休業補償や休業手当、雇用調整助成金、支払い猶予措置など、新型コロナの影響で休業、失業あるいは減収を余儀なくされた人々やビジネスへの支援策が世界各国で講じられている。

しかしその支出規模が有効性を保証するものではない。さらに、そうした救済措置が国の経済や人々の生活に与える、長期的な影響を懸念する声も上がっている。

「欧州で最も寛大なコロナ経済支援策」を講じているといわれる国、英国の休業補償「ファーロウスキーム(Furlough Scheme)」を例に、専門家や国民の視点から有効性について考察してみよう。

Syda Productions/PIXTA/ZUU online
(画像=Syda Productions/PIXTA/ZUU online)

対国内総生産(GDP)で世界一の経済支援パッケージを誇る日本

国際通貨基金(IMF)の報告によると、世界各国の政府が緊急措置に投じた総額は、4月7日の時点で45億ドル(約4904億円)に達し、その後も少なくとも数週間にわたり増加傾向にある。 米コロンビア大学経済学部修士プログラム・ディレクター兼トルコのボアズィチ大学経済学部のセイハン・エルジン教授が、世界各地の同僚と共同で世界166カ国のコロナ経済支援策を調査した結果が興味深い。

財政支出とGDPとの比率から見ると、最大規模のコロナ経済支援パッケージを打ち出したのはマルタと日本で、それぞれ20%を超えている。マルタが欧州連合(EU)基金の恩恵を受けている点を考慮すると、実質的には日本が首位ということになる。米国は14%、オーストラリアは11%、カナダは8.4%、英国は5%と、先進国の中でも極めて大型だ。

しかし中央銀行による企業への融資保証など、その他の対策を考慮すると順位は大きく変動し、フランスが20位から1位、英国が47位から5位に浮上するという。

国民の生活を補助する3つの経済支援策

各国が打ち出している国民の生活への経済支援策は、一括支給型と継続支給型に大きく分かれる。

日本や香港、米国などの国は一律の金額を国民に支給する一括支給型を基盤にし、一部の国は必要に応じて継続支給型を導入しているが、欧州ではより長期的なセーフティーネット(安全網)を確保するための継続支給型が主流だ。

ロックダウン(都市閉鎖)に伴い、英国で4月から実施されている「ファーロウスキーム(Furlough Scheme )」あるいは「ジョブ・リテンション・スキーム(Job Retention Scheme)」は休職中の従業員について賃金の80%(最大月額2500ポンド)を、「セルフエンプロイド・インカム・サポートスキーム(Self-Employed Income Support Scheme)」は自営業者の所得の80%(3カ月で最大6570ポンド)を補償する制度である。

さらに受給条件に満たない、あるいは該当しない労働者は、住居手当などを含む生活補助手当である「ユニバーサル・クレジット(Universal Credit)」が申請できるという仕組みだ。

同様の支援策は他の欧州国でも実施されており、例えばフランスでは84%、オランダでは90%がカバーされる。