「持続可能な世界経済の成長に欠かせない要素」として、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まる中、投資銀行や資産運用会社を含む金融産業も、サステイナブル・ファイナンス(持続可能な金融)の実現に向けて取り組んでいる。
「世界経済のダイナミックを変えた」といわれる新型コロナのESG投資への影響とともに、金融産業のESG動向、そして実現のカギをにぎる「ESGフレンドリー・アセット(ESG Friendly Asset)」について見てみよう。
金融産業にとってもESGは重要課題
近年、多数の企業や投資家が、短期的な利益追求主義から環境保護や社会福祉に重点を置いた「持続可能な資本主義」への移行を目指している。金融産業も例外ではない。
2019年には国際通貨基金(IMF)の「Global Financial Stability Report(グローバルな金融安定性報告書)」で、サステイナブル・ファイナンスの標準化と今後の政策の在り方が提言されたほか、KPMGが2019年(コロナ前)に実施した調査では、銀行のCEOのほぼ4分の3が 「低炭素のクリーン・テクノロジー経済への移行を予測・対応できるか否かが、将来的な成長を決める重要なカギをにぎっている」と回答。ESGの概念に反するビジネスへの融資・投資を制限し、持続可能なビジネスへの融資・投資が必要であることへの認識を示した。
また特に若い世代の顧客は、「ESGパフォーマンスの高さを企業や銀行選びの基準にする傾向が強い」ことから、ESGへの取り組みは次世代顧客を確保する上でも、避けて通れない重要な課題である。
米銀行の大型ESG投資 サステナビリティへの移行
世界的なサステナビリティへの移行を受け、すでに多数の主要国際銀行がESGへのコミットメントを宣言している。
大手投資銀行の例を挙げると、2007年からESGファンドに総額250億ドル、環境ビジネスへの取り組みに1260億ドルを投じているバンク・オブ・アメリカは、2019年4月、低炭素・持続可能なビジネス活動に3000億ドルの追加投資を行う計画を発表した。
また同年12月にはゴールドマン・サックスが今後10年間にわたり、7500億ドルを「持続可能な金融」に投じる計画を発表。このESGプロジェクトは、気候変動や包括的な成長型ファンドといった9つの主要テーマに関連する資金調達、投資、アドバイスに焦点を当てたものだ。
同行はESG投資を強化する一方、北極圏における新規の石油生産および探査プロジェクトへの融資を制限し、石炭企業への融資基準の引き上げなどを「環境方針フレームワーク」に組み込んでいる。
サステイナブル・ファイナンス・プログラムの一環として、グリーンプロジェクトへの資金調達を目的とする「グリーンボンド(Green Bond/環境債)」を発行する銀行も増えている。中央銀行も積極的にESGに取り組んでおり、最近ではドイツ銀行が6年満期、総額5億ユーロ、クーポン1.375%のグリーンボンドを発行した。
過去1年で非ESG融資がさらに増額
しかし銀行にとってESGは一筋縄ではいかない要素が多く、移行に向けて解決すべき課題が山積みだ。