「相続税対策を子どもの自分が中心になって進めたいけど何からやっていいか分からない」という人もいるでしょう。ここでは親の年代別に相続税対策例を紹介しつつ、相続税対策を始めるきっかけづくりの方法も解説します。

基礎控除額の大幅引き下げで4.4%→8%が相続税の対象に

税金
(画像=robert-kneschke/stock.adobe.com)

2015年に相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられた影響で相続税は増税傾向にあります。基礎控除額とは「課税遺産総額から差し引くことができる金額のこと」です。つまり基礎控除額を差し引いた金額が0以下の場合は相続税がかからないということになります。一体どれくらいの増税になったのか、増税前と増税後の基礎控除額を比較してみましょう。

まず2015年の相続税増税前における基礎控除の計算式は以下の通りです。

・5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

例えば相続人が配偶者と子ども2人の場合は「5,000万円+(1,000万円×3人)=8,000万円」です。つまり8,000万円までの相続財産には相続税がかからないことになります。

一方2015年の相続税増税後における基礎控除額の計算式は以下の通りです。

・3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

増税前の条件と同様の条件で算出すると「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となります。つまり4,800万円までの相続財産には相続税がかからないということです。このケースでは基礎控除額が増税前8,000万円、増税後4,800万円となり3,200万円も基礎控除額がさがってしまったことが分かります。

「4,800万円も資産がないから大丈夫」と感じる人もいるかもしれません。しかしこの額は、首都圏にマイホームを所有していて平均的な預貯金のある家庭でも対象になる可能性があるものです。例えば法定相続人が3人で被相続人の預金が0円の場合でも土地と建物で相続税評価額が5,000万円あれば基礎控除との差額200万円に対しては相続税がかかってしまいます。

ちなみに国税庁の調査によると2014年(改正前)の相続税の申告状況は約4.4%だったのに対して2015年(改正後)は約8%と2倍近く増加。基礎控除額の改正に伴い相続税対象になった人がいかに増えたのかよく分かるのではないでしょうか。

親が60代のあなたがやるべきこと

親が60代にさしかかると本人も周囲も「万が一を考えてそろそろ相続の話を考えておきたい」という人も出てくるタイミングです。相続税対策を行うには、そもそも「財産がどれくらいあるか」を確認しなければなりません。そのため財産額や内容によって対策方法も変わってきます。

特に親が相続税対策に興味がない場合は、子どもが中心になって財産確認をしていくことも検討したほうが良いでしょう。しかし財産の調査は思った以上に手間がかかります。財産といっても例えば現金や預貯金だけでなく株式や債券などの金融商品、不動産、高額な現物資産など種類はさまざまです。

これらのすべてが相続税の対象になります。あわせて加入している生命保険のチェックや相続後のトラブルを防ぐため、借金など負債の有無も確認したいところです。これらを把握した次にやるべきことは「財産の管理状況の確認」。預貯金であれば届出印と通帳の管理場所やキャッシュカードの暗証番号、不動産であれば売買契約書と登記簿謄本などといった具合です。

親が70代のあなたがやるべきこと

親の財産の全容が確認できた後は「相続税対策が必要か否か」のおおまかな判断ができるでしょう。冒頭で説明した相続税の基礎控除額を超えてしまうような財産がある場合は、実際の対策に着手する前に専門家(顧問税理士や顧問弁護士など)へ相談することも選択肢の一つです。

親子で話し合いながら信頼できる専門家を選ぶことで後々コミュニケーションがスムーズになるでしょう。専門家探しを優先する理由は、素人考えで遺言書を作成したり相続税対策をしたりしても肝心な点が抜けている場合があるからです。基本的な事項を押さえていないと余計な相続トラブルの原因を作っていることもあります。

相続税対策を任せる税理士や弁護士は「知人や取引のある金融機関からの紹介」「専門家主催の相続セミナーに参加」といった方法を活用することも方法の一つです。専門家のアドバイスに沿って生前贈与(孫への教育資金の援助や住宅取得資金の援助、暦年課税、相続時精算課税など)を進めるとよいでしょう。

現預金の比率が大きい場合は同時に不動産購入などによって相続税課税額を圧縮し法的に有効な遺言書を作成するのが理想的です。親だけで判断することが難しい部分は、子ども側が積極的にフォローするのが安心でしょう。

親が80代以上のあなたがやるべきこと

平均寿命の年齢を意識すると親御さんがいつ亡くなられてもおかしくないのが80代です。遺言書がある場合は「内容に更新がないか」「遺言書がない場合はトラブルリスクがないか」などを相続人の代表である子どもが中心となって定期的にチェックすると安心でしょう。また相続税の申告および納税の期限は相続発生から10ヵ月以内で現金払いが原則です。

そのため「相続税を支払うのに十分な現金が用意できるか」といったチェックも重要になります。冒頭で例に出したように地価が高い都心部で土地と建物はあるけど預金がほとんどない場合は納税資金を捻出できない場合も少なくありません。納税資金を生命保険金でまかなう場合は、保険証書や契約の有無も再確認しておくことも重要です。

保険証書が見つからなければ契約内容が分からないため保険金のスムーズな支払いが難しくなります。

まずは家族で相続税について話すきっかけを作ろう

親が60~80代のケースでチェックするポイントは異なりますが被相続人の子どもが上手にフォローしながら進めるとスムーズになる可能性が高まります。もちろん今回解説した年代や内容はあくまでも一例のため、さらに前倒しして相続税対策できればそれに越したことはありません。しかし現実的に相続税対策を相続人同士で話し合うのは大変です。

相続の話題をいきなり子どもから持ち出されて親が戸惑うケースも少なくありません。子どもが中心となって相続税対策を進めるには、日ごろから自然に話せる雰囲気づくりが大切です。例えば著名人や身近な人が亡くなった話題をきっかけに「大丈夫だとは思うけれど念のためにそろそろ話し合おう」などと前置きをして徐々に雰囲気を作ることもよいでしょう。

相続税対策は、焦らず親の気持ちに寄り添いながら進めることがポイントです。(提供:Dear Reicious Online


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