(本記事は、石川和男氏の著書『部長の心得』総合法令出版の心得の中から一部を抜粋・編集しています)

AI
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AIの時代だからこそ歴史や哲学を学ぶ

AI時代の知識の調べ方

令和の時代、これから部長に任命される方にIT音痴は少ないと思います。

プログラミングはできなくても、検索サイトを駆使して多くの情報にアクセスできる。

グーグルやウィキペディア。後者は信ぴょう性が疑問視されていましたが、近年では相当なレベルで改善が進んでいます。

理系の研究論文にも引用できると、先日知人に教えてもらいました。英語ができなくても、グーグル翻訳を使えば、ある程度のことは理解できます。「海外サイトにもアクセスしたいけど英語が……」と悩んでいる方は、試してみてください。「検索エンジンを駆使すれば、本なんていらないじゃないか?」と、そんな声も聞こえてきそうです。たしかに、ネットから多くの情報を得ることができます。AIがさらに進化すれば、情報の取得レベルは向上していくことでしょう。

しかし、ウェブ上で得られる情報がすべて正しいわけではありません。いい加減なものもあります。その判断を見極める力がなければ、安心はできません。

歴史や哲学を学ぶことの意義

そのために必要なのが、歴史や哲学を学ぶことです。政治、経済、科学技術がどのような歴史をたどって現在へと至っているのか。会社の現状把握にこれまでの会社の歴史認識が必要であるように、それらを学ぶときも歴史が重要です。

物事の本質を見抜くには、思考力も必要です。思考はすべて言葉によって成り立っています。

論理とは、言葉と言葉の関係を意味しています。そのために哲学を学ぶ。哲学者の言葉にふれ、その力を感じ、できるだけ自分の中に取り入れる。

語彙を増やす。語彙力がつけば、考える力も豊かになっていく。思考の豊かさが、ウェブ上の情報に流されず、適正な判断ができるようになります。

グローバル化への対応という問題

最後に、グローバル化への対応です。経営者を目指す部長に必要な知識です。と言っても、英語を学ぶべきだと言いたいわけではありません。

私自身は、外国人と仕事をする機会はほとんどありません。しかし、グローバルに活躍している知人が多く、たくさんのことを教えてもらっています。ビジネスの世界における外国人と日本人の一番の違いとは何か?

一番の違いは、外国人は自国の歴史に精通している人が多いということ。

日本でナチスドイツのことを興味本位で調べていた知人が、ドイツ出張の際に、仕事相手のドイツ人に自慢気に話したところ、3倍くらいの知識量で返され驚いたと言っていました。相手は日本でいう普通のサラリーマンです。

さらに、外国人には自分の言葉で語る人が多い。日本人は常に「私たち」「当社は」という言葉を用いますが、外国人は「私は」という形で自分の意見を述べてくる。そのために、個々の言葉にたしかな力が宿っています。

グローバル化に対応するためには、外国を知るよりまず自国の歴史を知ることが重要です。

会計
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必ず知っておくべき会計学

知っておくべき会計

慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は、小泉内閣の経済財政政策担当大臣就任を皮切りに金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任しています。その竹中氏は、「簿記3級が完璧にわかれば、経済全体がわかる」と、著書『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)で説いています。

私は、大原簿記学校で15年間、講師として日商簿記3級の授業を受け持ちました。その経験からも、簿記3級を理解できれば、経済全体の概要は把握できると思っています。会計や簿記などが書かれた記事を読むときも頭に入ってきやすいのです。IFRS(国際財務報告基準)や国際会計基準審議会(IASB)の資料を読むときも、簿記3級の知識があるとないとでは、読むスピードも理解度も変わってきます。

竹中氏は、社会人なら簿記3級レベルの知識は最低限必要だと言っているのではないでしょうか?

私は、経営者や経理担当者向けに、「簿記の基礎のキソ」というテーマで、北は北海道、南は九州までセミナーを行っています。セミナーの最後は、私の持論である「簿記はすべての職種にとって必要な知識」という話をして締めています。経営者向けセミナーのいつもの締めを、ライブ感覚でお伝えします。

「私の持論ですが、簿記はすべての職種において必要な知識です。建設会社を例に挙げると、経理はもちろん簿記の知識が必要です。財務は資金繰りや財務分析、人事は配置先の人件費、総務は社会保険の計算のため、土木や建築の工事部は原価計算のため、積算担当は入札金額を決めるために、簿記の知識が必要です。営業は得意先の経営状況を知るために、経理部以外の管理職は各部署の予算管理のために簿記の知識が必要になります。例え専業主婦(夫)になっても、家庭の財産を守るために必要になります。そして経営者のあなた! 本業に精を出していただくのは、ぜんぜん問題ありません。苦手分野や本業以外の分野は、それぞれの専門家にお任せください。ただ、最低限知っておいてほしいのは、経理担当者や税理士と話せる基礎知識は必要だということです。あなたの会社を守るのはあなたです。社員やその家族の生活も、あなたにかかっているのです。今日のセミナーでお伝えした、最低限の簿記知識があれば、税理士と対等に話せる知識が身につき、他人の話を鵜呑みにして失敗することもないでしょう。あなたも自分の分身である会社を守るべく、今日の話の知識を基に経理担当者や税理士と話せる知識を身につけてください。ご清聴ありがとうございます」

商工会議所主催のセミナーなので中小の経営者が多く、皆さん、真剣に学んで帰られます。質問も多くいただきます。本業に専念するのはもちろんのこと、黒字倒産や損益分岐点がわからず安売りをして、経営を危険にさらす恐れもあります。

以前、勤めていた建設会社での話です。3年ほど使っていた営業車を50万円で売却しました。交渉で通常より高く買い取ってもらった営業部長は、「50万、儲けただろ!」と、自慢げに言うのです。

会計を知っている人ならわかると思いますが、取得原価があります。車を購入したときの値段です。儲けは売却代金から取得原価を差し引いて求められます。

取得原価が300万円だったとのことで、50万円から300万円を差し引いた額が儲けになります。つまり50万円儲かったと自慢げに言っていましたが、250万円の損をしているのです(話を簡単にするため減価償却計算を無視しています。本来はもう少し損失が抑えられます)。

簿記の知識がないため、利益も損失もわからない。資産と費用の区別もつかない。そのため計画が立てられない。他部署との予算調整で不利になる。

得意先の財務諸表が読めず、未入金を残して倒産するかもしれません。

「簿記はすべての職種にとって必要な知識」です。部長であるあなたも例外ではありません。

部長の心得
石川 和男
建設会社役員・税理士・大学講師・時間管理コンサルタント・セミナー講師と五つの仕事を持つスーパーサラリーマン。1968年北海道生まれ。埼玉県在住。大学卒業後、建設会社に入社。経理部なのに簿記の知識はゼロ。上司に叱られ怒鳴られてすごす。初めて管理職になったときには、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ないない尽くしのダメ上司。深夜11時まで残業をすることで何とか仕事を終わらせる日々が続く。体調を崩し、ストレスから体重も1年で10キロ増加。このままでは人生がダメになると一念発起。時間管理やリーダー論のビジネス書を1年で100冊読み、仕事術関係のセミナーを月1回受講するというノルマを課し、良いコンテンツやノウハウを取り入れ、実践することで徐々に残業を減らしていく。さらに個人だけではなくチームとしても効率的な時間の使い方を研究し、生産性を下げずに残業しないチーム作りを実現する。残業をゼロにし空いた時間で、各種資格試験にも挑戦。働きながら、税理士、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級などの資格試験に合格。建設会社のほか税理士、講師の仕事も始める。近著に『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』、『残業しないチームと残業だらけチームの習慣』(共に明日香出版社)、『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本』(朝日新聞出版社)ほか多数。

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