「ウィズコロナ」で経済活動を行なううえで不可欠なのが、「密」を避けることだ。小売りなどの店舗でも、来店客が多すぎると、密が発生してしまう。そこで、店内の混雑状況をモニターし、必要に応じて来店客に注意喚起をしたり、店員の対応を促したりするサービスが続々と登場している。

AIによる映像分析の技術を活用

ウィズコロナ,密
AWL BOXが導入されているドラッグストア「サツドラ北8条店」(画像=THE21オンライン)

2016年創業のベンチャー企業・AWL〔株〕が提供するサービス「AWL Lite」は、Android端末にインストールして使用する。

端末に内蔵されたカメラに来店客が映るよう、店舗の入り口に設置すると、映像をAIが分析してマスクを着けているかどうかを判断し、着けていれば青い画面で着用の御礼を表示、着けていなければ赤い画面で着用を促す。同様に、手をアルコール消毒すると、画面が赤から青へと変わる。注意を促す目的で、「面白い」と来店客にも好評だという。

また、来店客をカウントして、店内が混在してくると画面で注意を促す機能もある。店員も、AWL Liteで混雑状況を把握し、適切な対応することができる。混雑状況はウェブでも見ることができるので、実際に店舗に赴く前に確認することも可能だ。

メディアでも取り上げられて大きな反響を呼び、大丸百貨店などのデパートやスーパーマーケット、宿泊業者、エンタメ業界の店舗などへ導入が進んでいるサービスだが、実は、もとは新型コロナ対策を目的としたサービスではなかった。

「来店客の動きや年齢、性別などを分析して、マーケティングや店舗の省人化などに役立てていただくのが、本来の目的でした。新型コロナウイルスの流行が拡大し始めた3~4月になると、5~6月に導入を予定していただいていた契約が次々と延期やキャンセルになったのですが、その中でも社会貢献できることはないかと考えて、新型コロナ対策の機能を追加したのです」(土田安紘取締役CTO)

AIによるマスク着用の有無の判別には、現在、世界中で活発に研究が進んでいる「ドメインアダプテーション」という手法を使った。AWLではインド工科大学ボンベイ校と共同研究を行なっている。

同社では「AWL BOX」というサービスも提供している。これは、名称通り、ボックス状の端末を店内のネットワークに接続することで、AWL Liteと同様に、来店客の映像分析や混雑状況のモニタリングを行なうもの。カメラは店舗に既設の防犯カメラなどを利用するため、工事は不要だ。

AWLは昨年まで、北海道を中心にドラッグストア「サツドラ」を展開するサツドラホールディングス〔株〕の傘下にあり、サツドラの実店舗で技術を磨くことができたのも強みだと、土田CTOは話す。今年6月10日にリニューアルオープンした旗艦店「サツドラ北8条店」(札幌市東区)にも、AWL BOXが導入されている。

AWL LiteやAWL BOXは、映像をサーバーに移さず、端末内で分析するので、個人情報は保護されるという。