国連は、SDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、2030年までに達成をめざしている。時代の流れを受け、世界では化石燃料の代わりに代替エネルギーが注目され始めた。再生可能エネルギーと比べると馴染みのない表現だが、両者に違いはあるのだろうか?

そもそも代替エネルギーとは?

代替エネルギー
(画像=sarayut_sy/stock.adobe.com)

人類の歴史を振り返ってみても、古くから用いられてきたのは化石燃料だった。化石燃料とは、太鼓に生息していた動植物などの死骸(有機物)が堆積した変質物であり、燃やすとエネルギーが生じる。

具体的には、石炭や石油、天然ガス、シェールオイル、シェールガス、メタンハイドレートなどがある。有限の資源であることから、枯渇の問題が懸念されてきた。

しかし近年は、環境保全に対する関心の高まりとともに、化石燃料がもたらす負の側面にフォーカスが当てられている。

化石燃料は炭素と水素から構成される有機物であり、酸素と結びついて燃焼する際に温室効果ガスを放つからだ。そこで、クリーンな燃料として脚光を浴びたのが代替エネルギー(Alternative energy)である。

太陽光や風力、地熱、太陽熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーが代表的だ。

生物由来の動植物資源をエネルギー源とするバイオマスは、温暖化ガスが発生するものの、太陽と生命が存在する限り再生可能である。つまり、代替エネルギーと再生可能エネルギーは同義とみなしていい。

日本政府は再生可能エネルギーを新エネルギーとも表現している。一方、海外では代替エネルギーと呼ぶのが一般的だ。

米国で代替エネルギーの導入が進む背景

米国では代替エネルギーへのシフトが加速している。ウォールストリートジャーナルの報道によれば2019年2月の時点で、風力発電や太陽光発電に対する同国内の投資が過去最高ペースで拡大していたという。

電力を購入する企業間で、代替エネルギーのニーズが高まっている。クリーンな代替エネルギーを積極的に使用することで消費者に好感を抱いてもらえるし、電気料金のコスト削減や優遇税制措置の恩恵を期待できるからだろう。

代替エネルギーの導入事例

2019年11月には、米国の大手化粧品メーカーであるエスティーローダーがオクラホマ州 の風力発電所と仮想電力購入契約(バーチャルPPA)を締結した。

バーチャルPPAとは、使用者と発電事業者との間に市場(もしくはアグリゲーターと呼ばれる第三者)を介在させた電力購入契約をさす。

電力を使用する企業側と再生エネルギーの発電事業者を円滑にマッチングできる。アップルはバーチャルPPAを用いて、米国内における事業所の消費電力をすべて再生エネルギーに転換している。

エスティーローダーが導入済みのものと合計すると、「米国およびカナダでは電力を100%再生エネルギーで賄う」との目標を前倒しで達成できたという。

米国のマクドナルドも、2019年11月の時点で380メガワットを風力と太陽光で調達していたそうだ。

省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー部分)

日本でも代替エネルギーに関する取り組みが活発化している。その流れを推進するために、国は省エネ再エネ高度化投資促進税制という税制優遇措置を設けている。

この制度は、固定価格買取制度からの自立や長期安定発電の促進に貢献する再生可能エネルギー設備を事業に用いると適用される。

租税特別措置法第11条および第43条に基づき、基準取得価額の14%相当額を限度として特別償却できる。

対象となる再生可能エネルギー設備は以下の通りだ。

・中小水力発電(3万kW未満)
・地熱発電(1,000kW以上)
・木質バイオマス発電(2万kW未満)
・木質バイオマス熱供給装置(160GJ/h未満)
・バイオマス利用メタンガス製造装置
・風力発電装置専用機械類(周波数変動制御装置、発電出力制御装置、異常検出装置、遠隔出力制御装置)
・定置用蓄電設備
・電線路(自営線)

再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)

再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)は、再生可能エネルギー発電設備を取得した事業者の固定資産税を軽減する制度だ。

対象設備は以下の通りだ。

・太陽光発電設備(固定価格買取制度の認定を受けたものを除く)
・風力発電設備
・中小水力発電設備
・バイオマス発電設備(2万kW未満)
・地熱発電設備

太陽光発電設備以外の対象設備については、固定価格買取制度の認定を受けたものに限定される。

太陽光発電設備については、再生可能エネルギー事業者支援事業費に係る補助によって取得したものだけが該当する。

軽減率

課税が始まった初年度から3年分の固定資産税に対し、所定の割合が軽減される。軽減率については、「わがまち特例」に基づいて各自治体が一定の範囲内で独自に設定できる。

具体的な軽減率は以下の通りで、自治体において設定できる割合をカッコ内に示す。

太陽光発電設備
(10kW以上)
1,000kW未満2/3(1/2~5/6)
1,000kW以上3/4(7/12~11/12)
風力発電設備20kW未満3/4(7/12~11/12)
20kW以上2/3(1/2~5/6)
中小水力発電設備5,000kW未満1/2(1/3~2/3)
5,000kW以上3/4(7/12~11/12)
バイオマス発電設備
(2万kW未満)
1万kW未満1/2(1/3~2/3)
1万kW以上2/3(1/2~5/6)
地熱発電設備1,000kW未満2/3(1/2~5/6)
1,000kW以上1/2(1/3~2/3)

既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除

代替エネルギーに関する住宅のリフォームでも、所定の条件を満たせば税制優遇措置を受けられる。

具体的には、太陽光発電設備の設置を含む一定の省エネ改修工事を実施した場合に、工事費の10%をその年分の所得税額から控除できる。

ただし、補助金などの交付がある場合は、その分を差し引いた金額の10%が控除対象となる。

該当する省エネ改修工事の内容は以下の通りだ。

①すべての居室に備わる窓全部の改修工事
②床、天井、壁などの断熱工事
③太陽光発電設備の設置工事
④ ②と並行して行った設備(高効率エアコン、高効率給湯器、太陽熱利用システム)の設置工事
⑤ ①と同時に行う②~④の工事

加えて以下の条件も満たさなければならない。

・省エネ改修部位がいずれも現行省エネ基準以上の性能になる
・対象の改修工事費用から補助金などを控除した額が50万円を超える
・居住部分の工事費が改修工事全体にかかる費用の1/2以上を占める

代替エネルギーに関する税制改正

税制は随時見直されるが、世界的に代替エネルギーへのシフトが進む中、国がブレーキをかけるわけにはいかないだろう。

経済産業省による2020年度税制改正大綱においても、「2030年度のエネルギーミックス実現に向け、省エネ投資促進によるエネルギー消費効率の改善と再エネの更なる導入拡大を進めることが重要」との認識が示されていた。

改正の内容

延長される内容は主に2つだ。

①省エネ法の規制対象事業者等を対象とした大規模または複数事業者の連携による高度な省エネ設備投資

②再生可能エネルギーの主力電源化に資する発電設備・付帯設備の投資を促進する税制措置

なお、2018年度の省エネ法改正にともなって追加された「認定管理統括事業者等」も含めて制度を拡充するという。

改正省エネ法は2021年度末、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ法)」は2020年度末までの適用となっている。

改正の目的

再生可能エネルギーを利用する需要側のうち、省エネ法の規制対象事業者(全体のエネルギー使用量の合計が原油換算値で1,500kℓ/年度以上)に20%の特別償却または7%の税額控除(中小企業のみ対象)を適用する。

生産設備などを対象とする大掛かりな省エネ投資や、IoTによる個人の枠を超えた省エネ投資などを促進するのが狙いである。

再生可能エネルギーの供給側にも14%の特別償却を適用する。導入初期の負担を軽減して事業リスクの低下と再投資拡大を図ると同時に、再生可能エネルギーの主力電源化に関する設備投資を促進するのが目的だ。

※引用元

令和2年度(2020年度)経済産業関係 税制改正について
(経済産業省)

代替エネルギーの導入には国の制度を有効活用!

世界的に代替エネルギーの積極的活用が進み、時代のすう勢には逆らえない。国が支援しているのだから、関連制度を有効活用すべきだ。投資の世界では「国策に売りなし」との格言が残されている。設備投資にも通じる考えだろう。(提供:THE OWNER

文・大西洋平(ジャーナリスト)