東京株式市場は上昇後の一服場面となっています。日経平均株価は3月中旬から6月上旬にかけ、4割超上昇し、それまでの下落分の9割弱を取り戻しましたが、その後は一進一退の動きとなっています。収束に向かうと思われた新型コロナウイルスの感染拡大は、米国や新興国等で第2波が懸念される状況となり、市場の楽観ムードはやや後退する形になっています。

今後はどうなるのでしょうか。なかなか収束に向かわない新型コロナウイルスの感染状況をみると、我々は当面、このウイルスと共存しながら、経済を回していかなければならないのでは、との考え方が広がりつつあります。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、ポスト・コロナの時代を株式市場はどう捉えているのか、関連銘柄とともに考えていきたいと思います。

ポスト・コロナをリードするデジタル関連銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

朝早く起き、満員電車にもみくちゃにされて会社へ通勤し、大勢の同僚が集まるオフィスでPCを前に、机に向かって仕事をする、そんなこれまで当たり前だった仕事風景が当たり前でなくなってしまいました。新型コロナウイルスの感染が広がり、満員電車での通勤は社員へのリスクと捉えられ、多くの企業がテレワークを採用することになりました。

自宅でも、リモートアプリを使うことで、会社にいる時と同様(使いにくいケースもありますが)の仕事ができるだけでなく、会議を行ったり、電子署名や電子印鑑を利用してオンラインで決裁もできます。サラリーマンのみならず、イベント自粛で活動の幅を狭められ、実際に人が集まる会場で活動出来なくなったアーティストがビデオ通話を使って動画を配信するといったことも、頻繁に行われるようになりました。世の中は大きく変わりました。

東京都では経済活動の再開について、6/19(金)以降は第2段階に進むことになりました。世界的にも、治療薬やワクチンの開発も進んでおり、うまくいけば、新型コロナウイルスへの感染を心配しなくてよい時期が来るかもしれませんが、米国や新興国の感染状況をみると、油断できないというのが現実です。中には、新型コロナウイルスへの理解が不足していると思われるような指導者も散見され、残念ながら、まだまだ感染拡大に苦しむ国は残りそうです。

新型コロナウイルスは近い将来克服できるかもしれませんが、未知のウイルスや病原菌の脅威は常にあり、ポピュリズム(大衆迎合主義)に支配された国で感染爆発するという展開は今後、いくらでもありそうです。したがって、「ポスト・コロナ」の時代は、単純に「コロナ以前」に回帰するのではなく、仕事のやり方の変革を伴った新しい時代になるのかもしれません。

株式市場では、これに関連するキーワードは複数あります。上記の「テレワーク」もしかりですが、教育の世界での「オンライン学習」、医療の世界での「遠隔医療」も関連しています。そして、DX(デジタルトランスフォーメーション)の考え方は、新型コロナウイルスの流行を経て、より重要なものへと昇華しつつあります。

そうした中、表1はSBI証券が提供し、テーマ株投資を容易に行うことを可能としている「テーマキラー!」において、「DX(デジタルトランスフォーメーション」、「テレワーク」、「遠隔医療」の各項目から銘柄を選びだし、並べたものです。抽出条件は、東証1部であることと、直近の四半期で営業利益が増益となっているものです。

直近の四半期は3月決算企業であれば1~3月期になります。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、多くの企業で活動がストップした時期ですが、逆にこの時期に営業利益が増えているということは、こうした事業環境を追い風にできていることの証であると考えられます。

なお、表1の銘柄では大塚商会(4768)の決算発表が4/30(木)でもっとも早く、他の銘柄に先駆けて会社予想の業績を公表しています。現在のような難しい時期に、会社が業績予想を公表していること自体、業績予想の先行きに一定の自信をもっていることを示しているかもしれません。

「ポスト・コロナ」をリードすると期待されるデジタル関連銘柄
(画像=SBI証券)

表1 「ポスト・コロナ」をリードすると期待されるデジタル関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価6月18日 / 上昇率(安値比) / 予想営業増益率 / 投資のポイント
<3565> / アセンテック / 3,285 / 91.8% / 10.7% / 仮想デスクトップ。テレワークに強み。
<3666> / テクノスジャパン / 615 / 129.5% / 183.2% / 企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進。
<3774> / インターネットイニシアティブ / 3,865 / 54.4% / 5.8% / リモートアクセス環境を無償提供。
<3902> / メディカル・データ・ビジョン / 1,103 / 163.9% / 11.2% / 医療機関向け各種システムを展開。
<4768> / 大塚商会 / 5,630 / 51.5% / 2.4% / ICTを利用したテレワークソリューションを提案。
<4776> / サイボウズ / 3,260 / 177.0% / -0.5% / 約6万社で利用されるグループウェアを提供。
<6533> / Orchestra Holdings / 1,580 / 183.2% / 13.7% / デジタルトランスフォーメーション事業が伸長。
<8086> / ニプロ / 1,192 / 31.3% / 0.3% / 遠隔診療サポート機能付き見守り支援システム。

※会社データおよび株価データをもとにSBI証券が作成。安値は「本年安値」のことで、ここでは例外なく3月に日経平均株価が安値を付けた日の前後に示現された株価になっている。なお、予想営業増益率において、予想は会社側の通期ベース。

デジタル関連銘柄への投資のポイント

SBI証券の「テーマキラー!」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連銘柄として、テクノスジャパン(3666)、サイボウズ(4776)、Orchestra Holdings(6533)、チェンジ(3962)、CTC(4739)他を関連銘柄にしています。「DX」はデジタルを利用したビジネス変革を指しており、大きいところでは、事業をクラウド化したマイクロソフトなどがその成功例になっています。

テクノスジャパン(3666)は企業の経営・業務システムにおいてDXを推進することを主業務としています。2020年3月期は営業利益が2.82億円(前期比63.9%減)と不振でしたが、非主力業務での赤字プロジェクトが原因であり、それがなくなる今期営業利益は183%増と大幅に改善する見通しです。

サイボウズ(4766)はその提供するグループウェアを多くの企業が使っています。グループウェアを使うと情報共有やコミュニケーションの交換等をひとつのアプリケーションの上で行えるため、業務を効率的に行うことができます。また、PCだけでなくスマホなど他の機器からもアクセスできるため、テレワークを容易にすることができます。このため、同社はテレワーク関連としても取り扱われています。「テーマキラー!」では同社の他、インターネットイニシアチブ(3774)、アセンテック(3565)、大塚商会(4768)などがテレワーク関連銘柄になっています。

アセンテック(3565)は仮想デスクトップのトータルソリューションベンダーとして知られています。通常はPC端末上にあるデスクトップ環境をサーバ側に置き、セキュリティーレベルも維持されます。これを使うことで、企業はテレワークを安全に実現することができます。同社の2021年1月期・第1四半期は営業利益1.74憶円(22.1%増)でした。通期で10.7%増の営業増益を見込む中、好調なスタートを切ったと考えられます。

最後に、遠隔医療関連銘柄では、エムスリー(2413)、メディカル・データ・ビジョン(3902)、ニプロ(8086)の他、メドピア(6095)やケアネット(2150)など新興市場の銘柄も関連銘柄になっています。

図1 テクノスジャパン(3666・日足)

図1 テクノスジャパン(3666・日足)
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

図2 サイボウズ(4776・日足)

図2 サイボウズ(4776・日足)
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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