暗号資産(仮想通貨)を用いて決済や投資を行うと、税金が発生する。今回は、どんなタイミングで税金が発生するのか、どんな基準を満たせば確定申告が必要なのか、といったことについてわかりやすく解説する。また、所得税の税率や納付を忘れてしまった場合の罰則も紹介するので、暗号資産(仮想通貨)の税金について知りたい人はぜひ参考にしてほしい。

仮想通貨に税金がかかる4つのケース

ビットコイン
(画像=PIXTA)

日本円を暗号資産(仮想通貨)に交換し、保有しているだけなら税金はかからない。しかし、暗号資産(仮想通貨)を使うと、税金が発生する。

暗号資産(仮想通貨)の使い方には、主に決済・送金・投資・交換の4つがある。それぞれの場合について、どのような税金がかかるかを押さえておこう。なお、マイニング(採掘)とハードフォーク(分裂)については、記事最後のQ&Aで解説している。

※事例を簡略化するため、購入手数料については加味していない。暗号資産(仮想通貨)の購入時に購入手数料がかかった場合、購入手数料は取得価額から差し引くことができる。

※事例は個人の場合を想定しているが、法人の場合は法人税の課税対象となる。

●ケース1.決済

暗号資産(仮想通貨)の使い方の1つ目は決済だ。商品を購入したりサービスの提供を受けたりした時に、暗号資産(仮想通貨)で対価を支払うことができる。クレジットカードほどの普及率は高くないが、大手家電量販店や動画配信サイトなど、さまざまな企業が暗号資産(仮想通貨)による決済を導入している。

決済とは、商品やサービスの対価として暗号資産(仮想通貨)を支払うケースを指す。「物を買って税金を払うの?」と違和感を覚える人も多いだろう。しかし、仮想通貨の価格は日々変動しており、購入した時点と同じ価格のままというわけではない。そのため、決済したタイミングの暗号資産(仮想通貨)の価格によっては、所得税がかかる。

たとえば、所得税がかかるのは次のようなケースだ。1万円で仮想通貨を購入した後、暗号資産(仮想通貨)の価値が上がり、時価4万円となった。そのタイミングで、4万円の時計を買った。

この場合、暗号資産(仮想通貨)の保有者は3万円分得をしたことになる。そのため、決済のタイミングで「3万円の利益が確定した」とみなされ、3万円に対して所得税が発生する。逆に暗号資産(仮想通貨)の価値が下がって損をした場合は、所得税はかからない。

●ケース2.送金

暗号資産(仮想通貨)の使い方の2つ目は送金だ。送金とは、別の相手に仮想通貨を送ることだ。暗号資産(仮想通貨)は管理者がいないことから、日本円や米国ドルなどの法定通貨と比べて、安い手数料で送金できる。

送金した場合、送った側に税金がかかることはない。しかし、受け取った側には贈与税がかかる場合があることに注意したい。

●ケース3.投資

暗号資産(仮想通貨)の使い方の3つ目は投資だ。暗号資産(仮想通貨)の投資方法にはいくつかの種類があるが、最もポピュラーなのは、安い時に購入して価格が上がってから売却し、売却益を得る手法だ。

投資で売却益を得た場合に、所得税がかかることについては、イメージしやすい人も多いだろう。たとえば、1万円で購入した仮想通貨を、4万円で売却できたなら、売却益3万円に対して所得税がかかる。

●ケース4.交換

暗号資産(仮想通貨)の使い方の4つ目は交換だ。暗号資産(仮想通貨)は、日本円や米国ドルなどの法定通貨や別の暗号資産(仮想通貨)とも交換できる。暗号資産(仮想通貨)の価値は常に変動しているため、交換のタイミングによっては、得をすることになる。すると、その時点で「利益が確定した」とみなされ、所得税がかかる。

たとえば、1万円で購入した暗号資産(仮想通貨)の価値が上がり、4万円分の他の暗号資産(仮想通貨)と交換した場合、3万円分得をしたことになる。そのため、3万円に対して所得税がかかる。

暗号資産(仮想通貨)の取引で確定申告が必要な人は?

給与所得など以外の所得の合計額が1年で20万円を超えると、確定申告をしなければならない。3つのケースをみていこう。

<ケース1>
サラリーマンが暗号資産(仮想通貨)を売却し、年間15万円の利益を得た。
→20万円という上限の範囲内なので、確定申告は必要ない。

<ケース2>
サラリーマンが暗号資産(仮想通貨)を売却し、15万円の利益を得た。また、暗号資産(仮想通貨)で決済し、購入時より価格が上がっていたことから、6万円の利益を得た。給与所得を除いて、1年間で得られた利益は21万円だった。
→20万円という上限を超えているので、確定申告が必要。

<ケース3>
サラリーマンが暗号資産(仮想通貨)を売却し、15万円の利益を得た。また、株式投資によって6万円の利益を得た。給与所得を除いて、1年間で得られた利益は21万円だった。
→20万円という上限を超えているので、確定申告が必要。

暗号資産(仮想通貨)の利益を計算する方法

続いて、暗号資産(仮想通貨)の利益を計算する方法を詳しく解説する。

暗号資産(仮想通貨)の利益を計算する方法には、移動平均法と総平均法がある。税務署に届出を行わなければ総平均法が適用されることになり、届出をすれば移動平均法で計算することが認められる。

総平均法とは、同じ種類の暗号資産(仮想通貨)については、年初時点の評価額と、その年中に取得した暗号資産(仮想通貨)の取得価額を合計し、総量で割って評価額を出す方法だ。簡易的に計算できるというメリットがある一方で、体感の評価額とかけ離れてしまう可能性がある。

移動平均法とは、同じ種類の暗号資産(仮想通貨)について、取得する都度、取得時点で保有している暗号資産(仮想通貨)の簿価の総額を保有量で割って計算した金額を平均単価として評価額を出す方法だ。計算が面倒というデメリットがある一方で、体感の評価額とのかい離を抑えることができる。

なお、どちらの評価方法を採用しても、通年でみれば所得金額は変わらない。しかし、単年度でみると所得金額に違いが生まれるため、どちらの計算方法を採用するかは慎重に検討したい。

続いて、具体的な取引の事例をもとに、総平均法・移動平均法で評価額を計算してみよう。

とある仮想通貨について、2020年・2021年の間に下記のような取引があったとする。

2020年
1,000円×5単位=5,000円 購入
1,400円×3単位=4,200円 購入
1,300円×6単位=7,800円 売却
800円×2単位=1,600円 購入

2021年
1,500円×4単位=6,000円売却

<総平均法で計算した場合>

1.まず2020年1年間での購入金額を合計し、購入した数量の合計で割って、1単位あたりの取得価額を出す。

(5,000円+4,200円+1,600円)÷(5単位+3単位+2単位)=1,080円

2.2020年の売却金額から、1単位当たりの取得価額に2020年中に売却した数量をかけ、差し引く。2020年の利益が確定する。

7,800円-1,080円×6単位=1,320円

3.2021年の1単位あたりの取得価額は前年からの繰り越しとなるため、1,080円。売却金額から、取得価額に売却した数量をかけた金額を差し引く。2021年の利益が確定する。

6,000円-1,080円×4単位=1,680円

2020年の利益(所得) 1,320円
2021年の利益(所得) 1,680円
2年間で得られた利益(所得) 3,000円

<移動平均法で計算した場合>

1.購入金額の合計を購入した数量の合計で割り、1単位当たりの取得価額を出す。

(5,000円+4,200円)÷8単位=1,150円

2.売却時点で、売却金額から、1単位当たりの取得価額に売却した数量をかけた金額を差し引く。2020年の利益が確定する。

7,800円-1,150円×6単位=900円

3.6単位売却後、残高は2単位。1単位当たりの取得価額に残高である2単位をかけ、新たに購入した金額を足して、残高である4単位で割る。年末時点の1単位あたりの取得価額が出る。

(1,150円×2単位+1,600円)÷4単位=975円

4.売却金額から、前年から繰り越された1単位当たりの取得価額に売却数量をかけた金額を差し引く。2021年の利益が確定する。

6,000円-975円×4単位=2,100円

2020年の利益(所得) 900円
2021年の利益(所得) 2,100円
2年間で得られた利益(所得) 3,000円

暗号資産(仮想通貨)の所得の種類は?

所得にはさまざまな種類があり、給与は給与所得、退職金は退職所得となる。暗号資産(仮想通貨)で得られた利益は、「雑所得」という扱いになる。

投資経験者なら、暗号資産(仮想通貨)にかかる税金について考える時、株式投資をイメージするかもしれない。しかし、株式を売却した時は譲渡所得、配当金を受け取った時は配当所得となる。

暗号資産(仮想通貨)の場合、所得の種類が違うため、注意しておきたい。

譲渡所得や配当所得は源泉分離課税といわれ、所得税15.315%、地方税5%の合計20.315%という税率が適用される。また、特定口座で取引していれば、証券会社が自動的に税金を天引きしてくれる。

一方、雑所得は総合課税で、給与所得など他の所得と合算して計算される。また、合算したあとの合計所得金額に応じて、適用される所得税率は異なることにも注意したい。高い税率が適用され、高額な税金がかかる可能性もあるため、株式投資と同じように考えるのはリスクが高いと言えるだろう。

最高税率は5割超え!所得税・住民税・贈与税の仕組み

続いて、所得税・住民税・贈与税の仕組みをそれぞれ解説していく。

●所得税の仕組み

まず、所得税について解説する。暗号資産(仮想通貨)で得られた利益は雑所得として申告書に記載し、給与所得等の他の所得と合算する。その後、生命保険料控除、医療費控除、寄付金控除などを差し引く。差し引いた金額は、課税所得金額と呼ばれる。

所得税率は、課税所得金額に応じて、5%から45%まで7段階で設定されている。所得が増えるほど適用される税率も高くなるため、注意したい。

総合課税における所得金額ごとの所得税率と控除額は下記の通りだ。

所得金額         所得税率   控除額
1,000円~194万9,000円   5%     0円
195万円~329万9,000円   10%  9万7,500円
330万円~694万9,000円   20%  42万7,500円
695万円~899万9,000円   23%  63万6,000円
900万円~1,799万9,000円  33%  153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40%  279万6,000円
4,000万円以上        45%  479万6,000円
(2020年9月現在)

2037年までは、これに加えて復興特別所得税がかかる。復興特別所得税は、所得税額に2.1%をかけて計算する。

ここでいう所得とは、確定申告書第一表右上の「課税される所得金額」のことだ。まだ確定申告をしたことがない場合、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引き、仮想通貨の利益を足すことでおおよその課税所得を求めることができる。

所得税は、課税所得に所得税率をかけ、控除額を引いて計算する。

たとえば、課税所得が500万円なら、適用される所得税率は20%、控除額は42万7,500円なので、計算式は下記の通りだ。

所得税:500万円×20%-42万7,500円=57万2,500円
復興特別所得税:57万2,500円×2.1%=1万2,022円
合計額:58万4,522円

●住民税の仕組み

住民税は、確定申告書や源泉徴収票をもとに市町村が計算し、通知書や納付書が会社もしくは個人宛に送付される。送付時期は翌年の6月頃だ。たとえば2020年分の所得に対する住民税は、2021年の6月頃に届く。住民税については、所得税のように納税者自身が申告をする必要はない。

住民税率は都道府県、市区町村によって異なるが、およそ10%程度と考えておけば、大きく金額がかい離することはないだろう。

そのため、「課税される所得金額」に10%をかけることで、住民税の金額を予想することができる。たとえば、課税所得が500万円なら、住民税は約50万円だ。

仮に所得が4,000万円以上で、所得税の最高税率45%が適用された場合、住民税とあわせると55%を税金として納めなければならない。

●贈与税の仕組み

日本では、1人あたり年間110万円を超える資産を贈与されると、贈与税を支払わなければならない。暗号資産(仮想通貨)も資産に含まれるため、110万円を超えれば贈与税が発生する。贈与税の税率は、10%から55%まで8段階で設定されている。

贈与税率も、贈与した金額が高いほど税率が高くなる仕組みとなっている。子どもや孫に仮想通貨を送金するなら、贈与税には十分注意しておきたい。

暗号資産(仮想通貨)の利益を損益通算できる?

損益通算とは、損失が生じた際に、損失を給与所得など他の所得から差し引くことだ。

たとえば不動産投資では、家賃収入から修繕費等の経費を差し引いた所得が200万円の赤字となった場合、給与所得から赤字分の200万円を差し引くことが認められている。そのため、本業である給与収入にかかる所得税・住民税が少なくなるという効果がある。

しかし、損益通算ができるのは、不動産所得・事業所得など一部の所得に限られている。暗号資産(仮想通貨)は雑所得なので、損失が生じても損益通算することはできない。つまり、暗号資産(仮想通貨)で生じた損失を、給与など他の所得から差し引くことは認められていないのである。

確定申告を忘れたら――罰則規定はあるの?

確定申告をしなかった場合、申告が遅れた期間に応じて、延滞税が発生する。つまり、確定申告をしておらず、数年後に税務署から申告もれを指摘された場合、本来支払うより多くの税金を支払わなければならなくなる。

延滞税の税率は、納付期限から2ヵ月までは2.6%、それ以降は8.9%だ(令和2年12月31日まで)。また、税務署に無申告を指摘された場合、無申告加算税が上乗せされることもある。

暗号資産(仮想通貨)の利益は忘れずに申告しよう

暗号資産(仮想通貨)で取引しているけど、税金についてはよくわからないので、確定申告はしていない。そんな人もいるかもしれない。

しかし、「知らなければ許されるだろう」と考えていると、痛い目をみる可能性がある。利益の金額によっては、数十万円近く税額が上がってしまうこともあるので、くれぐれも注意したい。

暗号資産(仮想通貨)で決済した時や、暗号資産(仮想通貨)を売却した時など、「得をした」タイミングが、利益が発生するタイミングだ。自分で情報収集したり、専門家に相談したりして、正しく申告することが大切だ。

所得税・贈与税の提出期限や提出方法は?

住民税については、先ほど説明したように、市町村が計算してくれるため個人で申告する必要はない。しかし、所得税・贈与税は、利益を得た人自身が申告する義務がある。

●納付期限と提出時期

所得税・贈与税の申告期限は翌年の3月15日だ。所得税の確定申告書の受付は1ヵ月前の2月16日から行われ、贈与税の申告書の受付は少し早い2月1日から行われる。なお、15日が土日祝日の場合、その翌日が申告期限となる。

●申告書の提出方法

最近では、国税電子申告・納税システム「e-Tax」を使って電子申告することが一般的だ。

e-Taxを利用するには、利用者識別番号が必要となる。利用者識別番号の取得には、マイナンバーカードを使う方法や、WEBで取得する方法がある。利用者識別番号は申告書の提出時期以外でも取得できるため、利益が出そうなら早めに取得しておくようにしたい。

利用者識別番号を取得したら、確定申告書の提出時期に、WEB上で申告書を作成して申告を行う。

なお、所得税・贈与税ともに、申告書は紙で提出することもできる。紙で提出する場合、申告書に必要事項を記載し、郵送もしくは税務署への持ち込みで提出する。申告書は税務署に置いてあるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできる。

●必要書類

所得税の場合、基本的には源泉徴収票の情報をもとに記載していくため、源泉徴収票は必ずなくさないように保管しておこう。

また、仮想通貨の利益の根拠となる書類は、税務署から指摘があった場合にすぐに提出できるよう用意しておく必要がある。入出金明細や取引履歴、ウォレットページを印刷しておくと安心だ。

贈与税の場合、贈与された時点での仮想通貨の評価額がわかる資料、受け取ったことがわかる資料が必要だ。こちらも印刷して手元に保管しておくと安心だ。

●納付方法

納付方法は、e-Taxでダイレクト納付をする方法、納付書を受け取って金融機関で納付する方法などがある。

また、所得税については、口座引き落としを選択することも可能だ。口座引き落としの場合、口座情報を記した振替依頼書を3月15日までに提出しておく必要がある。

万一記載に不備があって振替納税手続きが完了しなかった場合、3月16日以降は延滞税がかかる可能性もあるため、利用者識別番号の取得とあわせて余裕を持って手続きをしておきたい。

暗号資産(仮想通貨)と税金にかかわるQ&A

最後に、暗号資産(仮想通貨)にかかわるよくある疑問を解決するため、Q&Aを紹介する。ハードフォーク、マイニングなど特殊な場合の課税関係について知りたい人は、参考にしてほしい。

●Q1.ハードフォークで得た利益の扱いは?

ハードフォークとは、暗号資産(仮想通貨)のシステム上のルール変更のことで、分裂・分岐とも呼ばれている。ハードフォークが行われると新たな暗号資産(仮想通貨)が誕生し、無償付与される場合がある。

ハードフォークで得た利益に対しては、その時点では税金はかからない。新たな暗号資産(仮想通貨)は、付与された時点では価格はゼロとみなされるからだ。ただし、ハードフォークで得た暗号資産(仮想通貨)を、決済に使ったり、他の暗号資産(仮想通貨)と交換したり、誰かに売却したりすると税金がかかる。

ハードフォークで暗号資産(仮想通貨)を得る場合は、対価を支払うわけではない。そのため、たとえばハードフォークで得た仮想通貨で4万円の商品を購入し、決済した場合、4万円すべてが所得税の課税対象となる。

●Q2.マイニング報酬に税金は発生する?

暗号資産(仮想通貨)の新規発行と取引の承認を、マイニング(採掘)と呼ぶ。マイニングに参加すると、報酬として暗号資産(仮想通貨)を受け取れる場合がある。その時は、マイニングにかかった費用を差し引いたうえで、受け取った暗号資産(仮想通貨)を所得として申告しなければならない。

たとえば、マイニングで得た暗号資産(仮想通貨)の取得時の時価が4万円で、マイニングにかかった費用が1万円なら、3万円に対して所得税がかかる。

●Q3.税金を計算する効率的な方法は?

国税庁のホームページでは、仮想通貨の利益を計算できるよう、移動平均法・総平均法それぞれの計算用エクセルシートが公開されている。また、確定申告の時期には、確定申告書の手引きも公開されるため、積極的に活用したい。

もし計算方法がわからない場合は、税務署に問い合わせれば、親切に教えてくれるはずだ。

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