「入店までに小1時間も待たされたのよ!」同僚がそうこぼした。彼女は先日、ニューヨーク郊外のイケアに行ったのだが、新型コロナの感染予防に伴う入店者数の制限で、長蛇の列に並んだという。米国ではイケアに限らず、ホールフーズ・マーケットやトレーダー・ジョーズなど多くの店舗で入店者数を制限しており、まず並ばないことには入店できない状況が続いている。

そうした中で急拡大しているのがドライブスルー(カーブサイド)だ。ドライブスルーといえば一部ファストフード店の専売特許といった印象もあるかもしれないが、いまやスーパーマーケットやデパート、ショッピングモール、銀行などでも取り入れられており、ウォール街の市場関係者からは新たなビジネスチャンスとして注目する声も聞かれる。

「非接触型」サービスで需要と供給が一致

米国,コロナ
(画像= mTaira / pixta, ZUU online)

米国では「カーブサイド・ピックアップ(以下、カーブサイド)」が急速に普及している。スーパーマーケット等で店舗の駐車場に止めた車に乗ったまま商品を受け取ることができるサービスで、ファストフード店等の「ドライブスルー」に似ている。

カーブサイドのけん引役となっているのが、世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートだ。同社は全米の約4800店舗中、3300店舗以上でカーブサイドを提供している。もともとカーブサイドは「商品は魅力的だが、店内が広く、混んでいるので行きたくない」という、消費者の声に応えるための施策だった。それが新型コロナ危機で一気に加速した。

ポイントは「非接触」である。カーブサイドはインターネットで注文した商品を受け取る際、従業員がトランクに商品を積み込んだらそのまま発車できるので、従業員と接することはない。会計もインターネット上で済ませているので、サインなどの必要もない。新型コロナ禍では、消費者は混雑した店内で買い物をしたくないし、従業員も不特定多数を相手に接客したくはない。「非接触」を実現したカーブサイドは消費者はもちろんのこと、従業員にとっても大きなメリットがある。

ウォルマートが先導する形で、クローガーやターゲット、ホールフーズ・マーケットなど他の主要スーパーでもカーブサイドの提供が拡大している。ターゲットは年末商戦までにカーブサイドを全国展開する計画を明らかにしている。

ウォール街の市場関係者からは「消費者は人との接触を避けながらも、いつでも、どこでも、自由な買い物を望む傾向が強まっている」(アナリスト)との指摘もある。カーブサイドはその落としどころの1つとなっているようだ。

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