新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛要請を受けて、在宅勤務などのテレワークを導入する企業が増えています。テレワークは、ウイルスの感染リスクを軽減しただけでなく、企業にとっても従業員にとってもさまざまなメリットが存在します。Withコロナ、Afterコロナ時代のテレワークのあり方についてお届けする特集の第2回目。今回は、テレワークにおける労務管理についてお話しします。

著者プロフィール

江島将和
江島将和
エドコンサルティング株式会社 代表取締役
外資系コンピュータウイルス対策ベンダー、総合ITベンダーにて情報セキュリティ事業に従事した後、2013年に同社設立。セキュリティ人材育成サービスを提供する傍ら、セミナーでの講演や執筆活動を行う。また、独立行政法人情報処理推進機構にて「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の改訂や「SECURITY ACTION」制度の創設に携わる。情報処理安全確保支援士実践講習講師。法政大学大学院特任講師。中小企業診断士。MBA。

テレワークでも労働関係法令の遵守が必要

Withコロナ、Afterコロナ時代のテレワーク
(画像=xiangtao / pixta, ZUU online)

厚生労働省の調査によると、テレワークを行ううえでの問題や課題として、企業からは「労働時間の管理が難しい」、従業員からは「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」「長時間労働になりやすい」といった労務管理の課題が上位に挙げられています。企業はテレワーク実施時においても労働基準法などの労働関係法令を遵守する必要があり、適切な労務管理を実施するために、次の事項に留意する必要があります。

・労働条件の明示

企業は労働契約を締結する際、就業場所を明示しなければなりません。在宅勤務であれば従業員の自宅、サテライトオフィス勤務であればサテライトオフィスなど、テレワークを行う場所を明示します。

・労働時間の把握

企業は労働時間を適正に管理するために、従業員の労働日ごとの始業・就業時刻を確認して記録しなければなりません。なお、テレワーク実施企業では「通常の労働時間制」を採用している割合が高いのですが、「フレックスタイム制」「事業場外みなし労働時間制」「短時間勤務制度」などの労働時間制度を適用する企業もあります。

・業績評価・人事管理等の取扱い

業績評価や人事管理について、通常勤務する従業員と異なる制度を用いるのであれば、その取り扱い内容を説明しておく必要があります。

・通信費・情報通信機器等の費用負担

通信費や情報通信機器の費用負担はあらかじめ決めておく必要があります。在宅勤務などを行う従業員に費用負担させる場合には、就業規則などに規定する必要があります。

・社内教育の取扱い

在宅勤務などを行う従業員に対して、研修制度に関する定めをする場合も、就業規則などに規定しなければなりません。

通常勤務とテレワーク勤務で、労働時間制度やその他労働条件が同じ場合は、就業規則を変更する必要はありません。しかし、テレワーク用の労働時間制度を設ける場合や、従業員に通信費負担が発生する場合などは、就業規則を変更するか、テレワーク勤務規程の別途作成する必要があります。なお、テレワーク勤務規程は就業規則の一部となるため、作成・変更した場合は所轄の労働基準監督署への届け出が必要になります。

テレワークのおける労務管理の方法

労務管理には、始業・終業時刻の報告や記録を行う「勤怠管理」、在席状況を把握する「プレゼンス管理」、業務遂行状況を把握する「業務管理」の観点で行われます。

・勤怠管理

従業員の勤怠状況を管理するため、始業・終業時刻の報告や記録の方法をあらかじめ決めておきます。勤怠管理の方法として次のような方法があります。