世界経済の不確実性が高まると、リスクヘッジの資金が金の市場に流れることがよく知られています。2020年1月に発生した新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界経済に2008年のリーマンショックを上回るほどの打撃を与えました。その中で、「有事の金」と呼ばれるとおり、金市場は乱高下しながらも中長期的には右肩上がりに上昇しています。今回は、新型コロナウイルス感染症が金市場に及ぼした影響と今後の展望を解説します。
新型コロナウイルス感染症は、金相場にも大きく影響
2020年1月中国の武漢から始まったされる新型コロナ感染症の拡大は、金価格上昇のトリガーとなる場面が時系列で見られました。2020年1月時点では、欧米への拡大は発生していませんでしたが、市場はリスク回避に走り、金価格が上昇しました。
2020年2月には、中国での新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大が起き、日本をはじめ韓国での集団感染、欧州イタリアでの感染拡大が確認されるにつれて、金価格は高値で推移しました。
2020年3月には、新型コロナウイルス感染症が米国でも広まり、世界的なパンデミックとしての認識が高まることで、株価が急落し、キャッシュニーズから金の換金売りが相次ぎ、金市場も一旦は急落しました。しかし、一転して上昇に転じ、4月半ばから高値での推移が継続している状況です。
有事の金というイメージだけでは判断できない
新型コロナウイルス感染症の影響でドル資金の需要も高まりました。有事の金というイメージは定着していますが、今回の新型コロナウイルス感染症のように、想定外で予測がつかない事態によって都市が封鎖され、流通や人の流れが止まってしまう環境の中では、金の価格も下落に転じた局面がありました。グローバルでの決済が可能なドル資金も必要であると市場が判断したのでしょう。
資産の保有という視点で考えれば、現物として存在する金は、紙幣でしかないドルよりも有効であると考えられます。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の影響では、資産維持のための金保有と、流動性資金確保のためのドルに資金が回っているのです。
構造的な問題もあり堅調な需要
不確実性が高まる中で、金市場はリスクヘッジのために投資家によって活用されることが多く、グローバルな政治経済が構造的に低下しない限り、堅調な需要が期待できます。近年は、新型コロナウイルス感染症の影響が出る以前から、米国と中国の貿易摩擦や米国とイランの対立、北朝鮮問題、英国のEU離脱問題、世界経済の成長鈍化など、短期的に解決が見込まれないであろう不確実な課題が山済みです。さらに、新型コロナ感染症が不安要素として加わるという構造的な要因により、金価格は順調に推移するという予測があります。
一方で、上昇は限定的の声も
金高騰の上昇は限定的という声も聞かれます。過去の事例を例にとって推測された見解として、2009年から約10年間継続した「ギリシャ危機」を背景とした金価格の推移を参考にしてみましょう。ギリシャ危機を背景に金価格は急騰しましたが、その後急落しているのです。
2020年の新型コロナウイルスを要因とする金価格の推移も、ギリシャ危機と同様にバブルを形成しながら急騰し、その後急落するという見解があります。新型コロナウイルスは日本ではようやく収束の兆しが見えてきましたが、第2波の懸念もあり世界的にまだまだ大きな影響が続きそうです。ここで、有効なワクチンの開発が進むなど、収束が進むようなことがあれば、それを引き金に金価格が下落に転じることも考えられます。
実は、金需要の内訳を見ると、消費者が主体となる宝飾市場が過半数を占めています。新型コロナウイルスの影響は、宝飾市場に冷や水を浴びせており、それが金価格の下落を招くとの見方もあります。
金投資の今後
2020年5月半ばの国際金価格は、上昇基調が継続しています。新型コロナウイルスのグローバルでの収束が想定できない中で、株式市場は方向感のない不安定な状況が続いています。米中関係の悪化も経済の不安定感を増大させています。一般投資家は株式市場を警戒し、金市場への注目が続きそうな気配があります。
一方で、宝石市場の低迷など乱高下する構造的な要因も見えています。金投資について、自らの投資戦略と照らし合わせて慎重に考えるべき局面と言えそうです。(提供:JPRIME)
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