暗号資産(仮想通貨)が成り立つ背景には、ブロックチェーンと呼ばれる技術がある。ブロックチェーンはさまざまな可能性を秘めているといわれており、多くの産業から注目されている。一方で、言葉を聞いたことはあっても、仕組みについてもいまいちわからないという人も多いだろう。

今回は、ブロックチェーンの基本的な仕組みや、どのような産業やシステムで活用されているかを解説する。ブロックチェーンについて知っておくことは、ビジネスや投資判断においてプラスに働くはずだ。

ブロックチェーンとは?

暗号通貨
(画像=PIXTA)

ブロックチェーンとは、情報を分散して保存する新しいデータベースのあり方を指す。ブロックチェーンでは、ブロックと呼ばれるひとかたまりのデータが、チェーンのようにつながって保存される。

地理的にも離れた場所にあるコンピュータに分散してデータが保存されるため、システムダウンのリスクが低い。また、データはすべて暗号化され、暗号化されたデータから元データをたどることはできないことから、データ改ざんが実質不可能といわれている。

10数年前、サトシ・ナカモトと名乗る人物が、暗号資産(仮想通貨)に関する論文を発表し、その中にブロックチェーンの基盤となる技術について記載されていた。世界初の仮想通貨であるビットコインをはじめ、多くの暗号資産(仮想通貨)はブロックチェーン技術によって成り立っている。

ブロックチェーンには管理者がおらず、いわばユーザー全員が共同で管理することになる。そのため、ブロックチェーンは分散型台帳と呼ばれることもある。

データ改ざんが不可能でシステムダウンリスクにも強いブロックチェーン。「金融×IT」のフィンテックという分野が注目されているが、フィンテックを成り立たせるうえで、ブロックチェーンはなくてはならない存在といえるだろう。

ブロックチェーンの特徴と注目される理由

続いて、ブロックチェーンの特徴についてより詳しく解説していく。ブロックチェーンに注目が集まるのは、従来のデータベースにはないさまざまなメリットがあったからだ。

●ブロックチェーンの特徴1.システムダウンを防ぐことができる

従来の中央集権型のデータベースの場合、メインシステムが止まると、すべての取引を停止せざるを得ない。また、中央集権型は、サーバへの負荷が大きくなるため、システムダウンリスクとは常に隣り合わせだった。リスクヘッジとしてサブシステムを用意するにしても、コストが高くなり対応が難しい側面もあった。

一方、ブロックチェーンは分散型台帳であり、インターネットに接続した多くのコンピュータに分散してデータが保存されている。そのため、仮にどこかで不具合が起きたとしても、システム全体がダウンするリスクは低い。そのため、従来のシステムと比べてはるかに安定性が高いといえる。

実際に、世界初の暗号資産(仮想通貨)であるビットコインは、これまで一度もシステムダウンを経験していない。

●ブロックチェーンの特徴2.データ改ざんを防ぐことができる

データ改ざんを防げることも、これまでにないブロックチェーンならではのメリットだ。まず、ブロックチェーンで保存されるデータは、ハッシュ関数を用いて暗号化されている。また、ブロックチェーンにおいてデータはすべて公開されており、ユーザー同士は誰もがデータにアクセスできる。

そのため、誰かが少しでもデータを書き換えると、整合性がとれなくなり、すぐに不正が発覚する。また、一部のデータを書き換えたとしたら、それに続くデータもすべて書き換えなければならない。他のユーザーに気づかれない間にこれらのことをやってのけるのは至難の業だ。

このような理由から、ブロックチェーンのデータ改ざんは実質的に不可能だといわれている。

ブロックチェーンの仕組みを具体例つきで解説

続いて、ブロックチェーンの仕組みをもう少し詳しく具体的に解説する。

「〇月〇日、AさんがBさんに〇円を送金した」「〇月〇日、BさんがCさんに〇円を送金した」という取引が発生した場合を考えてみよう。中央集権型のデータベースでは、管理者がチェックしたうえで、取引データをそれぞれ直接データベースに書き込んで終了となる。

一方、ブロックチェーンにおいてデータベースへと書き込まれるまでの流れは次の通りだ。

  1. 「〇月〇日、AさんがBさんに〇円を送金した」「〇月〇日、BさんがCさんに〇円を送金した」といった個別の取引データをトランザクションと呼ぶ。まず、いくつかのトランザクションを、ハッシュ関数を用いて暗号化する。複数のトランザクションを暗号化しひとかたまりにしたものを、ブロックと呼ぶ。

2.他のユーザーが取引に問題ないかチェックする合意形成(マイニング)と呼ばれる作業を経て、ブロック単位で複数のデータベースに同時にデータが保管される。

合意形成(マイニング)に参加したユーザーには、報酬が支払われる。これはビットコインにおいて、仮想通貨の「新規発行」となる。そのため、マイニングは「採掘」と呼ばれることも多い。

ブロックチェーンで何を実現できるのか

ブロックチェーンは、いわば誰もが利用できる、複数の場所に同時に存在している台帳といえるだろう。ブロックチェーン技術を用いて、どのようなことができるのだろうか。

まず、ブロックチェーンが考案されるきっかけとなった仮想通貨では、お金の取引を記録する目的で活用されている。送金や決済などお金にまつわる取引は、日常的に多くの人が利用しており、なおかつデータ改ざんを防ぐ必要性が高い。そのため、まさにブロックチェーンのメリットが活かせる活用法といえるだろう。

他にも、契約において、ブロックチェーンは強みを発揮するといわれている。契約情報を中央管理者がデータベースに記録するのではなく、ユーザー同士が閲覧できる形で、ユーザー同士の承認によって成り立たせるという発想だ。

また、すべてのデータが記録され、誰もが閲覧できるブロックチェーンは、証明においても注目されている。たとえば、作品が自分のものだと証明する時、ブロックチェーン技術を活用することが考えられる。

現在、全世界で生活に浸透し始めているシェリングエコノミーも、ブロックチェーンと相性がいいといわれている。管理者をおかずユーザー同士が情報を管理するようになれば、より低コスト化が実現するだろう。

企業によるブロックチェーンの活用事例4選

続いて、ブロックチェーンの活用事例を具体的に4つ紹介する。ここまでに理解した内容をもとに、どのような活用が考えられるか、改めて確認していこう。

●活用事例1.ブロックチェーンと自動車

トヨタ自動車はブロックチェーン技術に注目し、2019年4月にグループ横断のバーチャル組織「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を立ち上げた。これまでの実証実験をもとに、あらゆる分野でブロックチェーンを活用していく姿勢だ。

たとえば、ブロックチェーンで自動車ができあがるまでのすべての過程を記録すれば、不具合が起きた時に原因を究明しやすくなる。製造過程のデータベースは、業務プロセスの効率化を目指すうえでも有用となるだろう。

今後、自動運転においても、ブロックチェーンによる情報のデータベース化が活用される可能性は高い。

●活用事例2.ブロックチェーンと物流

アメリカに本部を置く世界最大のスーパーマーケットであるウォルマートも、ブロックチェーン技術に注目している。

ウォルマートは、食品の安心・安全を実現するため、ブロックチェーンを活用できると考えた。ブロックチェーンで、食品が生産地から店舗に並ぶまでの仕入ルートをすべて記録しておけば、従来よりもコストを抑えて食品偽装を防止できる。

食品は生命にかかわるため、問題が発覚した場合の代償は大きい。たった1つの食品偽装が、最悪の場合は倒産を招くことすらありうる。ブロックチェーンは、食の安全を担保するうえで、重要な役割を担うようになるかもしれない。

●活用事例3.ブロックチェーンと顧客情報

日立システムでは、ポイント管理において、ブロックチェーン技術の実用化を進めている。従来のシステムでは、キャンペーンなどで大量のポイントが移動すると、システムダウンのリスクが発生していた。また、データ改ざんを防ぐ強固なセキュリティが必要だった。

しかし、ブロックチェーンを活用すれば、リスクを低減させつつ低コスト化を実現できる。顧客情報は厳密に管理しなければならない情報であり、高いセキュリティ対策が求められる。ポイントにかかわらず、顧客情報の管理において、データ改ざんがされにくいブロックチェーンは最適といえるかもしれない。

●活用事例4.ブロックチェーンとアート

アート業界において、著作権情報は非常に重要だ。そのため、著作権情報を管理する方法として、ブロックチェーン技術は以前から注目されてきた。

「VERISART」は、ブロックチェーンによって作品の証明書を発行するサービスだ。VERISARTに作品を登録しておけば、他人が自分の名前を騙って作品を売った時、自分の作品だと証明することが容易になるだろう。

また、アート作品の流通においては、信用が何より大切だ。すべてのデータが記録され、誰もが閲覧できるブロックチェーンなら、悪意ある人物による詐欺や偽装も難しくなる。アーティストはもちろん、収集家にとってもプラスになるだろう。

ブロックチェーンが未来の産業を変える

ブロックチェーンは当初、仮想通貨を支える技術として登場し、その後、金融業界を中心に注目されてきた。しかし、金融業界にとどまらず、多くの産業のあり方を変える可能性を秘めている。

ブロックチェーンのメリットは、安全性が高いことにとどまらない。上手く活用できれば、さまざまな商品・サービスの低コスト化を実現できるだろう。

今後、多くの産業が独自にブロックチェーン技術の導入を進めることで、私たちの生活はガラリと変わるかもしれない。

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