(本記事は、石川和男氏の著書『部長の心得』総合法令出版の心得の中から一部を抜粋・編集しています)

課長は自分の部署を、部長は他部署との関係を調整する

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(画像=PIXTA)

課長は部署の中を調整する

二人以上集まると、調整が必要になります。人数が多くなればなるほど、その業務は煩雑になります。

例えば、役割分担、利害関係、スケジュール、昇進、昇給、あるいは問題が起きた場合の責任の所在など。

調整業務は管理職である部長と課長が行います。

課長には自分の部署をマネジメントする責任があります。

部下の能力を最大限に発揮させ、役割や目標を割り振り、成果へとつなげる。

部署内でトラブルが発生したら、速やかに火消しを行う。

やる気や能力、性格や価値観が異なるメンバーを適切にマネジメントする。

調整とは問題点を整理し、ムリやムダを排除するための行動です。

同じ得意先に、同じ部署のAとBが、それぞれ別々にプレゼンして競い合う。極端な例ですが、このような重複した仕事をしていては、組織の効率は悪化します。

また、それぞれ能力が違う社員に、同じ金額や件数の売り上げ目標を課長が掲げてしまう。簡単に目標達成できる部下は簡単にそれをクリアしてしまい、最高のパフォーマンスを発揮できない。もしくはやる気をなくしてしまう。本来ならば達成可能な目標数値が果たせなくなります。

部下たちの最適化を考えることが、課長に必要な調整なのです。

部長は部署と外との調整を行う

課長の調整が、自分の部署の中を向いた内向きのマネジメントであるのに対し、部長の調整は外に開かれている必要がありす。

もちろん、内部を疎(おろそ)かにしてもいいわけではありません。

内部のことは課長と調整しつつ、部長自らは外部との調整に重きを置くということです。

総務部、経理部、人事部、財務部、情報システム部、営業部、ネット販売部、開発部など組織が大きくなればなるほど部署も増えていく傾向にあります。部署間において様々な問題も生じてきます。

さらに、部長は営業に出向いたり、コピーを取ったり、案内文を書くなど自ら手を動かす仕事は基本的に行いません。

だからこそ、実際に手や足を動かしてくれる部下のことを思う必要があるわけです。

部下思いの部長たちが集まると、何が起こるのか?

予算配分や営業のテリトリーなど、様々な対立や摩擦が生じます。部下のことを思う各部長の立場が、悪意はなくても、他部署との対立や摩擦を引き起こしてしまうのです。

相反する部署間の利害をしっかりと調整することが、部長に必要とされる能力だと言えます。

対立してばかりいるのではなく、調整をしっかりと行うというイメージです。

課長の人脈、部長の人脈

部長が行わなければならない調整は組織間の調整。そうなると、必要なのは人脈です。

課長は部署内の調整を行う立場ですから、必然的に部署の外とのやりとりは少なくなります。ほかの部署と意見交換すること自体は悪いことではありませんが、優先順位で言えば、自分の部署内のメンバーとのコミュニケーションを充実させる必要があります。

勤務時間で、内部の調整を課せられている課長にとって、部外の人脈は限られてしまいます。

そのような課長のマイナスを埋めるのが部長の人脈です。

会議などの場で、部長同士が顔を合わせ、議論を戦わせる場面は少なくありません。

そうした機会をそれだけで終わりにするのではなく、生産的な議論や関係作りを常に意識し、人脈として築き上げていく。

そのために信頼される人物でなければならない。部長は部署の外に人脈を作り、その人脈を部下のために活かすべきなのです。

課長は自部署の利益を、部長は会社の利益を視野に入れる

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(画像=Getty Images)

課長は自分の部署の利益を第一に考える

組織は常に利益を求めています。

株式会社の場合、法的には企業の所有者は株主です。そのため株主のために利益を上げるという考え方もありますが、得意先、仕入先、消費者、債権者、債務者、国や地方公共団体、そして従業員やその家族のためにも利益を上げ、会社を存続させていく必要があります。利益が上がらず倒産することは、企業のみならず企業を取り巻く関係者にも影響を与えるのです。倒産すると銀行などの債権者のみならず、得意先がなくなってしまった取引先も売り上げが計上できなくなります。税金も納められないので、国や地方公共団体も税収が減る。何より、従業員やその家族が路頭に迷ってしまいます。

このように、会社がつぶれないためにも、利益の確保は必要です。

そして、追求する利益は、部長と課長の役割によって変わってきます。

課長は自分の部署の利益を最優先に考えます。

自分の部署に対する責任が課せられているのですから、当然です。

目に見える数字はもちろん、部下のやりがい、周囲からの評価、部下の能力を最大限に活かして、利益を追求する環境を整えるのが課長の役目です。

しかし、社内で複数の部署がぶつかる場合があります。

同じ顧客をターゲットにしていたり、自分の部署の目標達成のために総務部に負担をかける、資金調達をしすぎて他部署の予算が削られるなど、自分の部署の利益を考えすぎるあまり、行きすぎてしまう場合があります。

部長は会社全体の利益をも視野に入れる

行きすぎを調整するのは、部長の役割です。

課長の立場では言えないことも、部長であれば口にできる。

他部署の部長と調整が可能なのです。

もちろん、部長も自分の部署の利益を何より大切にしています

その点は、課長と変わりません。

しかし、単に自分の部署のことだけを考えるのではなく、経営層に近い立場で会社全体のことを視野に入れながら、仕事をするのが部長の役目です。

例えば、自分の部署が大きな利益を上げたとします。

しかし、ほかの部署はみな、損失を出してしまった。

差し引きすると、会社全体ではマイナス。このような事態のときに、自分の部署だけ利益を上げても、どれだけの価値があるのか。

部長は、広い視野で利益をとらえる必要があります。

課長はプロセス、部長は結果

課長と部長の役割の違いを別の角度から見てみます。

課長に求められているのはプロセスです。

失敗を恐れることなく、攻めの仕事を実践し、自分の部署の利益を上げていく。

課長は、チャレンジすることによる失敗は許される。結果としてマイナスでも、そこに至るプロセスが適切なら、課長の取り組みが悪い方向に評価されません。

一方、部長とは自分の部署の成果に最終的な責任を負う立場です。部長が役員会に呼ばれて「課長の失敗で赤字になりました」「部下が無能だから損失が出ました」とは言えません。

課長以下のメンバーのチャレンジをできるだけ許容しながら、他部署との人脈作りや調整をしっかりと行い、会社全体を視野に入れながら、組織として成果を出していく

自分の部署が利益を上げていても、他部署がマイナスなら手放しに喜べません。部長は会社全体の利益を求めることが要求されるからです。

このような意味を込めて、部長は結果なのです。

課長との厳しさの違いは、そのまま役割の大きさの違いと比例します。

部長の心得
石川 和男
建設会社役員・税理士・大学講師・時間管理コンサルタント・セミナー講師と五つの仕事を持つスーパーサラリーマン。1968年北海道生まれ。埼玉県在住。大学卒業後、建設会社に入社。経理部なのに簿記の知識はゼロ。上司に叱られ怒鳴られてすごす。初めて管理職になったときには、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ないない尽くしのダメ上司。深夜11時まで残業をすることで何とか仕事を終わらせる日々が続く。体調を崩し、ストレスから体重も1年で10キロ増加。このままでは人生がダメになると一念発起。時間管理やリーダー論のビジネス書を1年で100冊読み、仕事術関係のセミナーを月1回受講するというノルマを課し、良いコンテンツやノウハウを取り入れ、実践することで徐々に残業を減らしていく。さらに個人だけではなくチームとしても効率的な時間の使い方を研究し、生産性を下げずに残業しないチーム作りを実現する。残業をゼロにし空いた時間で、各種資格試験にも挑戦。働きながら、税理士、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級などの資格試験に合格。建設会社のほか税理士、講師の仕事も始める。近著に『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』、『残業しないチームと残業だらけチームの習慣』(共に明日香出版社)、『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本』(朝日新聞出版社)ほか多数。

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