多くの人が相続税対策として、子どもや孫への生前贈与を活用しています。そのような節税策の一つとして孫への相続を考える人もいるかもしれません。しかし孫を活用して相続税対策する場合は注意しなくてはいけない点もいくつかあります。そこで今回は孫を活用した場合の4つの贈与パターンについて紹介します。

死んだあとに孫に財産を引き継がせるとマイナスだらけ

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(画像=aletia2011/stock.adobe.com)

配偶者や子どもへの相続を飛ばして孫に財産を相続させようと考える人もいます。なぜなら「立て続けに相続が発生し、その都度税金を納めるくらいなら最初から孫に相続させれば節税になる」というように見えるためです。たしかに相次ぐ相続により相続税がかかれば財産は目減りしてしまうため、世代を飛ばして財産を受け継がせたほうが節税できるように見えます。

しかしそれは「誰が資産を承継しても相続税額が変わらない場合だけ」です。

相続税の2割加算

相続税の額は、「財産の受取人が被相続人や贈与者からみてどんな立場の人間か」によって変わります。具体的にいうと相続や遺贈によって財産を承継した人が被相続人の配偶者か、被相続人の1親等の血族(子と父母)であれば相続税は計算式に従って算出した金額通りです。しかしこれら以外の人については、本来の相続税額に加えて相続税額の2割を一緒に納付しなくてはなりません。

なぜなら被相続人にごく身近な親族以外が財産をもらうことは偶然性が高く、その分被相続人の死後の生活への配慮はいらないからです。なお相続税の2割加算の制度は相続時精算課税制度による贈与税の額の計算にも適用されます。

代襲相続でなければ孫養子も2割加算

「孫だと2割加算になるなら孫を養子とすれば相続税の割り増しはなくなるのではないか」と思う人もいるかもしれません。しかし相続税法第18条2項ではそういった「孫養子を利用した課税逃れ」にも対処しています。つまり孫を養子にして2親等から1親等に引き上げたとしても相続税の2割加算は免れることはできないのです。

ただし孫が代襲相続人となった場合については、その孫が被相続人の養子であっても2割加算は生じません。代襲相続とは被相続人の子どもAが被相続人よりも先に亡くなっていることにより、Aの子どもである孫Bが代襲して相続権を取得することです。孫養子としての課税逃れ的な要素よりも本来相続人となる子どもの地位を代襲した要素のほうが優先されるといえます。

孫に資産をあげるなら「贈与」!使えるパターン4つ

世代飛ばしによる節税には、細かい試算や財産評価が必要です。よほどの執念があれば緻密な計算もがんばれるかもしれません。しかし多くの人にとっては「できればラクに節税したい」というのが本音ではないでしょうか。あまり手間をかけずに相続税を節約したいと考える人には「孫への生前贈与」の活用がおすすめです。ここで4つの贈与パターンを紹介します。

1 年間110万円以下の枠内で暦年贈与を行う

暦年贈与制度では、年間110万円以下の贈与ならば贈与税がかかりません。この110万円の枠を活用しコツコツと孫に贈与していけば将来の相続税を節約することが可能です。非常にシンプルですが時間をかければ大きな効果が期待できます。

2 教育資金の一括贈与の非課税措置

受贈側の孫が30歳未満で就学しているならば「教育資金の一括贈与の非課税措置」を検討してもよいでしょう。教育資金の一括贈与の非課税措置を活用すれば信託銀行などの金融機関を通じ、孫に対して教育資金を贈与しても最大1,500万円まで贈与税が非課税になります。ただこちらは、2021年3月31日までの措置です。(2019年11月現在)

3 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置

贈与を受ける孫が20歳以上50歳未満であり、もうすぐ結婚や出産・育児を控えている場合、「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置」の検討の余地があります。本措置を活用すれば、先述の教育資金の非課税措置と同じく信託銀行などを通じて贈与側の直系卑属である孫に対し最大1,000万円まで贈与税非課税で贈与することができます。ただこちらも2021年3月31日までの措置です。(2019年11月現在)

4 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置

受贈側の孫がマイホームを購入する予定ならば生前贈与のチャンスだといってよいでしょう。住宅取得等資金の贈与税の非課税措置を活用すれば自宅の新築や購入、リフォームに必要な資金を最大3,000万円まで贈与税非課税で孫に贈与することができます。ただ非課税限度額は新築などの契約のタイミングによって変わります。またこの措置も2021年12月31日まで有効です。(2019年11月現在)

制度の仕組みを理解して、賢く活用しましょう。(提供:相続MEMO


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