祖父母が、孫に教育資金などを贈与するケースは多いでしょう。しかし、贈与する人が高齢の場合、贈与の記録を管理するのは容易ではありません。その場合に便利なのが、贈与の実行と記録をすべて銀行が管理してくれる「暦年贈与信託」です。一体、どんな商品なのでしょうか。

暦年贈与のメリット

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(画像=redpixel/stock.adobe.com)

暦年贈与の主なメリットは、贈与税を節税できることです。贈与税には年間110万円の基礎控除があります。一括贈与すれば贈与税がかかる金額でも、複数年に分けて110万円以下の非課税枠に収めれば、贈与税を払わずに贈与できるのです。

【1,000万円を一括贈与した場合の贈与税計算例】※直系尊属(父母、祖父母)から20歳以上の子、孫への贈与の場合

1,000万円-110万円(基礎控除額)×30%(税率)-90万円(控除額)=177万円

上記のように1,000万円を一度に贈与すると、多額の贈与税が発生します。暦年贈与を利用して、100万円を10年連続で贈与すれば非課税となり、1年あたり17万7,000円の節税効果が生まれます。

また生前贈与の目的は、相続税の節税対策でもあります。生前贈与をしておけば相続財産が少なくなり、相続税の課税額も減るので、暦年贈与はぜひ利用したい制度です。

暦年贈与の注意点

暦年贈与では、注意しなければならないことがあります。贈与税の非課税枠110万円は贈与される人に対するものなので、同じ年に父と母から100万円ずつ贈られた場合は、年間200万円の贈与を受けたことになり、110万円を超えた部分に課税されます。

また、非課税枠内であっても、毎年同じ時期(誕生日など)に同じ金額を長期間続けて贈与すると連年贈与と見なされ、課税される場合があります。暦年贈与信託を利用する場合、契約時に連年贈与にならない贈与の仕方について、金融機関の担当者にアドバイスを求めるといいでしょう。

暦年贈与信託とはどんな商品か

暦年贈与信託の具体的な仕組みを見てみましょう。

  1. 契約時の流れ
    まず、贈与したい金額を信託銀行などの金融機関に預け入れます。次に、贈与を受ける受益者候補を3親等以内の親族の中から選び、指定します。贈与手続きは年1回行うことができ、契約時に1回目の贈与を依頼することもできます。

  2. 翌年以降の贈与手続きの流れ
    毎年金融機関から送付される贈与依頼書に、「誰にいくら贈与するか」を記入し返送します。その後、金融機関から贈与を受ける人へ受贈の確認書が郵送され、受益者は贈与を受けるかどうかなどの必要事項を記入し返送します。

  3. 贈与手続きの実行
    金融機関が贈与を実行した後、契約残高を年1回贈与する人に通知します。

※金融機関によって、仕組みが多少異なる場合があります。

計画的で安心できる贈与が実現

暦年贈与信託を利用しない場合、自分で孫や子と契約を交わし、贈与した記録も自分で残さなければなりません。贈与する人が高齢であれば負担は大きく、書類を紛失するリスクも高くなります。暦年贈与信託を利用すれば、金融機関が贈与の記録を管理し贈与依頼書も送付してくれるので、贈与を忘れることもありません。

暦年贈与信託は、信託財産の運用で損失が出た場合は金融機関が補填してくれるため、実質的に元本保証であることもメリットです。管理手数料も無料なので、運用上のリスクはほぼないと考えていいでしょう。

贈与で気になるのが税務署の存在ですが、金融機関に記録が残るため、税務調査を受けた場合でも安心です。贈与契約書も贈与した証拠にはなりますが、現金の贈与では実際にその金額を渡したことまでは証明できません。銀行からの送金であれば金額まで証明できるため、税務署から余計な詮索をされることもないでしょう。

愛する家族にできる限り少ない負担で相続させたいのが親心ですが、計画的で安心できる生前贈与が実現する暦年贈与信託は、検討に値する商品と言えそうです。(提供:相続MEMO


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