※本連載は日本でまだ翻訳されていない海外のビジネス書を紹介しています、書籍タイトルは著者による翻訳です
後にエボラ出血熱と判明する患者が亡くなった直後に、看護に当たった看護師に対し、旅客機への搭乗許可が下りたのはなぜか。
新型コロナウイルス感染症に感染している可能性がありながら、多くの人が世界中を移動・帰宅し続けたのはなぜか。
専門家とAIの時代にこそ、失われた思考力を取り戻す努力が必要とされている。
発売日:2020年6月16日
ジャンル:ビジネス書
※画像をクリックするとAmazonに飛びます
書籍概要
優れた専門家と高いコンピュータ技術のおかげで、現代社会には実に多くのガイドラインや指標、プロトコルが存在している。
これらは問題を正しく理解し、標準的な対応を行うためには大変有効である。しかし、このような便利な存在ができた結果として、人々は自分の頭で考えることをやめてしまったのではないか。
このようなショッキングな主張が、この書籍の主題である。
冒頭では、記憶に新しい伝染病の例を挙げた。このような伝染病の脅威に対し、世界中では様々なマニュアルが作成され、意思決定に関するガイドラインが採用された。
例えば、新型コロナウイルス感染症への感染を疑う基準として「37.5℃以上の発熱が続く時」というものがある。それでは、今体温を測定し、37.4℃であれば感染していないと言えるだろうか。
改めて考えてみれば、そんなことは言い切れないと誰もが認めるであろう。しかし、実際にはこのようなケースにおいて、自らも感染を疑いつつも、公共交通機関を利用した移動を行ってしまった人が見られた。
なぜならば、「専門家が37.5℃以上が発熱としたから」である。
情報技術が革新的に発展した現代社会において、一般市民にとっても、信頼性のある情報を手に入れることは容易くなった。
しかし、その情報を文字通り鵜呑みにし、思考停止に陥っていないだろうか。
このような時代だからこそ、情報を正しく読み取り、それを盲信するのではなく「材料」として、自分自身で考え・判断する力を、今こそ取り戻さなくてはいけない。
この本をおすすめする読者層
現代社会を生きる全ての人が、この書籍に一度は目を通すべきと言える。
特に、現代の社会における情報の氾濫と安易な迎合、結果としての思考停止に危機感を抱いたことのある人材であれば、書籍の内容は特に響くことであろう。
著者は、専門家やコンピュータ技術により整備された情報の是非を問うているわけではない。それらの情報を上手に利用し、その上で自分自身で考える力を身につけるべきと考えている。
この社会においてよりよく生きたい人、自分自身の思考や判断に自信を持てるようになりたい人には、特におすすめである。
著者について
ハーバード大学の講師であり、世界を舞台に活躍するトレンドウォッチャー。複数の学位(博士号を含む)を持ち、幅広く活躍している作家である。