アフターコロナの新たなグローバル・ビジネス基盤として、「グローバル・ネットワーク」から「グローカル・ネットワーク(Glocal Network) 」への移行が提案されている。
「製品の製造ネットワークやサプライチェーンの基盤をコストの安い国に集中させ、各国の市場に輸出する」という既存のグローバル・ビジネス基盤に代わり、製造やサプライチェーンのネットワークを販売地域に集中させ、効率化を図る、いわゆる「地産地消(地元で生産されたものを地元で消費する)」の発想だ。
輸送プロセスで排出されるCO2(二酸化炭素)も抑えられるなど、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の影響や責任に重点を置くESG投資やESG経営が注目されている近年、次世代グローバル・ビジネス基盤となる可能性を秘めているのではないだろうか。
既存のグローバル・ネットワークの脆弱性
生産コスト削減、生産・リリースサイクルのスピードアップ、市場拡大、ブランドイメージの国際化、組織の多様化、イノベーション創出のチャンスなど、多くの企業がグローバリゼーション(Globalization )のメリットを享受する意図で、グローバル・ネットワークの構築に取り組んできた。
しかし新型コロナの感染拡大により、生産システムやサプライチェーンの断絶、セールスの落ち込みなど、グローバリゼーションのデメリットやネットワークの脆弱性が一気に露見した。グローバル・ネットワークへの依存が高い企業ほど、その打撃は深刻だ。
代表例の一つが自動車産業である。例えば、ドイツのOEM(Original Equipment Manufacturing:自社ブランドの自動車を製造するメーカー)は効率性とコストを優先させるために、生産の約3分の2を、中国を中心とするドイツ国外に依存してきた。
ロックダウン(都市封鎖)の影響が長引くにつれ、製品や部品だけではなく労働力や消費力も著しく不足し、関連中小企業の経営や新モデルの開発・発売などにも影響を及ぼしている。
グローバリゼーション×ローカリゼーション
こうしたグローバル・ネットワークの弱点克服に向け、新たに提案されているビジネスの基盤が、グローバリゼーション(Globalization )とローカリゼーション(Localization )のメリットを融合した「グローカル・ネットワーク」である。
今回の新型コロナの長期的なパンデミック(世界的大流行)のような「予期せぬことが起こり得る可能性」をリスク管理に組み込み、「国際市場を対象とする商品の生産拠点やサプライチェーンを、可能な限りローカライズすることで、万が一に生じるリスクを最小限に抑える」というものだ。
これまでコストや労働力、利便性といった理由から世界各地で分散して行っていた一連の製造・販売プロセスを、販売地域中心に移行させるための新たなネットワークとなる。