新型コロナウイルス感染拡大による世界的景気後退の懸念から、値動きの激しい相場が続いている。本格的な回復軌道に乗るためには経済活動の正常化が必須となるが、依然、感染拡大が止まらず、ワクチンの準備も整っていない現状を考慮すると、まだまだ時間を要するだろう。

コロナを機に投資デビューする若年世代も増加傾向にあるようだが、米国ヘッジファンドの巨匠レイ・ダリオ氏は、「コロナプルーフ(Corona Proof)」=コロナ不況に負けないポートフォリオを構成することを推奨している。

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(画像=TAKUMI-CG/PIXTA/ZUU online)

ダリオ氏「新型コロナは経済市場の津波」

2008年のリーマンショックが引き金となった世界金融危機時は、一足早くリスクを予測・回避することで「伝説の投資家」としての地位を確立したダリオ氏だが、新型コロナでは苦戦が目立つ。

同氏が率いるブリッジウォーター・アソシエイツは、運用資産額およそ1600億ドル(約17兆 2019億円)を誇る、世界最大のヘッジファンドだ。しかしコロナによる市場の急落を受け、2020年1~3月にわたり20%を超える損失を出している。

前回の金融危機と新型コロナでは、全く異なる戦略が必要であることを、身をもって体験したダリオ氏は、その後の米CNBC放送のインタビューで、「波が完全に引いた後も、所得の減少やリストラ、負債の増加など、立て直しに時間を要するため、必然的に経済の回復が遅れる」と、パンデミック(世界的流行病)を経済市場における津波に例えた。

同氏の見解は、ロックダウン(都市封鎖)が全面解除され、ビジネスや人々の生活が通常通りになれば、経済は「V字回復(急激に落ち込み急激に回復)」するとの楽観的な見方と、真っ向から対立するものだ。

他にも「U字回復(ゆっくりと回復)」や、セカンドウェイブ(第2波)を想定した「W字回復(急落と回復が2回続く)」など、様々な予想が飛び交っている。

いずれにせよ、今回のパンデミックがいつまで続くのか、最終的な経済的影響がどれほどの規模になるのかなど、先行きが不透明である事実に変わりはない。よほどのリスクテイカーでない限りは、長期的な価格変動に焦点を置いたリスク・ミティゲーション(大きな損失リスクを抑える一方で、利益を狙う)戦略が必要だ。

コロナプルーフ・ポートフォリオ 3つのポイント

コロナプルーフ・ポートフォリオの構成は、効果的なパンデミック・リスク・ミティゲーション戦略の一つである。「致命的なリスクを負うのは避けたいが、ある程度の利益を得たい」という投資家は、検討する価値があるだろう。

(1)「快適な生活の維持」を最優先する

現状のように市場の不安定な状況が長期化すると予想される状況下では、所得の減少やリストラなどの万が一に備えて、快適な生活を維持するための資金確保を最優先する必要がある。巨額の資金を運用しているダリオ氏の提案としては、一見意外にも思えるが、巨額の損失を経験しているからこそ、説得力がある。

具体的には「現在のポートフォリオ÷必要な生活費」という方程式で「収入が途絶えた時、どれぐらいの期間、生活を維持できるか」を算出し、予期せぬ出費などを想定して、さらに2等分する。例えば半年間生活を維持できる貯蓄があったとしても、念には念を入れて3カ月分と見なす。半年分キープしたいのであれば、算出した額の2倍が必要ということだ。

万が一の時に必要だと思う生活費を確保して、なおもお金が余るようであれば、ここで初めて投資することを考えるよう、ダリオ氏は提案している。

(2)長期的視野を養う

ダリオ氏は「多くの投資家が犯す最大の誤り」として、最近のパフォーマンスを投資の判断基準にする傾向を挙げている。

豚インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)、エボラ出血熱など、過去のパンデミック(世界的流行病)やエピデミック(伝染病)時における米株式市場の動きを見てみると、通常発生から半年~1年後には回復している。

米S&P500種株価指数のマーケット・リターンを例に挙げると、唯一回復していなかったのは、HIV・エイズ(後天性免疫不全症候群)とカリフォルニアで起こった麻疹の集団感染時のみで、豚インフルエンザの発生1年後には36.0%、SARSは20.8%、MERS(中東呼吸器症候群)は18%と大幅に回復した。

同じことが新型コロナに該当するという保証はないが、S&P500は先進国が続々とロックダウンに踏み切った3月下旬の底打ち後、すでに回復基調にある。

もちろん第2波や景気後退など、再び下落に転じる不安材料は多々あるものの、半年後、1年後という長期的視野を持って冷静に市場を観察すると、現在目に映っている市場とは全く異なる風景が見えてくるのではないだろうか。

(3)分散投資「黄金の比率」も調整が必須

それでは具体的に、どのような戦略が効果的なのか。

「全ての卵を一つのカゴに入れるな」という投資の格言があるほど、もともと分散投資は効果的なリスク・ミティゲーション戦略として定着している。しかしコロナプルーフ・ポートフォリオでは、単に様々な対象に投資するだけではなく、経済環境に影響を受けにくく、かつ利益が期待できる投資対象を選ぶことが重要だ。

ゴールド(金)や現金、国債を安全資産と見なす投資家も多いが、ダリオ氏は「インフレで1年に2%以上の価値を失う可能性がある」として、現金保有を避けるようアドバイスしている。

一方、ゴールドに関しては、短期的に価格が下落することがあっても、長期的には下落局面に強いという理由から、「ポートフォリオに組み込むべき」と推奨。実際コロナショックで株式市場が世界的に大荒れになった際も、ゴールドはいち早く上昇基調となった。

配分に関しては、米トニー・ロビンズ氏著作『MONEY Master the Game』の中で、株式30%:長期米国債40%:中期米国債15%:ゴールド7.5%:その他のコモディティ7.5%が「ダリオ氏の黄金の比率」として紹介されているが、状況の変化に合わせて臨機応変に見直す必要がある。