(本記事は、石川和男氏の著書『部長の心得』総合法令出版の心得の中から一部を抜粋・編集しています)
部下との時間をいかに作り出すか?
自分の仕事だけに集中しない
部長の仕事は常に激務の連続です。
そんな状況で、いかに効率的に仕事を進めていくのか。部長としての真価が問われます。
部長の役割とは、部下を適切に動かすことです。
刻々と変化するビジネスシーンに適応していくには、部下の動きにも柔軟性が必要です。部長は、部下が柔軟に動ける環境を作る。
そのためには、課長の相談にも乗る。課長が相談しやすいように「忙しい、話しかけるな」というオーラを出さない。自分の仕事だけに熱中しているわけにはいきません。
ビジョンや方針を策定するには、課長を含めた部下の思いを知らなければなりません。
部下の行動を観察することで見えてくることは多いのですが、さすがに心の中まで見透かすことはできません。
そこで、課長と直接話す機会を設ける。
お酒の場でもかまいませんが、お酒抜きでの対話をお勧めします。お互いの信頼性や対話の本気度が違ってくるからです。
激務の部長が、そのための時間をどうやって作り出すのか?
部長の時間術にとっては重要な課題です。 1日は24時間。すべての人に等しく与えられています。もちろん、24時間を仕事に使えませんし、自己啓発や趣味、家族との時間など、仕事以外にも大切な時間のすごし方があります。
1日を48時間にできればよいのでしょうが、そう上手くはいきません。
- ひとつの仕事の時間をできるだけ短縮する
- 仕事と仕事の間に生じるスキマを、有効活用する
この二点が、部長の時間管理の成否を決めます。ムリをなくすためには、初めにムダからなくしていく。
これを実現するための時間管理について、以下で確認していきます。
パーキンソンの法則
その前に、もうひとつだけ補足をしておきます。
「パーキンソンの法則」についてです。
パーキンソンの法則とは、イギリスの歴史学者で政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソンが提唱したもので「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。
30分かからない会議でも、1時間と設定されていれば、天気やスポーツの話などを織り交ぜて1時間かけようとする。
上司が毎晩8時まで残業していたら、部下は、たとえ定時で終わる仕事内容でも、打ち合わせの時間を長引かせたり、ダラダラ仕事をして8時に終わるように段取りを組むというものです。
私の以前の職場ではたくさんの会議を行っていましたが、1時間と設定されていたなら1時間かけ、速く終わることはありませんでした。
私が一般社員だったとき、直属の上司が9時まで残っていたため、9時に終わるように営業帰りは喫茶店で時間をつぶし、どうでもいい内部資料も丁寧にゆっくり時間をかけて作成していました。
部下に仕事を指示するときは、5日で終わりそうな仕事なら4日で、1時間で終わる仕事なら45分で、というようにシビアに期限を設定する必要があります。
もちろん部下だけではなく、自分自身の時間管理もシビアに行わなければなりません。
時間は「お金で買う」
「あなたの時間は、足りていますか?」
誰かにそう尋ねられたら、あなたはどのように答えるでしょうか?
「暇だったら、君の時間を分けてくれないか?」
そんな言葉をぶつけてしまうかもしれません。
実はこの発想に、大きなヒントが隠されています。
「暇だったら、君の時間を分けてくれないか?」
実際、SNSで「ヒマ~」とつぶやいている投稿を見ると、思わず、そう言いたくなります。一体、どんなヒントが隠されているというのでしょうか?
時間は「お金で買う」
答えは、時間は「お金で買う」という実にシンプルなものです。
お金を払って、ホームページ作成会社や掃除代行会社などの専門家に任せる、税理士、行政書士などの士業の人たちに仕事をアウトソースする。
もちろん、何でも金で買えと言っているわけではありません。費用対効果を考えながら、時間が足りない状況の中で、ほかの人が行えるなら代金を払って任せる。
何でも自分でやることで優先順位の高いことに集中できないなら、その道のプロに任せたほうがいい。
次のような事例があります。
建設会社には5年に1度、建設業許可の更新があります。5年分なので、資料を集めるのも大変です。不備があれば何度も管轄先に足を運ばなければなりません。当社は経験豊富な事務スタッフが揃っているため、費用対効果を考えて、自分たちで更新手続きを行っています。
しかし事務スタッフのいない建設会社で、社長自らが更新手続きを行っている会社があります。集めなければならない資料も、提出する書類も多いのです。修正箇所があると再提出です。作成中は本業である建設の仕事を休まなければなりません。
行政書士に頼めば10万円で代行してくれます。慣れない更新手続きの時間を本業に使えば、10万円はすぐに稼ぐことができます。
何でもお金で買えと言っているわけではありません。重要なのは、時間は「お金で買う」という選択肢を持つことです。
さらに、部長にもなれば様々な業務知識を身につける必要があります。
それらの知識は、独学よりお金を払って専門家に教えてもらうほうが効率がいい。ある有名な企業家は、何かの分野を調べるときは、まずお金を払って専門家の話を聴くそうです。最初から書籍を読んで調べるより、聴いたあとに書籍を読んで調べるほうが、何倍も早く理解ができると言っていました。
セミナーに行く、人間関係を作ってレクチャーしてもらう、詳しい部下に教えてもらう。
私の周りには、そうした形で専門性を高めている部長がたくさんいます。
日本人は、必要以上にお金に対して悪く考える傾向があります。自分で努力することを美徳とし、お金で解決しようとするのは絶対的悪であると。そんな偏見をぶつけてくる人もいます。そのような人に限って、カップラーメンを食べているのです。「小麦粉から麺を作り、豚や鶏を育ててから言えよ」と思います。
お金を回すことで経済は動きます。必要なものに対価を払って解決する。決して間違ったことではありません。
15分あれば喫茶店に入る
私は、喫茶店をよく利用します。喫茶店という空間は、仕事や勉強を集中して行うには適した環境です。15分の空き時間があれば、喫茶店に入ります。「たった15分で何ができるんだ」と、思うかもしれません。
私が愛読している書籍に、齋藤学先生の『15分あれば喫カフェ茶店に入りなさい。』(幻冬舎)があります。タイトル通り、「15分あれば喫茶店に入って有意義にすごしなさい」という本です。喫茶店で取り組むには最適な事柄が書いてありますので、参考に載せておきます。
- 思考を深める
- 新しいアイデアを生み出す
- 人生を整理する
- 仕事を管理する
- 問題の所在を明らかにする
- 仕事の引き継ぎをする
- メンタルコンディショニングをする
- 感想ノートをつける
- 雑談のネタを仕込む
- 雑用をすます
- 掘り下げて語る
- 翻訳や勉強などをコツコツ積み重ねる
- 読書をする
- 英会話を習う
- 読書会をする
- 二人会議をする
- 仕事の予習復習をする
- 自己客観視する
- 懸案フックを作る
- 相談事を持ちかける
- 試験勉強をする
- 主婦の喫茶店利用法を観察する
- 人を見極める
- 他人の会話を聞く
書籍をお読みいただくと、詳細が載っていますので、ご購入をお勧めします。
喫茶店での注意
喫茶店つながりで思い出したクイズです。
「仕事中に喫茶店に入ってコーヒーを飲むと儲かります。なぜでしょう?」
答えは、仮にコーヒー代が400円だとしても、あなたの1時間当たりでもらえる時給が1000円だとしたら、差し引き600円儲かっているということ。仕事をさぼって喫茶店に入っていても、1時間に600円の得をしているという計算になります(笑)。
私が喫茶店に入るときに注意しているのは、以下の三点だけです。
- ①事前に何をするか決めておく
- 喫茶店に入ったら何をやるか、事前に決めておくこと。入ってから、これをやろうあれをやろうと迷っていると時間がすぐに経過します。
- ②メニューを見ない
- 「息抜きで、たまには美味しいものを」など、ストレス発散や楽しみで利用するときは別ですが、限られた時間で成果を出すためにはメニューを見ている時間は惜しい。私はアイスミルクと決めています。なければアイスコーヒーです。
- ③スマートフォンの電源をオフにする
- 喫茶店に入って椅子に腰かけスマートフォンのチェック。メールの確認、ラインの返信、インスタグラムの閲覧……あっという間に時間は過ぎてしまいます。
時間は「お金で買う」。この選択肢があることを意識するだけで、自分にしかできないことを選び出し、時間を効率的に使うことができてきます。