マネージャーとしての通算15年にわたるキャリアの持ち主でした。しかし夫のフランス赴任に帯同し、離職することに。フランスに移ってからも通訳や翻訳のバイトはしていたものの、人事のプロとしては思うようにキャリアを積み重ねられませんでした。そんな折に縁あって弊社のテレワーカーとして働いてもらうことになったのですが、めきめきと頭角を現し、今ではグローバル組織の開発や5万人ものテレワーカーの人材育成を担当してもらっています。弊社にとって欠かせない戦力です」
こうした事例は、決してレアではない。やはり同社の営業担当社員も、同じくテレワーカー。何ら珍しいことではないという。
「彼女は大手外資金融出身なのですが、当時からテレワークを活用し、そのメリットを享受していたそうです。パソコンとネット環境さえあれば、いつでもどこでもお客様へスピーディーな対応ができるし、オンラインでの社内対応もできます。そんな彼女はプライベートでの離婚を機に、仕事と子育てのさらなる両立を迫られることになった。そこで、より柔軟な働き方ができるテレワークを選んで弊社に参画してくれました。現在、彼女はテレワークの実践者としての視点で、クライアントにもワーク・ライフ・バランスの重要性を説いて回っています」
大手広告代理店が指名するパワポ職人は熊本在住
テレワーカーとして、クライアントの資料作成をサポートする部隊も精鋭揃いだ。
「大手広告代理店がクライアントに提出する洗練されたプレゼン資料は、汐留のオフィスではなく、熊本で作成されている」というから驚く。